Paris [



フォーレ "九月の森の中で" 落合訳

November 09, 2015

暖気が戻った週末に雨が降った。
土曜の夜から日曜の1日、しとしと降った。


お隣さんの大きな桜の木が葉を赤く染めた。
夏の終わりに収獲したスズメウリはよく乾いた。
種を採る実をコランダーに盛って、毎夜少しずつの種採りが始まった。

食後や入浴後のお茶を挟んだおしゃべりの時間に毎日5分10分と手を動かすのだ。

来年撒く種を小さいお菓子の空箱に仕分けして
春待ちの箱をお行儀良く並べて楽しむ。


先日からの訳詩をまとめておきます。



《九月の森の中で》

              マンデス
              落合訳

柔らかにざわめく梢
古び、中が虚ろになった幹
老いた嘆きの森が
我らの憂愁に寄り添う

落ち込んだ窪みにしがみつく樅の木よ
折られた小枝でできた棲む鳥のない巣
日焼けた叢、露なき花、
お前達には苦しみというものがわかる!

蒼褪めた顔をして
涙しながら寂しい森を通る者に
影と神秘のうめきは 
共に泣いて、彼を迎える

やさしき森よ、人里離れて生きたいという哀願に
扉を開いてくれる約束の地!
お前の奥深く更なる緑の中へと
私はいそいそとやって来る

だが、小径のほっそりした白樺の樹から
仄かに赤みが差した葉のひとひらが
私の頭をかすめ、肩の上で震えた。
それは年老いた森が

すべてが去りゆく冬がもう
自分にも私にも近いと知って
最初の枯葉を
友情のしるしに贈ってくれたのだ



Ramure aux rumeurs amollies,
Troncs sonores que l'âge creuse,
L'antique forêt douloureuse
S'accorde à nos mélancolies.

O sapins agriffés au gouffre,
Nids déserts aux branches brisées,
Halliers brûlés,fleurs sans rosées,
Vous savez bien comme l'on souffre!

Et lorsque l'homme,passant blême,
Pleure dans le bois solitaire,
Des plaintes d'ombre et de mystère
L'accueillent en pleurant de même.

Bonne forêt!promesse ouverte
De l'exil que la vie implore!
Je viens d'un pas alerte encore
Dans ta profondeur encore verte.

Mais d'un fin bouleau de la sente,
Une feuille,un peu rousse,frôle
Ma tête et tremble à mon épaule;
C'est que la forêt vieillissante,

Sachant l'hiver où tout avorte
Déjà proche en moi comme en elle,
Me fait l'aumône fraternelle,
De sa première feuille morte.


  *人生の秋
  *乾きと樅
  *森の安堵
  *深い森の中
  *失望の葉のひとひら


■訳詩リンク
*"水の上の白鳥" 落合訳
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    *白鳥 -- 尊大な王
    *白鳥とブルーコットン
    *白鳥の黒い影
    *夢のような白鳥
    *クロモと白鳥
    *フォーレ白鳥のパラドクス


*"町人貴族のセレナード" 落合訳
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    *町人貴族 -- languis
    *町人貴族 -- 9/8拍子と瞳
    *町人貴族 -- 反語
    *町人貴族 -- 愛しイリス


*フォーレ Op.61-8 落合訳
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    *暗い森、優しい森
    *ペーストガラスと歩調
    *詩人と決め事
       ?僕が聞いた後悔とフォーレ
    *フォーレのオアシス


*フォーレ "本当は、怖いくらいに" 落合訳
関連記事*フォーレ "本当に恐ろしいほど" ラスト
    *フォーレ '気に入ってもらえることを願う'
    *フォーレOp.61-5 始まり
    *フォーレOp.61-5 第2パラグラフ
       ?僕がイヤんなるコト
    *フォーレOp.61-5 許して下さい
    *フォーレOp.61-5 愛しき者
    *リディアとマリアンヌ
    *フォーレOp.61-5 希望
    *"本当は、怖いくらいに" タイトル他
    *"本当は、怖いくらいに" 挿入箇所


*"リディア" 落合訳
関連記事*"リディア" 再考
    *リディアという女性
    *バロックとgalantuelles
    *フォーレOp.61-5 愛しき者
    *リディアとマリアンヌ


*"眩耀の夏のひとひ" 落合訳
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*"黎明燃え広がりて" 落合訳
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*僧院の廃墟にて


*"イスパーンの薔薇" 落合訳

*"トスカーナのセレナード" 落合訳
関連記事*トスカーナの目覚めと眠り
      *トスカーナの気配
      *フォーレ "トスカーナのセレナード"
      *トスカーナに憑かれて
      *フランス気質と音さがし
      *19世紀の恋情
      *トスカーナのおしゃべり


*"この世にて" 落合訳


*"漁夫の悲歌" 落合訳


*"罪の償い" 落合訳
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    *罪と長調


*"墓地にて" 落合訳
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*"祈り" 落合訳


*"夢のあとに" 落合訳
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*"クリメーヌに" 落合訳
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    *フォーレ "クリメーヌに"


*"水のほとりに" 落合訳
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*"ロマンス" 落合訳


*"月の光" 落合訳
関連記事 *月の光とリュート
     *月の光のメヌエット
     *月の光と諦念
     *月の光に溶けて消える
     *月の光と母性
     *フォーレ "月の光"


*象徴(6) "蝶と花" 落合訳


*"水に浮かぶ花" 落合訳
関連記事*象徴(3)花色


*"ゆりかご" 落合訳
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*フォーレ "五月" 落合訳
関連記事*"五月" のぼやき
    *フォーレ "五月" を振り返る

*"秘密" 落合訳
*"棄てられた花" 落合訳
*"秋" 落合訳
*"贈り物" 落合訳


*"森の鳩" 落合訳
関連記事*シルヴィーの鳩とたんぽぽ


■訳すということ関連リンク
*訳すということ(1)野鳩
*訳すということ(2)椿姫の白
*訳すということ(3)マノン・レスコー
*訳すということ(4)カフェオレのボウル
*訳すということ(5)マカロン
*訳すということ(6)マリア様のお顔
*訳すということ(7)クロモスとお友達
*訳すということ(8)伴奏
*訳すということ(9)エコルセ
*訳すということ(10)メープルクッキー
*訳すということ(11)スタンダール
*訳すということ(12)演奏通訳



失望の葉のひとひら

November 02, 2015

古いペッパーミルを頂いた。
ハンドルを回すとレタン素材が当たって鈴のような音がする。


一足早く咲いたマムが秋から冬に向かうような色を花びらの内に秘めてテーブルを彩ってる朝。


フランス詩の面白くないお話が続かないよう分けて書いてたけれど此の2日は例外的に連日です。

  *人生の秋
  *乾きと樅
  *森の安堵
  *深い森の中

最後の2パラグラフを今朝は済ませてしまいます。


  だが、小径のほっそりした白樺の樹から
  仄かに赤みが差した葉のひとひらが
  私の頭をかすめ、肩の上で震えた。
  それは年老いた森が

  Mais d'un fin bouleau de la sente,
  Une feu ille,un peu rousse,frôle
  Ma tête et tremble à mon épaule;
  C'est que la forêt vieillissante,


  すべてが去りゆく冬がもう
  自分にも私にも近いと知って
  最初の枯葉を
  友情のしるしに贈ってくれたのだ

  Sachant l'hiver où tout avorte
  Déjà proche en moi comme en elle,
  Me fait l'aumône fraternelle,
  De sa première feuille morte.


フォーレは詩に1箇所改訂を加えた。


2部の第1パラグラフはマンデス原詩では
Je viens d'un pas vivace encore だった。
元気な足取りで、となっていたが
いそいそした足取りを表す
Je viens d'un pas alerte encore
に変更しているのだった。

此の部分の改訂はフォーレとしては歌の発音を変更する目的だったと研究されているけれど、やはり味わいの変化にも注目したいと思う。

2部の第2パラグラフ頭のMais (だが) の意味合いの変成があるのじゃあないかしら。

元気な足取りで向かった森が色づいた葉を落として晩年を示唆する場合の戸惑い。年齢への推度・樹と自身の冬に想いを馳せるところまで少しの時間が横たわるように想像してしまう。


しかしいそいそと向かった森が冬を報せる図からは、失望という瞬間的な変化を連想できる。いそいそした足取りは、落ちて震える葉によって止められ・・・


其うして失望は、自らの年齢への失望にも重なってゆく。


'だが' を境にひとひらの葉が舞い落ちたシーンから
フォーレはドルチェ&ピアノで密やかに歌わせるのだ。
森の安堵をクレシェンドで讃えたあと、晩秋の哀しみは囁きにのせる。
此うした瀟洒な感覚に痺れてしまう。

**


月曜の朝からつまんな過ぎるブログ書いちゃったから
明日はお出かけ記録でも・・・



深い森の中

November 01, 2015

クチュリエを写してみながら "九月の森の中で" の続きです。


  *人生の秋
  *乾きと樅
  *森の安堵


原詩では8音綴の4行3節の第2部になり、マンデス原詩では行間にローマ数字を書き入れられてる。

しかしフォーレはシャンジュマンを加えぬ代わりに、凝集した音の響きで森の更なる奥へと誘ってゆくかのように楽曲を運ぶ。

  やさしき森よ、人里離れて生きたいという哀願に
  扉を開いてくれる約束の地!
  お前の奥深く更なる緑の中へと
  私はいそいそとやって来る

  Bonne forêt!promesse ouverte
  De l'exil que la vie implore!
  Je viens d'un pas alerte encore
  Dans ta profondeur encore verte.


追放、流刑、亡命などに使われるexilだが


現世を捨てる=カトリックの修道僧内の隠者と区別するために、日本の感覚なら此の訳にも可能になる '世捨て人' の単語は避けた。

煩わしい社会生活や人間関係から逃避したい思いの意味にとどまるよう、人里離れてと訳してみたが此れもベストではないと思う。

多くは九月の森で、と題される曲を "九月の森の中で" とdans la を意識したタイトルにしたのは此のシーンを生かすためだ。


森を愛した者が

  Dans ta profondeur お前の奥深く

慰めを求め、共感を求め

  encore verte 更なる緑の中へ

歩を進めた場所で胎内のような湿度に包まれ
高い木々に煩いの世を遮断され
労りの緑の香に癒されるのだ。


■訳詩リンク
*"水の上の白鳥" 落合訳
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    *白鳥 -- 尊大な王
    *白鳥とブルーコットン
    *白鳥の黒い影
    *夢のような白鳥
    *クロモと白鳥
    *フォーレ白鳥のパラドクス


*"町人貴族のセレナード" 落合訳
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*フォーレ Op.61-8 落合訳
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    *詩人と決め事
       ?僕が聞いた後悔とフォーレ
    *フォーレのオアシス


*フォーレ "本当は、怖いくらいに" 落合訳
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    *フォーレ '気に入ってもらえることを願う'
    *フォーレOp.61-5 始まり
    *フォーレOp.61-5 第2パラグラフ
       ?僕がイヤんなるコト
    *フォーレOp.61-5 許して下さい
    *フォーレOp.61-5 愛しき者
    *リディアとマリアンヌ
    *フォーレOp.61-5 希望
    *"本当は、怖いくらいに" タイトル他
    *"本当は、怖いくらいに" 挿入箇所


*"リディア" 落合訳
関連記事*"リディア" 再考
    *リディアという女性
    *バロックとgalantuelles
    *フォーレOp.61-5 愛しき者
    *リディアとマリアンヌ


*"眩耀の夏のひとひ" 落合訳
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*僧院の廃墟にて


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      *フォーレ "トスカーナのセレナード"
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      *19世紀の恋情
      *トスカーナのおしゃべり


*"この世にて" 落合訳


*"漁夫の悲歌" 落合訳


*"罪の償い" 落合訳
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    *罪と長調


*"墓地にて" 落合訳
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*"祈り" 落合訳


*"夢のあとに" 落合訳
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*"クリメーヌに" 落合訳
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    *フォーレ "クリメーヌに"


*"水のほとりに" 落合訳
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*"ロマンス" 落合訳


*"月の光" 落合訳
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     *月の光のメヌエット
     *月の光と諦念
     *月の光に溶けて消える
     *月の光と母性
     *フォーレ "月の光"


*象徴(6) "蝶と花" 落合訳


*"水に浮かぶ花" 落合訳
関連記事*象徴(3)花色


*"ゆりかご" 落合訳
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*フォーレ "五月" 落合訳
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    *フォーレ "五月" を振り返る

*"秘密" 落合訳
*"棄てられた花" 落合訳
*"秋" 落合訳
*"贈り物" 落合訳


*"森の鳩" 落合訳
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■訳すということ関連リンク
*訳すということ(1)野鳩
*訳すということ(2)椿姫の白
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*訳すということ(12)演奏通訳



森の安堵

October 28, 2015

パリの若い人たちの間で塗絵が流行ってるんですって。
タピオカちゃんが教えてくれて塗絵ブックを送ってくれた。


パリの街並やメトロや特徴的な建物の屋根が線で描かれてて
素敵な地図本みたい。


"九月の森の中で" の訳を今朝もほんのちょっと進めます。

  *人生の秋
  *乾きと樅


ピアノパートには第1パラグラフの伴奏形が戻り、ソロパートでは新たなメロディーを歌いかける・・・と思いきや1小節半のちにはソロパートも第1パラグラフでのアンサンブルを再び繰り出す。


  蒼褪めた顔をして
  涙しながら寂しい森を通る者に
  影と神秘のうめきは 
  共に泣いて、彼を迎える

  Et lorsque l'homme,passant blême,
  Pleure dans le bois solitaire,
  Des plaintes d'ombre et de mystère
  L'accueillent en pleurant de même.


フランス語では '通りがかりながら泣いている' だが日本語的に '涙しながら通る' の語順にした。


第2パラグラフの幻惑の16分音符から、やさしい4分&付点4分音符のピアノが戻ってくる安堵感は、泣く人を受け入れて寄り添う森への安らぎの気持ちのようだ。

'同じように泣いて' を '共に泣いて' に置き替えたのは嘆く男に森が共感をもったかに見る、老いを背負った者の主観として記してみた。


■訳詩リンク
*"水の上の白鳥" 落合訳
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    *クロモと白鳥
    *フォーレ白鳥のパラドクス


*"町人貴族のセレナード" 落合訳
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    *町人貴族 -- languis
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    *町人貴族 -- 反語
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*フォーレ Op.61-8 落合訳
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    *暗い森、優しい森
    *ペーストガラスと歩調
    *詩人と決め事
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*フォーレ "本当は、怖いくらいに" 落合訳
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    *リディアとマリアンヌ
    *フォーレOp.61-5 希望
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*"リディア" 落合訳
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     *フォーレ "月の光"


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*"秋" 落合訳
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*訳すということ(6)マリア様のお顔
*訳すということ(7)クロモスとお友達
*訳すということ(8)伴奏
*訳すということ(9)エコルセ
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*訳すということ(11)スタンダール
*訳すということ(12)演奏通訳



乾きと樅

October 24, 2015

ちゅるんと透明感たっぷりのアンスリウムの蕾。
暖地じゃないから寒さに弱い子が育ちきるか心配です。


赤ちゃん苗の弱々しさには明るみを、そして老齢の大木の強さには哀愁を感じるものかもしれない。

  "九月の森の中で" 第2パラグラフは
  老いた樅の木が描かれる。

先回の続きです。

  *人生の秋


樅の硬い葉は、アンスリウムの水気を含んだグリーンと違い
黒を帯びた深い緑に尖った針状の葉先が更なる暗みを作るだろう。


高い樹高は森全体を影で覆っていることだろう。



  落ち込んだ窪みにしがみつく樅の木よ
  折られた小枝でできた棲む鳥のない巣
  日焼けた叢、露なき花、
  お前達には苦しみというものがわかる!

  Ô sapins agriffés au gouffre,
  Nids déserts aux branches brisées,
  Halliers brûlés,fleurs sans rosées,
  Vous savez bien comme l'on souffre!


le gouffreは '深めの' という形容つきの穴や裂け目。
根が育ち、土が痩せて窪地のようになった光景だろうか。


痩せ乾いた土はざらざらとして、粗くなった木肌と同じ年月を感じさせるだろう。

地と同様に乾きの苦しみに晒されるのが3行目の叢と花々だが、花をあえて単数形に訳した。

咲き乱れる花々に対し、露を湛えることができないくらい養分を奪われた地からやっとの思いで開いた花。複数の花が開いていても眺め渡したい光景とは異なる意で単数訳にした。


'花々' と書きたくなるのは、花数ゆえではないのじゃあないかしらという持論のためだ。


美しい光景であるほど人の目は幾度も花の上を往復して姿をなぞる。言ってみれば目を走らせる 'のべ本数' を合わせたくなる風景にこそ '花々' と用いたい気がするのだ。


■訳詩リンク
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    *暗い森、優しい森
    *ペーストガラスと歩調
    *詩人と決め事
       ?僕が聞いた後悔とフォーレ
    *フォーレのオアシス


*フォーレ "本当は、怖いくらいに" 落合訳
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    *フォーレ '気に入ってもらえることを願う'
    *フォーレOp.61-5 始まり
    *フォーレOp.61-5 第2パラグラフ
       ?僕がイヤんなるコト
    *フォーレOp.61-5 許して下さい
    *フォーレOp.61-5 愛しき者
    *リディアとマリアンヌ
    *フォーレOp.61-5 希望
    *"本当は、怖いくらいに" タイトル他
    *"本当は、怖いくらいに" 挿入箇所


*"リディア" 落合訳
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    *リディアという女性
    *バロックとgalantuelles
    *フォーレOp.61-5 愛しき者
    *リディアとマリアンヌ


*"眩耀の夏のひとひ" 落合訳
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*僧院の廃墟にて


*"イスパーンの薔薇" 落合訳

*"トスカーナのセレナード" 落合訳
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      *トスカーナの気配
      *フォーレ "トスカーナのセレナード"
      *トスカーナに憑かれて
      *フランス気質と音さがし
      *19世紀の恋情
      *トスカーナのおしゃべり


*"この世にて" 落合訳


*"漁夫の悲歌" 落合訳


*"罪の償い" 落合訳
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    *罪と長調


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*"祈り" 落合訳


*"夢のあとに" 落合訳
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     *月の光と諦念
     *月の光に溶けて消える
     *月の光と母性
     *フォーレ "月の光"


*象徴(6) "蝶と花" 落合訳


*"水に浮かぶ花" 落合訳
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*"ゆりかご" 落合訳
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*フォーレ "五月" 落合訳
関連記事*"五月" のぼやき
    *フォーレ "五月" を振り返る

*"秘密" 落合訳
*"棄てられた花" 落合訳
*"秋" 落合訳
*"贈り物" 落合訳


*"森の鳩" 落合訳
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*訳すということ(2)椿姫の白
*訳すということ(3)マノン・レスコー
*訳すということ(4)カフェオレのボウル
*訳すということ(5)マカロン
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*訳すということ(7)クロモスとお友達
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人生の秋

October 15, 2015

カチュール・マンデス (1841年〜1909年)


新たな形の歌曲を考究していたフォーレが選んだ詩人。

高踏派詩人の作品をフォーレが再び手がけるようになった頃に用いた詩に "九月の森の中で" があります。

  限りなく豊かな優しさを湛えた音たちが
  隣り合う音を互いの色に染め合っているような歌曲。
  人生の秋を綴る詩によって歌われる。


8音綴の4行詩は優しげに抱擁韻を踏んでいる。


  柔らかにざわめく梢
  古び中が虚ろになった幹
  老いた嘆きの森が
  我らの憂愁に寄り添う

  Ramure aux rumeurs amollies,
  Troncs sonores que l'âge creuse,
  L'antique forêt douloureuse
  S'accorde à nos mélancolies.


人生の秋。
憂愁の秋であり、そして収獲の秋である。


人生の秋と口にするとき、生の軌道がさびれた様がおもに語られるのは日本的かもしれないと思ってきた。宗教観ゆえの感じ方もあろうし、未来へのこの世的な希望が弱まる事を物悲しいとする場合もあるだろう。

一昨日夫と訪れた修道院で、ヘブライ4章に絡んで神父様が人生の秋ともいえる事柄に触れられた。

  *美術館は休館日

80代も半ばになられる神父様が主に仕え人に仕えられる晩年をにこやかに語りなさるのを伺うと、身体の自由以外に老いに寄って失われる本当に大切なものは実は少ないのかもしれないと思えた。


マンデスの詩につけたフォーレの音楽は寂しさよりも
寂しさが齎す慈しみの雰囲気が色濃くて


老いの寂しさを愛に転じる心持ちの美しさを思わせる。

詩と音楽とともに心の奥底に去来するイザヤ書53-11

  [彼らは自らの苦しみの実りを見
  それを知って満足する]



歌とエヴァンジェル

October 08, 2015

アンティークのおメダイは聖フランソワ・ザビエル様の横顔。


フランスアンティークだからフランシスコじゃなくてフランス読みになってるのも古いおメダイの楽しさです。

先日夫と訪ねた夙川教会のミサで後ろ席にお座りだったご婦人の聖歌が美しく、私たちはとても心地良くミサに心を添わせる時間が持てたのでした。

  *夙川へ

真っ直ぐで透明なお声が、作為なく典礼の言葉を伝えてきた。抑えた床しげな聖歌だった。


ヴァティカン典礼省からミサの聖書朗読指針が出されてます。私たちが朗読のあるべき姿を考えられるよう簡潔な基準が設けられてる。


基準の1つ '味わえるように'。パフォーマンスを味わうのとは正反対に、ミサに相応しい形で会衆が聖書の意味を味わいながら耳を傾けられるように・・・と受け取れるだろう。

聖歌でも同じように私たちが配慮すべきことが・・・


典礼聖歌に於いて私たちは表現者じゃないと心したいと思った。


音符がついて旋律になっていることで歌曲であるかに歌われる場合がある。漏れ出てしまう神への想い故ならば美しいが往々にして大層らしい表現に留まり、テ・デウムの精神から外れることもある。

ミサでのご婦人の歌声は、聖歌のあるべき形に則った美しさだった。


夫のマタイ受難曲本番を巡って、エヴァンゲリストのあり方も沢山おしゃべりしてた今週の我が家。


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"水の上の白鳥" 落合訳

October 06, 2015

秋色紫陽花を撤去した所が寂しくなった。
ピンポンマムを移動してきました。


少し秋らしくなったカーポートと、此れから種処理するカット紫陽花と・・・季節の移ろいを感じます。


何記事かに渡ったフォーレの白鳥訳をまとめた朝。


《水の上の白鳥》

             ルネ・ド・ブリモン詩
             落合訳       

我が想いは諧調と寧静湛える白鳥
倦怠の岸辺をゆるらかに滑る
夢と幻影と木霊と霧と影と夜の
底なしの波の上を滑る

尊大な王は自由な拡がりを押分け滑る
希有にして移ろいやすい空疎な反映を追い求め
物憂げに押し黙り、銀月が照らす臨界過ぎる時
数しれぬ葦が頭べを垂れる

白睡蓮の円い花冠のひとつひとつ
次々に願望と希望の花を咲かせて・・・
それでも弥増(いやま)さる先へ霧の上を、波の上を、
逃去ろうとする未来へ向かい白鳥の黒い影は滑る

"諦めなさい、美しい夢のような白鳥よ
模糊たる運命へ向かうゆっくりとしたその旅は。
不思議の中国も、風変わりなアメリカも
貴女を確かな港に受け入れはしないから

かぐわしく薫る入江も、不滅の島々も
黒い影の白鳥よ、貴女に危険な暗礁だから
湖の上に留まるのだ
此の雲、此の花々、此の星達と此の瞳を忠実に映す湖に"



Ma pensée est un cygne harmonieux et sage
qui glisse lentement aux rivages d’ennui
sur les ondes sans fond du rêve,du mirage,
de l’écho,du brouillard,de l’ombre,de la nuit.

Il glisse,roi hautain fendant un libre espace,
poursuit un reflet vain,précieux et changeant,
et les roseaux nombreux s’inclinent quand il passe,
sombre et muet,au seuil d’une lune d’argent;

et des blancs nénuphars chaque corolle ronde
tour à tour a fleuri de désir ou d’espoir...
Mais plus avant toujours,sur la brume et sur l’onde,
vers l’inconnu fuyant glisse le cygne noir.

Or j’ai dit:"Renoncez,beau cygne chimérique,
à ce voyage lent vers de troubles destins;
nul miracle chinois,nulle étrange Amérique
ne vous accueilleront en des havres certains;

les golfes embaumés,les iles immortelles
ont pour vous,cygne noir,des récifs périlleux;
demeurez sur les lacs où se mirent,fidèles,
ces nuages,ces fleurs,ces astres,et ces yeux."


  *ルネ・ド・ブリモンの白鳥
  *白鳥 -- 尊大な王
  *白鳥とブルーコットン
  *白鳥の黒い影
  *夢のような白鳥
  *クロモと白鳥
  *フォーレ白鳥のパラドクス


■訳詩リンク
*"町人貴族のセレナード" 落合訳
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    *町人貴族 -- 反語
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*フォーレ Op.61-8 落合訳
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       ?僕が聞いた後悔とフォーレ
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*フォーレ "本当は、怖いくらいに" 落合訳
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    *フォーレ '気に入ってもらえることを願う'
    *フォーレOp.61-5 始まり
    *フォーレOp.61-5 第2パラグラフ
       ?僕がイヤんなるコト
    *フォーレOp.61-5 許して下さい
    *フォーレOp.61-5 愛しき者
    *リディアとマリアンヌ
    *フォーレOp.61-5 希望
    *"本当は、怖いくらいに" タイトル他
    *"本当は、怖いくらいに" 挿入箇所


*"リディア" 落合訳
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    *リディアという女性
    *バロックとgalantuelles
    *フォーレOp.61-5 愛しき者
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*"眩耀の夏のひとひ" 落合訳
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*僧院の廃墟にて


*"イスパーンの薔薇" 落合訳

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フォーレ白鳥のパラドクス

September 23, 2015

その昔、間接照明器具など置くのに良いかなって腰の高さに設けたコンセント。実はほとんど使われてない。


コンセントやコードが如何にも実用風な物として視界に入らないように、カウンター上に設置した。ところが此処に器具を置けばそれ自身が実用性を主張することとなるのだ。

  だから電化製品を置かない。
  寄ってコンセントも使われない。
  パラドクス。


アトリエの隅っこを写しながら
白鳥訳についてのおしゃべりの一先ず最後です。


  demeurez sur les lacs òu se mirent,fidèles,
  ces nuages,ces fleurs,ces astres,et ces yeux."
  湖の上に留まるのだ
  此の雲、此の花々、此の星達と此の瞳を忠実に映す湖に"


特筆すべきは此処以降の3節をフォーレは総て削除していることだ。楽曲に描かれてない原詩では続く節で白鳥に一層留まるよう奨め、最終節は1節目の歌詞になる。


削除された最終節は、詩の上では1節目の4行を1,2,3,4から3,4,1,2の順序に換えて戻っているのだ。


フォーレは此の削除個所をメロディーによって見事に再生させてる。
楽曲上の5節目(楽曲上の最終節) 'かぐわしく薫る入江も、不滅の島々も' からを1節目のメロディーに重なるように作曲した。

まるで白鳥の心に傍観者(としての自身)の声は届いていないかのように、[我が想いは諧調と寧静湛える白鳥] のメロディーが戻ってくる。

  ブリモン詩上では '留まるのだ' と諌めているところに
  ゆったりと自由に滑る白鳥のメロディーが現れるのだ。
  パラドクスの完成を見るようだ。


*ルネ・ド・ブリモンの白鳥
*白鳥 -- 尊大な王
*白鳥とブルーコットン
*白鳥の黒い影
*夢のような白鳥
*クロモと白鳥



クロモと白鳥

September 20, 2015

シール貼ってるの? みたいに見えるのはフランスのクロモ。
アンティーク特有の紙質とぽっこりしたエンボスが楽しい。


お友達のお母様がほっこりするお花の絵をたくさんお描きになったのを持ってきてくださってた。可愛いからクロモのステージにして絵柄遊びをしてみました。


Cygne sur l'eau のタイトルは、直訳の通りに "水の上の白鳥" に決めた。


日本語になった際 '上の' は白鳥の動きが見えてこないかと顕し方を模索して迷ってた。楽曲の溶け混ざるような音色にふさわしい '水に漂う' は、日本語上は白鳥の自主性を欠いたような印象になりはしないかと避けた。

'水に浮かぶ' を選べば細波の16分音符を描きながら滑り進む描出から遠いのでは・・・などなど悩みが尽きなかった。


新しいところを・・・


  nul miracle chinois,nulle étrange Amérique
  ne vous accueilleront en des havres certains;
  不思議の中国も、風変わりなアメリカも
  貴女を確かな港に受け入れはしないから

  les golfes embaumés,les îles immortelles
  ont pour vous,cygne noir,des récifs périlleux;
  かぐわしく薫る入江も、不滅の島々も
  黒い影の白鳥よ、貴女に危険な暗礁だから


此の節で2節目の '尊大な王' が生きてくるんですね・・・


先回 Or j'ai dit 以降をあえて '心の声' と書いたけれど本当は違うと思ってる。彼女の本当の心の声は [白鳥の滑りを阻むものに気を捉われることのない思考] のほうであり、sageかつroi hautainと顕されるものの気がする。

Or j'ai dit の中身は寧ろ傍観者の声ではないのか。

  傍観者は旅を諦めなさいと諭し
  白鳥は水面を自由に押分け滑る。
  そんな風に考えてみた。


*ルネ・ド・ブリモンの白鳥
*白鳥 -- 尊大な王
*白鳥とブルーコットン
*白鳥の黒い影
*夢のような白鳥



夢のような白鳥

September 16, 2015

フォーレ "水の上の白鳥" 4節目。
(楽曲上の4節目・ブリモン詩上は5節目)


  Or j’ai dit:"Renoncez,beau cygne chimérique,
  à ce voyage lent vers de troubles destins;
  "諦めなさい、美しい夢のような白鳥よ
  模糊たる運命へ向かうゆっくりとしたその旅は

節を追うごと変化した白鳥の像。

  *ルネ・ド・ブリモンの白鳥
  *白鳥 -- 尊大な王
  *白鳥とブルーコットン
  *白鳥の黒い影

白鳥がより近しくより明らかになる変化だった。
一方で白鳥が '幻想的に見える' 様子の顕われも重ねられてゆく。


タイトル 'ミラージュ(幻影) ' に類する語は3つ使われてきた。


1節目は文字通り du mirage。
[夢と幻影と木霊と] といった風な漠とした印象に対して '幻影' の語を当てた。

3節目は un reflet だった。
1節目と異なる原語に対応させ、此処では幻影とせずに '反映' を置いて [空疎な反映を追い求め] と繋いだ。

其うして4節目 chimérique。
対訳なら幻想が近いかもしれない。けれども読み進むにつれ白鳥は強く哀しみに満ちた一個体にかわっていった。幻想の像ではなくなった。それでも望む望まぬに関わらずやはりファンタスティックな存在を外からの目線で称えて当節では '夢のような' とした。


楽曲構造は素晴らしいです。


Il glisse. 白鳥が滑る1,2,3節は、
第1節のゆるやかに浮かぶような当に水に浮かぶ白鳥の姿から、第2,3節は細かな16分音符が立てる細波を分けて悠然と行方を定めていた。

ところが心の声 'Or j'ai dit, ' の自己抑制が "私は白鳥に言った" 形をとってその歩みを抑えたところでは、スラー・スタッカートの8分音符が《私の思考=白鳥》にブレーキをかけようとする。

流れのない伴奏。主には奇数拍を軸に微妙にハーモニーを換えながら、拍感に関わりなくふいに色変わりするような割り切れない感覚を私たちに齎して白鳥を留めようとする。

**


毎日時間がなさすぎ・・・今朝はここまでしかできませんでした。


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    *フォーレOp.61-5 希望
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白鳥の黒い影

September 05, 2015

お稽古休憩に少しずつ作ってるハンギング用の紫陽花ドライ。


摘む毎にアトリエに提げて乾かしておいて、毎日の5分10分の隙間にちょっとずつ取って種除き。綺麗になった茎をまた少しずつ溜めてやっと1つ完成〜

夫にシーリングフックに掛けてくれました。


"水の上の白鳥" 訳はまた迷ってる。


  *ルネ・ド・ブリモンの白鳥
  *白鳥 -- 尊大な王
  *白鳥とブルーコットン

新しい悩みは先回の第4節冒頭。
'白睡蓮の円い花冠' の前に et が加えられてる。

拙訳では省いています。
日本語の 'そして' が詩の中で説明的になりそうで、
省略によって経過の重なりに混乱を来さないからって理由でした。


しかし、フォーレ楽曲では当節までに1小節と1拍の空白があって d'argent がディミヌエンドしたのちに深みを湛えたバスが新たな展開を示唆している。


et に直結するものっていうより寧ろ4拍の空白に当てて 'そして' と訳語を入れるべきじゃあないかしらって悩み始めて・・・保留です。

続くセンテンス

  Mais plus avant toujours,sur la brume et sur l’onde,
  Vers l’inconnu fuyant glisse le cygne noir.
  それでも弥増(いやま)さる先へ霧の上を、波の上を、
  逃去ろうとする未来へ向かい白鳥の黒い影は滑る


不安感を誘うハーモニーと右手16分音符の留まらぬ波。


小さな不和を水の中に潜らせて、白鳥は滑るのでしょうか。
バスは節はじめの深みから徐々に上昇してからMi♭の調の仄かな明るみに終結。

'白鳥の黒い影' は白のエレガンスのプロファイルにも受け取れるが、楽曲では16分音符に乗って進みゆく白鳥が前節 '銀の月が照らす' 場所にはもう居ないと、移り変わった空間を叙述しているようにも感じられた。


*"町人貴族のセレナード" 落合訳
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       ?僕がイヤんなるコト
    *フォーレOp.61-5 許して下さい
    *フォーレOp.61-5 愛しき者
    *リディアとマリアンヌ
    *フォーレOp.61-5 希望
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    *"本当は、怖いくらいに" 挿入箇所


*"リディア" 落合訳
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    *フォーレOp.61-5 愛しき者
    *リディアとマリアンヌ


*"眩耀の夏のひとひ" 落合訳
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*僧院の廃墟にて


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*"この世にて" 落合訳


*"漁夫の悲歌" 落合訳


*"罪の償い" 落合訳
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*"墓地にて" 落合訳
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*"祈り" 落合訳


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*"水のほとりに" 落合訳
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*"ロマンス" 落合訳


*"月の光" 落合訳
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     *月の光と母性
     *フォーレ "月の光"


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*訳すということ(6)マリア様のお顔
*訳すということ(7)クロモスとお友達
*訳すということ(8)伴奏
*訳すということ(9)エコルセ
*訳すということ(10)メープルクッキー
*訳すということ(11)スタンダール
*訳すということ(12)演奏通訳



白鳥とブルーコットン

August 29, 2015

ざっくりした大きなブルーコットンをアトリエの椅子へ掛けてみた。


思いつきと成り行きで時々変わるアトリエの小物。どんなに場所にしたいってイメージはないままです。お買い物が得意じゃないからあり合わせがぐるぐる回ってる。

フォーレ "水の上の白鳥"、

  *ルネ・ド・ブリモンの白鳥
  *白鳥 -- 尊大な王


訳の続きを考えてみる。


  et les roseaux nombreux s’inclinent quand il passe,
  sombre et muet,au seuil d’une lune d’argent;
  物憂げに押し黙り、銀の月が照らす臨界過ぎる時
  数しれぬ葦が頭べを垂れる

'物憂げ' は '陰鬱' って訳も可能性はあった。でも白鳥の形をとったパンセそのものが果たして鬱々としているかしらと思ったのだ。白鳥のパーソナリティを潜考すると白鳥自身の愁情に受け取れる風に表現しづらい気がした。
  
フォーレが節全部を削除して楽曲には入ってない原詩終部には、あなたの懐古の念には誇り高い品格があり、と著される興味を引かれるところがある。

気鬱や暗さや湿っぽさが連想する弱さと違って、鬱陶しいような気分に近い風を思った。


次は3節目 (詩では4節目) 。


前節では水上を滑るようだった右手伴奏形は、水面から水中へ弛く混ざり合う調子に変わりゆっくりと音高を高めてゆく。

フォーレによる詩の変更が加えられてます。

原詩はdesir ou d’espoirだがフォーレはdesir et d’espoirとした。

  Et des blancs nénuphars chaque corolle ronde
  Tour a tour à fleuri de désir et d’espoir…
  白睡蓮の円い花冠のひとつひとつ
  次々に願望と希望の花を咲かせて・・・


続きはまた今度に。


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白鳥 -- 尊大な王

August 25, 2015

アトリエの開口でいつもドライを作ってるから此処の写真ばっかり。紫陽花ドライ作りも段々おしまいになってきた。


先回の続き、フォーレ作曲 "水に浮かぶ白鳥" です。

  ルネ・ド・ブリモンの白鳥

2節目をフォーレが削除したので、続くパラグラフは詩では3節目ですが楽曲では2節目となります。

  Il glisse,roi hautain fendant un libre espace,
  尊大な王は自由な拡がりを押分け滑る


直訳は '自由な空間' だが纏わる日本語イメージを払拭するために '拡がり' と書いてみた。


パンセである白鳥は、自由な広々とした空間の展開を謳歌しているのとは違ってる。岸辺の草も水上の藻も、白鳥の滑りを阻むものに気を捉われることのない思考が、第1パラグラフでsageと指すものと同種に思えた。

自由とは白鳥にとってのみ自由で、現実の行く手は他の者にとっては簡単に差し障りある物となる。堰き止める小さなショーズをものともしない静けさを '尊大な王' と示す風に捉えた。

訳すにつれ、識らなかったド・ブリモン夫人に惹かれ始めた。


'滑る' の語が2度目 (フォーレの削除個所がある理由で詩中では3度目、曲中では2度目) に登場して、楽譜と見比べて再び第1パラグラフを悩んだ。


先回 qui glisse lentement aux rivages d’ennui を滑りゆくとして善いかしらって自問した理由だが、第1パラグラフの伴奏はゆったりした音運びで付点2分音符、2分音符、4分音符だけで構成されており

波立つような第2パラグラフと異なって '滑りゆく' と進行を特定することを迷っていたのだ。詩を中心に考えれば其の後数カ所に記される glisse と表現を揃えるのが望ましい気がしていた。

しかしやはり違う。
楽曲訳ならフォーレの表現に従い、第1パラグラフは進行状態を表さないで白鳥単体の仕草だけに留めようと考え直した。

  倦怠の岸辺をゆるらかに滑る

と変更することにした。

尚 'ゆるらか' は緩やかの古語表現だが、'ゆるらか' または 'ゆるるか' のいずれが好いかは保留だ。


続く1行。


  poursuit un reflet vain,précieux et changeant,
  希有にして移ろいやすい空疎な反映を追い求め

précieuxを貴重、尊い、稀少と訳すこともできるが思索の行く途で追い求めるものは見つけることが希であり、手に入れても移ろい消えて虚しげな真空を残し、だから尚稀代のものとなる意味で訳した。

考え直さなければならないところを残しつつ続きはまた。



ルネ・ド・ブリモンの白鳥

August 23, 2015

冷凍ブースの小さなジャロジー窓。
蔓薔薇が早く窓グリルまで届かないかなあ・・・


フォーレ "水に浮かぶ白鳥" の演奏に際して改めて詩に当たってみた。詩人ルネ・ド・ブリモンはド・ブリモン男爵夫人。ラ・マルティーヌの末裔だそう。

曲集のミラージュというタイトルは、ド・ブリモン著の詩集タイトルから取られた。

絶佳の語がふさわしいかしら。知の情感を呼び覚ますよう語りかける風で、耽美な詩に嵌り込みながらも日本語の語感で表現することに早くも絶望を感じてしまう。

私の想いは白鳥。


曲タイトル "水に浮かぶ白鳥" とはつまりパンセなのだ。
詩の冒頭でかたまってしまう。

我が想いが白鳥であると詩を始める女人の作品に触れるのは、麗しげな佳人の側へ腰かけるのを憚られる風な緊張がある。緊張しながらも彼女の世界を覗き見たい気持ちになる。

白鳥が想いの形であると読み砕くほどに水に浮かぶ・水の上の・水に漂う等どれを選ぶか題名さえ決めかねてる。


絶望しながらも少しずつ見てゆこう。


  Ma pensée est un cygne harmonieux et sage
  我が想いは諧調と寧静湛える白鳥

此の詩は漢字を多く用いたいと思った。
日本語の音をアレクサンドランの交韻で顕すことができない分、語に意味合いの幅を持たせることができる漢字使いによってパンセの実像を狭めない工夫が必要に思えた。

大人が自分の想いに対して用いるsageの語は穏やかさや物静かさを表しながらも、長閑さからくる静けさとは異なる静観の意を多少込めて寧静とした。

  qui glisse lentement aux rivages d’ennui
  倦怠の岸辺をゆるらかに滑りゆく

滑りゆくで善いだろうか。また悩んでる。
此の詩にはフォーレが削除したために作曲されていないパラグラフにあと2つglisseの語があり、水の上を滑るような白鳥と日本語感覚でのパンセが過ぎ行くイメージを一致させるべきかどうかを迷う。

白鳥の姿を借りた思索は白鳥としてのみ語られるのが好いか、時には思索を主人公に据えるかを酷く悩んでしまうのだ。


その理由は、白鳥のイマージュを謳う部分 (2節目) をフォーレが削除してるからだ。


全節を朗する詩で白鳥のイマージュに於いて描かれるところも、フォーレが選別した5節で形成された楽曲訳では白鳥=思索と踏まえたものが顔を出すのが望ましいか判断つきかねて・・・


決めかねたまま次行へ。

  sur les ondes sans fond du rêve,du mirage,
  de l’écho,du brouillard,de l’ombre,de la nuit.
  夢と幻影と木霊と霧と影と夜の
  底なしの波の上を滑る

続くおしゃべりはまた・・・



パリの大聖堂と

August 18, 2015

雨上がりの朝顔。
夫が扉を開くとき、花びらの水粒がころころ落ちた。


森有正著 "遙かなノートル・ダム" を読み進んだ。

  *サ・セ・パリ

カテドラル・ノートルダムが様々な表情をもって多くは氏の心境を投影しながらそそり立つ。太宰治の富嶽百景と構造が似通うところはあるけれど、カテドラルは氏にとって必ずしも親しい存在として在りはしない。

此処で読書感想文を書くつもりじゃあなくて
読みながら考えてたのはフランス音楽のことだった。


形を変えるテーマや、姿を変えて映る曲中の鏡像をレッスンでイメージ解説する際に、伝えきれるかどうか不安な時がある。


風景と心象が重なる絵図が多いなか、ドイツ音楽のようにプロットが時間と共に一方向へ進むことは少ない。

時には楽譜を逆向きに捲って時間を戻すような、時間と共に流れるのを常とする音楽の行き先を定かならぬものにする風な効果、または停滞して消えてしまうものや沈んだまま溶け広がって形を失うものたちを如何にして口頭で顕したら良いかしらと、また

消えた輪郭をなぞり起こすような感覚をどうやって伝えられるかしらと悩む。

其うしたときに当書が描いてくれる構図はなかなかに伝達に適してる気がした。


対してノートルダムの描き方は、私観とは違う姿をしてた。


カトリック教徒にとって聖堂はご聖櫃があるところ。カリスとコルポラーレなど聖具を備えていてミサをあげ、ミサの中心であるエウカリスチアによってキリストの現存を知り頂き祈る。

内から眺める美しいゴシック造りはお祈りと聖歌に満たされるためにあり、その美は導きにもなり、堂々たる外観はミサに与るよう呼び寄せられるものであり、行けない時は後ろ暗い悔恨の思いにさせられるものになり

各自気に入りのコワンがあり、眺めて安心するタンパンがあり、前を通るよう決めてる聖人のスタチューがあり、方や悔悛の秘蹟に与る告解室は外側のグリルだけでどうにもおどおどしてしまう存在で、反対に告解をしない後ろめたさといったらなく、


心弱さをおぼえ赦しを求め、
聖なる場所へ踏み入るポルトに迎えられる。


そして聳える聖堂が拠り所になる。

だから普段は、なんとなく教会外観を撮った写真や外観描写だけ繰り返される文には興味がもてず、それよりもその人がどうしても此処じゃなきゃいけないと思い入れた対象を見せてもらうほうを好ましく感じてきた。誰かの思い入れに明確な証があるほど、その世界に触れたいと思うほうだ。

だけどこの随筆には心惹かれるところが沢山あった。
全集付録の書評を書いておられる古屋健三様も

《しかし、それにしても、なぜ森氏はこれほどノートル・ダムにこだわるのか。》
《氏はカトリック信者でもないし、教会建築のディレッタントでもない。》

と疑問を呈され、

《氏が自身の肉体にもっと執着して、ノートル・ダムとの確執を詳述してくれていれば、氏はわれわれにとってもっと切実で、親しい存在となったかもしれない。》

と括られているのと同じ気分は否めないが、聖堂の絡みを外してもとても楽しい著書だった。何度も目を通したくなるような。



サ・セ・パリ

August 15, 2015

アトリエの隅っこ。


今はなくなってしまった古い棚の引き出しは祖父のものだった。ペンキを塗って箱代わりにしてたり、故人のスケッチブックがあったり。古いばかりでお洒落感なし。

ヴァーズだけがフランスから持ち帰ったアンティーク。


森有正氏の随筆を読みはじめた。"遙かなノートル・ダム"。カント "世界平和の為に" のあと楽な気分で目を通せる1冊をと手に取った。


日本人作家さんの書籍を此処20年殆ど手にしてこなかった。10代までは日本文学にも大分触れたけど其処から年月をかけて徐々に減り、近年はディドロ研究の鳥井博郎様ほか論文は好きでも和物の文芸書籍には消極的になった。
思想から垣間見える独特の宗教意識 (此の場合はイコール無意識) が自分にはどうしてもきついからだ。選べない日常環境だけでたくさんなので選べる書物でまで触れたくなくて避ける。でも森有正氏の作品は好きだ。

1955年頃から '学鎧' '展望' などの誌上に掲載された作品たちで近代の著書なのに、フランスが遠い国だった時代のような感覚に興味を持つ。

普段から自分が知らない着目点の著者が新鮮な考えを与えてくださるのを好むけど、彼の著書は1文ずつ止まって考えてしまうくらい隔たりが感じられて面白いのだ。


たとえば対立的傾向を持つ芸術家例に


《プッサンとクロード・ローレン、シャルダンとフラゴナール、ドラクロワとアングル》たちを挙げなさってる。

私個人はディドロの影響でプッサンとシャルダンを対比させて考え、アングルに対する位置にはむしろクールベをおきたい想いになるが、ニコラ・プッサンとクロード・ロラン (ローレンより此の呼び方が一般的じゃないカナ? ) は双方フランスからローマに出た画家としても絵のテーマも比較対象にふさわしいのだろうなどと思い直す。


または本を読了した気持ちを

《読み終えた今、私は、中欧の作曲家の作品、たとえば、マクス・ブルッフのヴァイオリン・コンチェルトを聴きおえた時と同じような感動にみたされている。》と表現なさる。

聞かせる曲だけれど中央ヨーロッパの幾世紀もの広大な音楽の歴史の中でたった1曲を挙げるにはピンとこなくて考えてみたり。氏は長らくパイプオルガンを学ばれたそうだから、其うした経験も好むものを決定するところがあるのだろうかと思ってみたり。

逐一違った感覚が興味深くて楽しい。


大きな共感をおぼえるのはディドロたちでも、自分にとっては書籍に共感は不可欠じゃなく寧ろ気づきを求めてるって再確認した。


  "赤いノートル・ダム" の一節

《その日は、やはり朝から嵐模様だった。南郊へ行くバスに乗るかれと町角で別れてから、僕は、サン・ジャック街を、ノートル・ダムまで下って行った。もう夕方七時を過ぎていた。僕の心の中には、'これでよい' というあるものが、何のにごりもカスもない透きとおった冷たい水が水盤の中に渦をまいてこぼれてゆくように、絶え間なく湧き起るはしはしから拡散し、消えていった。

それは思想でもなく、感情でもなく、気分でさえもなかった。そういうものよりもっと直接なもの、もっと人間そのものである何か、であった。これがヨーロッパというものかしら? 僕は意味もなく、ふとそう思った。僕はサン・ジャックの坂を下りきった。》

  'これがヨーロッパというものかしら? ' の流れが心に残った。
  パリに暮らす者は皆一度は呟くのじゃあないかな。
  Ça c'est Paris って。


はじめは此んな感じで読んでた。
続きはまた今度に・・・



死に備えるノート -- 棺 --

July 04, 2015

プロスペリティがまた咲きはじめた。


春にお花を終えてすぐカットしておいた。
繰り返し咲きの薔薇の楽しさ。命の不思議を感じる。

家内ではルビー色の赤紫蘇ジュースを作った。


自家製ジュース大好きな夫が喜んで、光に透かしながら一口ずつ大事そうに味わってた。

**


保険屋さんのお知らせに入ってたノートを夫の前で取り出した。
よくある景品の風だけれどふと夫と一緒に開いてみたくなった。

病気に備えて加入保険を一覧にしておいたり、投薬の際のアレルギーを書いておいたりするノートだった。

ページごとの項目は便良く使えるだけじゃあなく、お互いの考えを識る貴重な時間をくれた。


私たちは何も迷わず、考えが分かれることもなくスイスイ書き込んでいった。


  病状も余命も告知してほしいこと。
  最後はなるべく2人で過ごす環境を得たいこと。
  葬儀はカトリック教会でミサをあげて頂くこと。

  私たちには当たり前で迷う余地ない事ばかりだった。


葬儀も神父様のご采配にお任せして、個人の拘りなんてないのだった。


棺に入れてほしい物を書く欄があった。


なんにもないワ、って笑った。
神様の元へ行くのに何を持ち込む必要があろうか。

大切に感じる物や思い出の品々は物の形を失っても変わることなく心の中で輝きを放つが、地上で集めた何物も天国に携えられないのだ。

精神だけが天の居所を豊かに示してくれる。
其う思い、此れまでの項目同様に夫も同じかと目をやると何か書きつけてた。


覗きこんで、ジンとした。


棺の中でさえも側にありたいと願う想いは、物そのものを欲するばかりじゃないのね・・・ってわかった気がした。

  妻の写真。
  妻の白いワンピース。



人工と自然

May 31, 2015

雨上がりの肌寒い朝。


パープルのクレマチスは夜に夫と眺めながら写した写真です。
家の外灯で夜も割合に明るい場所。

お庭でお夕食後のコーヒーを飲んでおしゃべりしてた。先週からの考え事を進めて纏まらないまま。

  *人工の庭
  *明るい朝


人が住む町は営みが道になる。


細道ができて、細道から小路が造られ、小さな目的地へ向かうために奥へ脇へと途がこまごま生まれてく。

小さな迷路、袋小路。便が悪い道は分けられ、或いは狭まり、或いは付け足され、住屋や集落の形が変われば道も変わる。


其うしたものは定義によっては "自然" と呼ぶこともできるかもしれなくて、ある一定の和風庭園の考え方も近い形態なのかもってぼんやり思った。


よく伸びた枝や広がる低木をそれぞれに生かした縮景は


お寺や神社が保持する庭園ならずとも多分に宗教観が反映された景趣の調和と、生き物としての木々の営みの形を扶養しながら存続してるところ含めて縮景と考えられるのかな・・・?

なんて・・・

決して何かわかっておしゃべりしてるのじゃあなくって
自分には遠いものを傍観した不明瞭な感想。


並べてみるとバロック式庭園の '人工' は


  (先回リンク内:
  日本庭園は自然の状態を生かした景観を想定して
  内に見立てを仕込むための人工的な刈り込みや砂や石を配し
  フランス庭園は人工的な統制で枠を造り込んで
  内に自然の状態を生かした植込みを配する)

極めて人為的で支配的なもので、結果として人工的な因子が見えるのとは隔たった確信的な人工に見える。

植物を使って空間支配をする是非を問わない疑問なき統率支配は、宗教的土壌が培った気質も大きいのかな・・・


バロック庭園が大好きだけど自然に親しむ場所として捉えたことはなくて・・・


庭の持ち主が人工の支配の果てに完成させたかったヴィジョンを知るのが好きだ。

強引で時に暴力的なまでの仕立て方をする独特のフランス庭園。
自然への漠とした恐れは省みずむしろドヤ顔で庭園をコントロールする様は、善悪を離れて惹かれるネイチャーだ。


お庭のつまんない呟きに記事3つも使ってしまったのは、話題のはじめに書いたように私なんかにできる筈もない庭園比較が目的じゃあなくて


対象を問わず人工っていうと負の因子を連想するのは負の人工物に囲まれた現代特有のものかもしれず、'人工' が '発想' とか '技巧 とか '創意' に直接結ばれた事柄に目を向けたくなったって理由です。

ルソーは '自然' の語について激しく論を重ねたなって思い出しながら・・・

数行前の《自然への漠とした恐れは省みず》。
自然を畏れないのとは違う。自然への恐れが漠としたものではない、という気質が創り出した人工に興味を持っています。


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人工の庭

May 25, 2015

コンボルブルスが広がってる。


いつからか自生して初夏の足音を聞く頃にたくさん咲き始める。
透明感あるブルーパープルに気分が踊る。

アリッサムは2番花をつけて成長中。


白とライトグリーンの爽やかな小花。

アーチのブラックベリーもたくさん蕾をつけてる。


夫が "ジュースにするの? ジャム作るの? " って実がつくのをワクワク待ってる。熟れたらまた鳥との争奪戦になるのかな。


いつまで経っても進化途中でしかない小さなお庭で


ときどき思う '庭' というものをまた考えた。

**


フランス庭園を浮かべるとき、日本庭園との様相の違い以前に
'庭' に対する考え方の違いを面白いなって思う。

ザックリした表現を用いてしまうなら
フランスの庭は人工的だ。


人工って響きを善からぬものに捉える向きもあろうけれど
'自然を取り入れる' 事は既に一部人工ってところから出発すれば
自然か人工かはそもそもドクトリンの問の気がする。


フランスの哲学者モーリス・メルロ・ポンティ著 "哲学をたたえて" から引くと


《ベルグソンの著作が跡づけているような '発生' は、われわれが自分に語り聞かせる 'われわれ自身の歴史' であり、'われわれ' の 'あらゆる形態の存在' との宥和を表現する '自然の神話' なのです。

われわれは石ころではありませんが、しかし石ころを見ると、それがわれわれの知覚装置のなかに反響し、われわれの知覚は石ころから発しているように思われてくるわけです。

つまりわれわれの知覚とは '石ころ' の '対自存在への進級' であり、この '物言わぬもの' の 'われわれによる回復' であって、それはわれわれの生活のなかに入りこむやいなや、隠しもっていた存在を展開し始め、われわれを通して自覚に達するように思われるのです。

これまで '合一' と信じられていたものは、実は '共存' なのです。》

             (滝浦静雄様・木田元様訳)


著作はちっともお庭のお話じゃないけれど、庭園は知覚によって形作られると考えればマッチしないでもない文だ。素敵な著書。


《われわれの存在と物との関係は、現実的また現在的 '知覚' のうちに求められるべきものであって、今となってはもう片がついてしまった何らかの '発生' のうちに求められるべきものではありません。》

なんてとってもフランスらしい論述に感じた。
裏を返せば日本庭園の場合は、人と庭との関係を発生のうちに求めるところがあるのかもしれないとも思った。


おしゃべりが長くなり過ぎないよう先ずは敢えて乱暴に進めてしまえば


日本庭園は自然の状態を生かした景観を想定して
内に見立てを仕込むための人工的な刈り込みや砂や石を配し

フランス庭園は人工的な統制で枠を造り込んで
内に自然の状態を生かした植込みを配する

  って仮定しても其う遠くないような気がした。

(前者は平安・室町と随分変わったし後者はルネサンス・バロックと変化を持ったが、思想的にはどの時代も各国それぞれのライン上から大きく外れはしなかったように思えてくる。)


日本庭園に無知で正しく例を挙げられないけれど、目的は比較じゃない。音楽思想に関連する特徴に思えるので取りあえず大まかなところを呟いてみた。続きは追々・・・


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**


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**


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*ブルトンと散形花

*パリのプーランク
*フロランタンと詩と音楽
*プーランクとシュレアリスム



フォーレ "五月" を振り返る

April 12, 2015

モッコウ薔薇が蕾をもった。


窓内からお花を眺めたくて出窓近くに誘引してる。
5月が近づく頃に満開になるだろう。

ナンテ・・・
  強引に繋げてフォーレ歌曲 "五月" のおしゃべりです。


訳してから言うのもなんだが、ユゴー詩としての "五月” を訳すのはほぼ不可能に思えた。


此の美しい16行詩は、2行ずつの脚韻で朗されるからだ。

  réclame-âme
  charmants-dormanrs
  commence-immence
  joyeux-cieux
  étoiles-voiles
  chants-champs
  verdure-nature
  fleur-coeur

音楽的な此うした韻を和訳の中で表す能力が私にはない。

けれどもフォーレは韻に同じ音を当てておらず、12音綴り16行詩に音楽フレーズを2行ずつ確保することで8行詩の取扱いに近い格好でメロディーをつけている。

だったらば楽曲訳なら可能かも・・・って考えで駄訳を試みた。

  *フォーレ "五月" 落合訳
  *"五月" のぼやき


駄訳ゆえ幾つか註釈をつけなければならない。



  Et l'air et le printemps et l'horizon immense
  そして大気と春と見遥かす地平線を

immense の語に果てしない、広々した、など相応しい候補を選ばなかった理由がある。'見る' の意味合いが含まれていないに関わらず '見霽かす' とし、その上 '見遥' と間違った漢字を当てたんだった。

**


大気、春、地平線・・・初めて読んだとき心を動かされた。
大気と春は感じるもの。そして地平線は目で見るもの。
フォーレは前者の単語をクレシェンド、後者の単語を緩やかなラレンタンドと僅かなディミヌエンドのたゆたいに当てている。

(大気と春を) 感じて、それから遠く (地平線) に眼をやるような運びを美しいと思った。どんな訳なら其処にほんの少しでも近づけるか悩んだ。


正確な訳の1つである '広々とした' だと該当部分のフォーレのメロディーには力強過ぎると感じた。
'遥かなる' では、前の単語 'ハル' と音がかぶってしまう。


そこで、地平線は見えるものであることの強調と、単語的にはあくまで '遥か' のほうである意味を含めて、見霽かすではなく見遥かすとした。


続く部分には様々な訳があるようだ。


L'horizon que ce monde attache humble et joyeux
Comme une lèvre au bos de la robe des cieux!

拙訳では
    天衣の裾に口づけるように
    この世界が繋ぎ止められてる慎みと歓びの地平線を!
とした。


地平線にこの世界が繋がっている、と顕す心情に着眼した。

同じ現象でも '地平線が世界に繋がっている' や 'この世界が地平線に結ばれている' とはニュアンスが異なるように感じられた。

被造物たる人間を取り巻く世界が大いなる力によって '繋げられて' いるニュアンスで試訳をしたくなったのは、続く8行目に感動したからだった。


コリント2-5-2に《天から賜わる住み処》とある。
イザヤ6-1には《主が高くあげられたみくらに座し、その衣の裾が神殿に満ちて》とある。


'天の衣の裾' って表現から連想できるシーンは聖書に数限りなく出てくる。

自然と季節の営みに対して敬虔な思いを感じさせる当詩は
麗しい自然が繋がれている地平線、謂わば天との境界へ唇で触れる讃美を思わせた。

天衣の境界と見まごうhorizon。慎みと歓びの地平線。


*"町人貴族のセレナード" 落合訳
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*フォーレ Op.61-8 落合訳
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    *詩人と決め事
       ?僕が聞いた後悔とフォーレ
    *フォーレのオアシス


*フォーレ "本当は、怖いくらいに" 落合訳
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    *フォーレ '気に入ってもらえることを願う'
    *フォーレOp.61-5 始まり
    *フォーレOp.61-5 第2パラグラフ
       ?僕がイヤんなるコト
    *フォーレOp.61-5 許して下さい
    *フォーレOp.61-5 愛しき者
    *リディアとマリアンヌ
    *フォーレOp.61-5 希望
    *"本当は、怖いくらいに" タイトル他
    *"本当は、怖いくらいに" 挿入箇所


*"リディア" 落合訳
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    *フォーレOp.61-5 愛しき者
    *リディアとマリアンヌ


*"眩耀の夏のひとひ" 落合訳
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*"黎明燃え広がりて" 落合訳
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*僧院の廃墟にて


*"イスパーンの薔薇" 落合訳

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      *フォーレ "トスカーナのセレナード"
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      *トスカーナのおしゃべり


*"この世にて" 落合訳


*"漁夫の悲歌" 落合訳


*"罪の償い" 落合訳
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*"祈り" 落合訳


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*"水のほとりに" 落合訳
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*"ロマンス" 落合訳


*"月の光" 落合訳
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*象徴(6) "蝶と花" 落合訳


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*"ゆりかご" 落合訳
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*フォーレ "五月" 落合訳
*"五月" のぼやき


*"秘密" 落合訳
*"棄てられた花" 落合訳
*"秋" 落合訳
*"贈り物" 落合訳


*"森の鳩" 落合訳
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■訳すということ関連リンク
*訳すということ(1)野鳩
*       (2)椿姫の白
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*       (11)スタンダール
*       (12)演奏通訳



イースターの蝶々

April 06, 2015

45年も前に設置した洗面台。


横っちょに止まらせた蝶々は現行の小さいカードなんです。

グラスの縁なんかに止まらせてテーブル席でウエルカムカードにできる10枚入りのお品をお部屋の楽しみに転用しちゃいました。


2枚目はご不浄へ。


イースターには様々なイベントがありますネ。
1等好きな定番はやっぱりエッグハント。

イースターエッグを見つけるお楽しみで、フランスでは La chasse aux oeufs ですね。


チョコレートでできた卵が多いでしょうか。生命の象徴の卵をお庭やおうちに隠して子供たちが夢中で探す復活祭の幸せなお遊び。


  拙宅は今年、イースターエッグに代わって
  蝶々ハントにしたんですヨ。

この場所は壁色に同化しちゃって写真じゃ判り難いですね。
向かって左の蔓の真ん中辺に止まってます。
PCの輝度によっては見えないかも・・・


此処・・・♪


寝込んでる合間にプレコンサートやお稽古、夫の受洗前の準備に修道院通いでとてもイースターエッグの準備までできなくって・・・


夫は楽しそうに見回りながら10匹の蝶々を見つけてくれました。


ファゴットルームにもこっそり止まってたのが
夫はちょっと嬉しかったみたい。



フォーレ "五月" 落合訳

April 03, 2015

熱下がらず。
風邪なんてひくと普段に増して面白くないブログです。


おとなしくじっとしてる時間に訳してみた。


《五月》
           ユゴー詩
           落合訳

五月、花いっぱいの野原へ僕らを呼んでる
おいで! 君の魂に倦むことなく浸み渡らせて

野原を、森を、心地良い木陰を、
眠りの波の岸辺に射す浩大な月の光を、
径(みち)が始まるところで途切れる小路(こうじ)を、

そして大気と春と見遥かす地平線を
天衣の裾に口づけるように
この世界が繋ぎ止められてる慎みと歓びの地平線を!

おいで! 幾重のヴェールを通して地上に光を落とす
星達のはにかんだ眼差しを、
薫りと歌とが染みこんだ木を、
真昼の田園に宿る燃える息吹を、
影を、太陽を、波を、新緑を、

総ての自然の放射が
八重に咲く花の如く
君の額(ぬか)に祝福を、君の心に愛を咲かせるように!


むくむく伸びあがるヒヤシンスを見ながらle rayonnementの訳を考えた。


輝きって訳すことが数的には多い単語だけれど放射・威光などとも言い替えられる。

実生活で使用する際に大きくは意味が違わないが詩中ではニュアンスが変わる。

拙訳で放射を選んだのはよりカトリック的なニュアンスを求めてだ。

総ては被造物であり、自然の輝きもまた被造物に与えられた賜物として在って、人間にとっての春の享受も同じく恩恵となる構造を '放射' の単語に絡めた。


'輝き' の語を当てなかった理由の2つ目はフォーレのメロディーだ。


強弱記号がピアノ基軸の楽曲の中でクレシェンド部分に le rayonnement を乗せているが、緩やかにただ1小節の松葉の末にメッツォフォルテにしか上昇しないのだ。

其うしてデュナーミクに反してメロディーは下降する。煌めく野を満喫するそれとは異なり何ともモデストな雰囲気は、フォーレが人間の眼だけを主体に考えた風には読み取れなかったのだ。

最終行、額(ぬか)はカトリック国の人間にとってとても大切な部位だ。


聖油を受けるのも額、灰や聖水を受けるのも額、
按手を頂くのも、十字を刻んで頂くのも額だ。

この場合の 'La beauté' を非常に迷った。
'美' って訳すと人間の目で見る美醜に狭められる気がして・・・

La beauté は日常語の美とは別に、神を讃える形容にもよく使われる。La béatitude に近い用い方も含む感じに。

'額に置かれる美' とは何だろうって考えると、やはり恩寵であり祝福であり我々にとって至福のものであるというところから此のように訳してみた。


*"五月" のぼやき



"五月" のぼやき

April 01, 2015

南向きのアトリエに眩しい陽が射してる。


冬の寂しいお庭を賑わせてくれた蔓ものも春の日射しの中で見れば疲れた色って気がついた。思い切ってカットして次の芽吹きを待ってるところ。

除いた蔓も捨て難く、小部屋への開口部に提げてみた。

**


4月1日のタイトルが五月?

訳の試みができないでいたフォーレ歌曲 "五月" のコトなんです。
詩集を捲っては手をつけられずにぼやいてた。

未だ結論はないけれど、webぼやきにしてみようかな?
訳せるかどうかを恥をかきながら考えてみたらどうかな。


[歌曲 "五月"] って書いたのは、フォーレのタイトルだから。


詩の作者ヴィクトル・ユゴーは "Puisque mai tout en fleurs" (花いっぱいの五月) を冠してる。'Les Chants du Crépusule' (薄明の歌) という詩集に収録されてる1篇です。

  ここが問題。

ユゴーのタイトルはイコール詩の始まりの文になってる。
"花いっぱいの五月" と銘打って《花いっぱいの五月が》と朗する自然な形。

しかし "五月" とタイトル名を換えてあるのに 《花いっぱいの五月が》と元の歌い出しになる楽曲訳は是だろうか? の疑問が、最初っから止まってしまった理由・・・


拙筆が行なうのは
[ユゴー詩訳じゃない・フォーレ歌曲訳] だが
"五月" とタイトル付けるなら歌い出しも《五月が》にするのが
[フォーレ歌曲訳ではあるが・ユゴーのスタイルに則った楽曲]
の形になりはしないか・・・


っていう難問だった。


訳詩と楽曲訳の狭間に1つだけ逃げ道を見つけた。


Puisque mai tout en fleurs dans les prés nous réclame
を正しく訳すなら
花いっぱいの五月が私達を草原へ呼んでいる、だけれど

5月が連れてくる花いっぱいの風景をles presへも投影させて
--- 複数形だから一層幾つもの野の形、つまり草原だったり花の野だったりが可能になる故 ---

《五月、花いっぱいの野原へと僕らを呼んでる》も
可能性の1つかな。思案中です。

  思案すべきは楽曲・・・
  あくまでフォーレ目線にして
  フォーレがユゴーをどう読んだかに重点を置きたい。

ピアノで始まる。アレグレットだがドルチェで歌が入る。
"お花いっぱいだ〜! " って溌剌とした感じとは異なるのだ。

語順は後の考慮事項として
[呼んでいる] のは文章上 [5月が] なのだが、助詞を省いた。

'ゴガツガ' の語感が気になるのだ。少ないワードに濁音が3つあるのは軽い3/4拍子のドルチェに見合わない気がする。助詞を省いた場合、5月の野が呼ぶ、花が呼ぶ、後に出てくる木も太陽も光るものたち皆が呼んでいる喜びの空気感として考えもでき、風景に溶けた総てが "呼んでる" とするのも楽曲訳ならあり得る気がするのだ。


一方 '呼ぶ' の単語のほうは未定だ。


今週はじめから素晴らしい陽光に恵まれたお天気の中で思ってた。'春が私たちを呼ぶ' と表現する時は概ね表へ出たい・春の中へ駆け出したい私たち自身が主にあり、春は私たちの思いを受け入れてくれる・受諾してくれる、って感覚が強い感じがする。

しかしユゴーが用いた言葉は野のほうが求め・要求するニュアンスになる。返せば其れは、私たちの希望を野が招いているかに投影する度合いが強い格好でもあり、延いては此の詩の中の '自然と私たち' の関係を決定する --- 主人公が自然に対して持つ視線であり、恐らくヴェルレーヌ詩 "ね、そうでしょう? " の見方とも異なりそうだ --- ものになるが故に、"呼ぶ" が相応しいか否かは保留にしたい。

**


  ぼやき過ぎ・・・
  また後で電車の中ででも考えてみましょ。

今日はゆりかもめ君宅でプレコンサートです。
パンダの里ちゃん、彰タン、よろしくお願いします。



町人貴族 -- 愛しイリス

February 04, 2015

ダリみたいなオジサンのお写真カード。


フランスの多分ヴィンテージのカードを頂いて読書室にピン打ちした。

男性が抱えるお花は恋人のためでしょうか。
男のかたの仰り方ってよくはわからないけれど・・・

  あの人美人だねって言うときと
  綺麗な人だねって表すとき、
  対象女性の違いより
  口にするほうの気持ちが違ってはいないかしら。



私は男性ではないし傍観の感想に過ぎないけれど・・・


綺麗って表される人が必ずしも造形的に美人さんとは限らないって場合もあるかもしれない。その上で、形の造作以上に麗らかと感じさせるものがある人を指して "綺麗な人" って言うとき、

見目以上に其の方が発散する空気を心地よしと感じる気持ちや、存在の艶を貴ぶような気持ちが入ってはいないかしらって思う。

日本語では "美人" を端麗な美形とし、"綺麗な人" は顔佳花に喩えたいような麗らな佇まい・・・って風に捉えてるのも主観に過ぎないれど、更に国に寄っても美と美に対する特別な気持ちの表現は違ってる。


町人貴族のセレナード3行目 "愛しイリス" についてなんです。


belle Iris を直訳すれば '美しいイリス' になるけれど
日本語で表す '美人' --- もしも前に記した主観的なディフィニションに何らかの有効性があるとしてのお話ですが --- とは違ってる。

むしろ前出で関連づけたところの '綺麗な人' って言う気持ちに近い幾許かの情愛 (日常に触れ合うとは限らず銀幕の中の人だったとしても) が込もった表現として belle + 女性名がある。

少し進んで申せば先に美醜価値があるのじゃなくて、情愛があるから綺麗に見えてくる、若しくは情愛の対象の好みが美醜の好みと連鎖する、なども含めて。

  ナンテ断定したのは、いつだったかパリで数人のお友達に
  教わったことがあるんです。


belle は造作が秀麗と限らないばかりか、全く眉目に誉がなくても非常に尊重してる相手に使う事が可能ってお話だった。


パリ市内の大学で文学を教えてるお友達だったから言語に関しての意見には信憑性が高いのでしょうって思いながら聞いた。

情愛または大きな尊厳を感じる時に造作関係なく使うこともあるなど、belle + 女性名を男性が女性に対して直接口にする場合は所謂客観的な '美人さん' とは違う何らかの心動かすものを感じてる時って所論だった。

  面白いナって、直訳語との違いを顧みて
  そうしたおしゃべりを参考にしつつ

belle Iris は此の恋歌の場合
愛しイリスと訳した。


*"町人貴族のセレナード" 落合訳
関連記事*フェーブとモリエール
    *町人貴族 -- languis
    *町人貴族 -- 9/8拍子と瞳
    *町人貴族 -- 反語



"町人貴族のセレナード" 落合訳

January 29, 2015

フォーレ歌曲演奏に当たって "町人貴族のセレナード" をざっと訳してみた。



    《セレナード》
             "町人貴族" より

昼となく夜となく 憂苦果てなき物思い
うるわしの 汝れが瞳のすげなさに 竦みてのちの愁いのみ
愛しイリス、恋し焦がれた己が身に 冷(ひ)やかな仕打ち
然(さ)れば嗚呼、敵(かたき)を如何に葬り給う?

Je languis nuit et jour, et mon mal est extrême,
Depuis qu’à vos rigueurs, vos beaux yeux m’ont soumis;
Si vous traitez ainsi, belle Iris, qui vous aime,
Hélas! que pourriez-vous faire a vos ennemis?



体調不良ゆえ、訳についてのおしゃべりはまた今度に。


*フェーブとモリエール



混じりっ気

January 10, 2015

此の頃フェーブ関係の写真ばかりですが・・・


御節料理がない年始を過ごす代わりに御公現のお祝いに熱心なのです。

節会でお供えしたお料理とされる元旦の御節料理はしないけれど七草粥はとっても美味しそう。どんなお味がするか一生に1度口にしてみたいなって思うことがある。

邪気を払う由来があるとされる風習のものみたいで・・・イエズス様以外の何ものかに御加護を求める格好になると抵抗があるので季節を外して、機会があったらお味見してみたいナ。由来にかからない単独のお料理として。


出エジプト記20章3節


《あなたは私のほかに、なにものをも神としてはならない。》


うちは此れが当たり前だったけれど、厳守するのは割合に熱心な教徒だけで新しくカトリック世界を覗く人には難しいかしらって思ってた。其うと限らないことを夫に出会って知った。

夫は青年時代、対象を知らないままにあらゆる神に祈る事を無節操だと遠ざけてきた分、後年になって唯お1人の神を如何なるときも対象として交わることに深い喜びをおぼえるようだった。

結婚してから其ういった意識を知ったんだった。
求道者じゃない時にも其んな風に考える場合があるのねって新鮮に感じた。


夫の主張に、安心して出エジプト記の言葉を実践できるのは私にとっても非常な喜びです。


ギャレットの紙の王冠も嬉しげに寝室に飾った。
イーヨーのお山の枝やお庭の葉っぱしかない寝室だけど・・・


此のお部屋に入る前、着替えながらホスチアのおしゃべりをして、歯磨きしながらラテン語ミサのYouTubeを観てた夫。


フィルムの中で歌われてた無伴奏合唱はルネサンス調の知らない曲。多分パレストリーナ? って話し合った。

生活や音楽や信仰や・・・どの場面でも混じりっ気ないものに安堵する。どうしてかな。


■カトリック関連リンク
*寛容というもの

*疎外感を越えて
  *不思議な駅(15)好きなもの
*サン・ニコラの日
*2011新年
*サンタクロース
*クリスマスツリーと恩寵の聖母
*禁欲のクリスマス・イヴ L'abstinence
*お年賀状プリント
*年頭2013
*ギャレット・デ・ロワ
*ロザリオの祈り
*ミサ前に
*チョコレートに悩む
*キャスピアと教皇聖下
*ミサのオルガン
*お祈りとお姑さん
*結婚式のブーケ
*結婚式のベール
*2013年年末間近
*潔斎のクリスマスイヴ
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*大掃除は5月
*ギャレットと待ち合わせ
*カルナヴァルでした
*灰の水曜日2014
*ブロッケス受難曲
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*シネマ記録(11)大いなる沈黙へ
*マフィンとデート
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*プロポーズとゴッドファーザー
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*うさぎ型
*神様が呼んでらっしゃる
*入門式を終えました
*親戚とクリスマスイブと
*ノエルオーナメントの収納
*頭蓋骨・・・
*ただの1日



フォーレ Op.61-8 落合訳

December 21, 2014

ずっと昔の数個のクリスマスオブジェ。


私が生まれた年に両親が購入した北欧の品たちは、お箱も傷んでます。

御降誕の日をミサで静かに過ごしたい我が家は飾りつけをしないから、アドベントに入る主日から古びたベルなどを出してるだけのテーブルです。


今朝はフォーレOp.61-8 の楽曲訳を試してみよう。




  《ね、そうでしょう?》

         ポール・ヴェルレーヌ
         落合訳

ね、そうでしょう?
希望が笑みを投げかける
ひそやかな僕らの途を
ほがらかにゆっくり進もうね。

誰が僕らを知らなくても
誰かが僕らに注目してても
気に留めずにね。

暗い森に居るみたいに愛に踏み入り
僕らの二つの心に
円かな穏やかさが立ち込めて
夕を奏でる二羽のナイチンゲールになるんだよ。

僕らの運命がどうなるかなんて心配しないで
同じ歩みで進もうね。手をつないでね。
子供の心でさ。

此んなにも愛し合ってるんだから
ね、そうでしょう?


今日は一部分だけ加筆を・・・


  第1パラグラフ (原詩は第2パラグラフ)

Modeste は詩の上では 'ひそやか' より '慎ましやか' の訳の方が良いかもしれないが、暖かで浮遊するかのハーモニーに乗せた5、6小節目に掛かる歌曲の中では地道で手堅いニュアンスを含む語を避けた。

また、後に出てくる '人に知られても知られなくても' に掛け、結婚の賛同者が少ない辛さを越えようとする人の言葉になるよう選んだ。ベストではないが現在の考えはこの語が近いと思う。


'僕らの' と所有格も訳すことに決めた。日本語ではあえて入れる必要がない箇所も省かなかった。

  恋が成就した者が1等使いたい言葉だって気がするからだ。


私たち夫婦も結婚前、有頂天で '僕らの' '私たちの' と多用した。
結婚生活の中でも満たされた気持ちで使う。


'僕の' だった未来が '僕らの' に変わる歓喜。

マチルダに話し聞かせる詩人も、'僕ら' と唇に乗せる毎に深い喜びを感じてはいなかっただろうか。


*サンルームと暗い森
*暗い森、優しい森
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    *フォーレOp.61-5 愛しき者
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*"祈り" 落合訳


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*"クリメーヌに" 落合訳
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*"水のほとりに" 落合訳
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*"この世にて" 落合訳
*"漁夫の悲歌" 落合訳
*"秘密" 落合訳
*"棄てられた花" 落合訳
*"秋" 落合訳
*"贈り物" 落合訳


*"森の鳩" 落合訳
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■訳すということ関連リンク
*訳すということ(1)野鳩
*       (2)椿姫の白
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*       (6)マリア様のお顔
*       (7)クロモスとお友達
*       (8)伴奏
*       (9)エコルセ
*       (10)メープルクッキー
*       (11)スタンダール
*       (12)演奏通訳



"本当は、怖いくらいに" 挿入箇所

November 15, 2014

急に寒くなった週末
お掃除の手を止めて日光を浴びた。


南の大きな窓から陽が射すアトリエは少し暖かい。

とっても長かったフォーレ "本当は、怖いくらいに" のおしゃべりは今日で一段落です。


どうか赦してください、って訳で始まる第3パラグラフ。
詩中には 'どうか' に当たる単語は入っていない。


ロ短調に転調してピアノで歌われる Et je tremble からは
気持ちがもっともっとマチルダに向いてゆくだろう怯えが
まるで心の歩みが止まってしまうかのようなディスタンスの少ない音程で歌われる。

其うして愛ゆえの恐れを伝えることに赦しを願う。
文章上は '率直な伝達' を許してほしいと願うけれど、'許可の求め' とは違っているだろう。

愛することへの赦しを請う弱音のメロディーのニュアンスとして 'どうか' を挿入した。


最後のセンテンスも第2パラグラフ同様に、
君を愛してる! 直前の [・・・] はヴェルレーヌでは記されてない。


フォルテの "貴女を愛しています" 最終音 ' (ai) me ' には全音符とタイ音含む5拍がたっぷりと取られて、ピアニシモで que je t'aime が入る前にはハッとするドラマを見せる。

ピアノパートの暖かなコードの上昇は天上の幸福へと昇る心地を描くようだが音の流れに反して歌・ピアノパートとも4拍をかけて溜息のディミヌエンドが見られる。

其して空白。

2パート共に音は何も聞こえなくなる1拍がある。
ピアノパートも完全にペダルを断って、初めてのテュトワイエの愛の勇気を感じたい拍だ。

時のたゆたいと心のドラマ。

時間にすれば全音符から数えて数秒だけれど
前文からの続きではないと顕したくなった場所だった。


*フォーレ "本当は、怖いくらいに" 落合訳

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*"本当は、怖いくらいに" タイトル他



"本当は、怖いくらいに" タイトル他

November 13, 2014

ピーチネックレスがピンクの蕾をつけた。


時雨の仄暗い午後にフォーレの譜面を見てた。

**


楽曲訳をupするまで、"本当は、怖いくらいに" の J'ai presque peur 後のカンマを迷ってた。

譜面にはカンマがあるものと無いものがあった。ヴェルレーヌ詩集Classiques Garnier版とLes Classiques de Poche版にはそれぞれ付いていて、金原礼子先生のご著書 "Gabriel Faure et ses poetes" にはなかった。別の版もあるのかなって悩んで・・・

恐らくヴェルレーヌはカンマを入れたみたいって判る前から
タイトルはカンマ付きにしたい気がしてた。

フォーレ譜上では peur と en の間にタイを取り、
暗めの響きの peur が伸び切った後に静やかな告白調で en verite と歌うよう求めてる風に見えたからだった。


また、此の場合の '本当は(に)' とは


自己の中の真実如何または強調の形よりも、マチルダへの告白の気持ちにスポットが当たる風に思えたのだ。

  彼は '本当に' 恐れてる。
  しめつけられる気持ちになる '真実' がある。

っていうのは自己内の事実だが

  事実を告白する際の en vérité は
  もっと優しく、もっと怯えながら
  伝えたい事へ焦点を絞るように
  '本当はね' ってインティメイトな心持ちを含んでて。

  あのね、僕の気持ちはねと頬寄せて語りたいのに
  叶わずに孤独に心咽すような。


告白の '本当は' は、状態を漏れなく正しく伝えることじゃないだろう。1番の '本当' は最後の "君が好きだ" なのだ。

浮遊感ある hgga の音は、敢然として真実を話す形とは多分異なっているのだ。


タイトルと同一文の冒頭から此のように迷ってた。


1等悩んだのは文体だった。
楽曲訳だから曲が示す方向で文体を決めるけれど、一連の "優しき歌" で当曲だけ曲集内の他の曲たちと語調が違って感じられて、なかなか文体を定められなかった。

楽曲内容を考え考え書き進むうちに此の曲では、逡巡の末に素直に不安も自らへの歯痒さも言葉に乗せた若い心のあるがままの文が好ましいって結論した。

以下に今日は2つだけ註釈を・・・


第2パラグラフは正誤で言えば


  永遠に愛しい貴女の面影を
  貴女に捧げ尽くした心に宿し

のほうが望ましいだろう。
すべて捧げる・捧げ尽くすの語を下リンクの理由で回避して

  *フォーレOp.61-5 第2パラグラフ

  永遠に愛しい貴女の面影を
  貴女だけに捧げた心に宿しています。

に緩和した。
すべて貴女に捧げたなら、捧げた心は貴女だけに向いているという意訳です。はじまりのホ短調が転調に転調を重ねる箇所には決定的な単語より "貴女だけ" の柔らかさを設けたかった。


同第2パラグラフ "いっぱいになった心に" 後の [・・・] は詩中にはないからヴェルレーヌ訳ではあり得ないけれど、フォーレ訳として挿入した。


2つの二分音符を四分音符タイで結び、6拍の休符が続く。
其処にはピアノソロでマチルダのテーマの変形が現れる。

マチルダでいっぱいになった心絵の残像が
2小節間続く様子を感じたかった。

続きはまた今度に・・・


*フォーレ "本当は、怖いくらいに" 落合訳

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