Paris \



"背光に包まれし聖女" 落合訳

December 27, 2016

アプローチのビオラが元気なお顔を見せてます。


みんな揃って光のほうを向いてる。可愛いナ〜

プチコリドーでは冬薔薇の蕾が明るい色を添えてくれてます。

悩んだ '優しき歌' 1曲目は "背光に包まれし聖女" とタイトルをおくことにした。

光は与えられるものであるというカトリック的拘りは '包まれる' の言葉で解決し、最初試そうとしてた '受ける' っていう詩的じゃない表現も避けられる。

  *優しき歌の難しさ
  *聖女と塔
  *式部とヴェルレーヌ
  *少女のチャーム
  *カロリングの名


いつもながらのヨボヨボ訳です。


《背光に包まれし聖女》

             ポール・ヴェルレーヌ
     落合訳


背光に包まれし聖女よ
塔に居わす妃よ
床しさと愛の限りを
言の葉にのせる

森深く 角笛の
こがね色の音(ね) 響かせて
いにしえ人たる貴婦人の
やさし誇りに和す旋べ

清(すが)し微笑み 誇らかに
白鳥の如 穢れなく
幼女さながら頬くれないの華やぎに
妙なる心地

白き真珠と 薔薇の色
貴き公女の なよやかさ。
その万端を僕は見る 僕は聞く。
カロリングの 王朝の名に


Une Sainte en son auréole.
Une Châtelaine en sa tour.
Tout ce que contient la parole
Humaine de grâce et d'amour;

La note d'or que fait entendre
le cor dans le lointain des bois,
Mariée à la fierté tendre
Des nobles Dames d'autrefois;

Avec cela le charme insigne
D'un frais sourire triomphant
Éclos dans des candeurs de cygne
Et des rougeurs de femme-enfant;

Des aspects nacres blancs et roses
Un doux accord patricien.
Je vois,j'entends toutes ces choses
Dans son nom Carlovingien.


■訳詩リンク
*"牢獄" 落合訳
関連記事*ヴェルレーヌ "牢獄"
    *牢獄のポプラ
    *窓とお馬鹿さん記
    *簡素で静かな
    *背信
    *牢獄と鐘の音


*"町人貴族のセレナード" 落合訳
関連記事*フェーブとモリエール
    *町人貴族 -- languis
    *町人貴族 -- 9/8拍子と瞳
    *町人貴族 -- 反語
    *町人貴族 -- 愛しイリス


*フォーレ "九月の森の中で" 落合訳
関連記事*人生の秋
    *乾きと樅
    *森の安堵
    *深い森の中
    *失望の葉のひとひら


*"ラシーヌによる雅歌" 落合訳
関連記事*フォーレとナポレオン3とラシーヌ


*"古寂びた修道院にて" 落合訳
関連記事*僧院の廃墟にて
    *ユゴーxフォーレ
    *フォーレの改訂や単語など
    *フォーレと翼廊
    *回廊
    *軽やかさ
    *訳のやり直し


*"リディア" 落合訳
関連記事*"リディア" 再考
    *リディアという女性
    *バロックとgalantuelles
    *フォーレOp.61-5 愛しき者
    *リディアとマリアンヌ


*"トスカーナのセレナード" 落合訳
関連記事*トスカーナの目覚めと眠り
      *トスカーナの気配
      *フォーレ "トスカーナのセレナード"
      *トスカーナに憑かれて
      *フランス気質と音さがし
      *19世紀の恋情
      *トスカーナのおしゃべり


*"罪の償い" 落合訳
関連記事*身代金
    *罪と長調


*"墓地にて" 落合訳
関連記事*神戸外国人墓地


*"夢のあとに" 落合訳
関連記事*夢の目覚めの悲しさよ


*"水のほとりに" 落合訳
関連記事*サンピエトロ、体と遺骨


*"月の光" 落合訳
関連記事 *月の光とリュート
     *月の光のメヌエット
     *月の光と諦念
     *月の光に溶けて消える
     *月の光と母性
     *フォーレ "月の光"


*"森の鳩" 落合訳
関連記事*シルヴィーの鳩とたんぽぽ


*"水に浮かぶ花" 落合訳
関連記事*象徴(3)花色


*"ゆりかご" 落合訳
関連記事*ゆりかご


*フォーレ "五月" 落合訳
関連記事*"五月" のぼやき
    *フォーレ "五月" を振り返る


*"秘密" 落合訳

*"棄てられた花" 落合訳

*"秋" 落合訳

*"贈り物" 落合訳

*"ロマンス" 落合訳

*"イスパーンの薔薇" 落合訳

*"この世にて" 落合訳

*"漁夫の悲歌" 落合訳

*"祈り" 落合訳

*象徴(6) "蝶と花" 落合訳


op.58五つのヴェネツィアの歌

*"クリメーヌに" 落合訳
関連記事*アヴェ・マリス・ステラ
    *フォーレ "クリメーヌに"

op.61優しき歌

  *優しき歌の難しさ
  *聖女と塔
  *式部とヴェルレーヌ
  *少女のチャーム
  *カロリングの名

*"黎明燃え広がりて" 落合訳
関連記事*黎明、希望と決意

*フォーレ "本当は、怖いくらいに" 落合訳
関連記事*フォーレ "本当に恐ろしいほど" ラスト
    *フォーレ '気に入ってもらえることを願う'
    *フォーレOp.61-5 始まり
    *フォーレOp.61-5 第2パラグラフ
       ?僕がイヤんなるコト
    *フォーレOp.61-5 許して下さい
    *フォーレOp.61-5 愛しき者
    *リディアとマリアンヌ
    *フォーレOp.61-5 希望
    *"本当は、怖いくらいに" タイトル他
    *"本当は、怖いくらいに" 挿入箇所

*"眩耀の夏のひとひ" 落合訳
関連記事*解説 "眩耀の夏のひとひ" 訳

*フォーレ Op.61-8 落合訳
関連記事*サンルームと暗い森
    *暗い森、優しい森
    *ペーストガラスと歩調
    *詩人と決め事
       ?僕が聞いた後悔とフォーレ
    *フォーレのオアシス

op.113ミラージュ

*"水の上の白鳥" 落合訳
関連記事*ルネ・ド・ブリモンの白鳥
    *白鳥 -- 尊大な王
    *白鳥とブルーコットン
    *白鳥の黒い影
    *夢のような白鳥
    *クロモと白鳥
    *フォーレ白鳥のパラドクス

op.94イヴの歌

*フォーレ "目覚めているか、太陽の如き私の香よ" 落合訳
関連記事*創世記とフォーレ
    *果実
    *髪をほどく女
    *想いが香る
    *肌の匂い

op.106閉ざされた庭

*フォーレ "聴きいれ" 落合訳
関連記事*閉ざされた庭
    *聴きいれ
    *貴女の祈り

*フォーレ "アムール、私には愛しいのです" 落合訳
関連記事*フォーレIl m'est cher タイトル訳
    *雅歌メモ
    *歯医者さんでフォーレ
    *どなたが此の長い髪を?
    *結い髪


■訳すということ関連リンク
*訳すということ(1)野鳩
*訳すということ(2)椿姫の白
*訳すということ(3)マノン・レスコー
*訳すということ(4)カフェオレのボウル
*訳すということ(5)マカロン
*訳すということ(6)マリア様のお顔
*訳すということ(7)クロモスとお友達
*訳すということ(8)伴奏
*訳すということ(9)エコルセ
*訳すということ(10)メープルクッキー
*訳すということ(11)スタンダール
*訳すということ(12)演奏通訳



カロリングの名

December 22, 2016

ほわほわ軽〜いスカーフは昭和30年代のものでした。


昔に母に譲ってもらってから愛用してた。
透けてしまいそうな素材の秋色が好きだったナ。
布が傷んで洗いに耐えなくなってしまったからお別れです。


今朝はフォーレ "背光の聖女" 最後のパラグラフを。

  *優しき歌の難しさ
  *聖女と塔
  *式部とヴェルレーヌ
  *少女のチャーム


後日1節から纏めて微修正をするかも。


  白き真珠と 薔薇の色
  貴き公女の なよやかさ。
  その万端を僕は見る 僕は聞く。
  カロリングの 王朝の名に

Des aspects nacres blancs et roses
Un doux accord patricien.
Je vois,j'entends toutes ces choses
Dans son nom Carlovingien.


最終行は


カロリングの王朝の名に
カロリング朝の名の中に

のどちらにするかを迷いました。

後者が原語に忠実で据わりも良い。けれどどうしても王朝のワードを使うべきという気がして、字数のリズムを合わせるために '中に' のほうを省いた。

何故って・・・


これまで


大邸宅の塔 Châtelaine en sa tour
貴婦人の Des nobles Dames 誇り la fierte
微笑みの誇らかさ sourire triomphant
貴族の patricien

と、ヴェルレーヌはマチルドの生まれ育ちから漂う気品に夢中になってる様子を表わしていて、とうとうフランク王国 (カロリング Carlovingien) を出しちゃうのですもの。

ここは是非とも '王朝' と入れることをヴェルレーヌが望む気がしちゃったのでした。


■パリの風 第21回プログラム

     《第1部》

[愛と死]グラナドス
  *眠る物たち
  *愛と死

[アデュー] メンデルスゾーンOp.85-No.2
  *寝具
  *アデュー

[失われた幻影]メンデルスゾーンOp.67-No.2
  *失われた幻影

[葬送行進曲]メンデルスゾーンOp.62-No.3
  *葬送行進曲

[月の光]ドビュッシー
  *レッスン記録:月の光
  *慈しみの月光
  *レトロなワンピース
    *断捨離中です
    *断捨離後の収納
  *物とお別れ
    *赤い辞書
  *アーチの影
  *ムービーの事故

[西風が見たもの]ドビュッシー
  *古いノート
  *西風の2度
  *西風が見たもの
  *行き止まり

[スケッチ帳より]ドビュッシー
  *手紙
  *くたっとした布たち
  *あの時
  *スカートのレース
  *スケッチ帳の大過去
  *スケッチ帳

[火祭りの踊り]ファリャ
  *火祭り

     《第2部》

[旅への誘い]デュパルク
  *旅への誘い
  *早い朝の呟き
  *歌わない歌

[波と鐘]デュパルク
  *未解決

[ラシーヌによる雅歌]フォーレOp.11
  *フォーレとナポレオン3とラシーヌ
  *"ラシーヌによる雅歌" 落合訳
    ?僕が見た餃子屋さん

[牢獄]フォーレOp.83-1
  *ヴェルレーヌ "牢獄"
  *"牢獄" 落合訳
  *牢獄のポプラ
  *窓とお馬鹿さん記
  *簡素で静かな
  *背信
  *牢獄と鐘の音

[背光の聖女]フォーレOp.61-1
  *優しき歌の難しさ
  *聖女と塔
  *式部とヴェルレーヌ
  *少女のチャーム

[古寂びた修道院にて]フォーレOp.2-1
  *僧院の廃墟にて
  *
  *2016年8月のおうち避暑
  *今日会えること
  *"古寂びた修道院にて" 落合訳
    *ユゴーxフォーレ
    *フォーレの改訂や単語など
    *フォーレと翼廊
    *回廊
    *軽やかさ
    *訳のやり直し



少女のチャーム

December 18, 2016

着飾るのが苦手なので外出用のお洋服って全然買わないのに
ぬくぬくルームウエアは大好き。


お部屋着がクローゼットの3分の1を占めてる感じです。


今朝は訳の続きをちょっとだけ。

  *優しき歌の難しさ
  *聖女と塔
  *式部とヴェルレーヌ


背光の聖女3節目から。


  清(すが)し微笑み 誇らかに
  白鳥の如 穢れなく
  幼女さながら頬くれないの華やぎに
  妙なる心地

Avec cela le charme insigne
D'un frais sourire triomphant
Éclos dans des candeurs de cygne
Et des rougeurs de femme-enfant;


le charme insigne この上ない魅力、って文に悩みました。


女性に対して魅力って表現をする時、その内容は大人らしさが含まれる感じがするんです。

自分の魅力を把握できるくらいの成熟度があった上で、魅力という言葉が相応しくなる状態とも言いましょうか。

この詩のように少女らしさが残るマチルドのチャームにはそもそも魅力って日本語はそぐわない気がしたのでした。しかし魅力というワードを使わないとすると他に匹敵する言葉が見当たらなくって・・・


ならば魅力を感じた受け手側から描き出そうと思いました。


従って拙訳では '(マチルドの)この上ない魅力' という客観描写は、それによって '妙なる心地(にさせられたヴェルレーヌ)' の主観として扱いました。

此うすることで最終2行の '僕は見る、僕は聞く' にも結ばれるように今は感じています。


■訳詩リンク
*"牢獄" 落合訳
関連記事*ヴェルレーヌ "牢獄"
    *牢獄のポプラ
    *窓とお馬鹿さん記
    *簡素で静かな
    *背信
    *牢獄と鐘の音


*"町人貴族のセレナード" 落合訳
関連記事*フェーブとモリエール
    *町人貴族 -- languis
    *町人貴族 -- 9/8拍子と瞳
    *町人貴族 -- 反語
    *町人貴族 -- 愛しイリス


*フォーレ "九月の森の中で" 落合訳
関連記事*人生の秋
    *乾きと樅
    *森の安堵
    *深い森の中
    *失望の葉のひとひら


*"ラシーヌによる雅歌" 落合訳
関連記事*フォーレとナポレオン3とラシーヌ


*"古寂びた修道院にて" 落合訳
関連記事*僧院の廃墟にて
    *ユゴーxフォーレ
    *フォーレの改訂や単語など
    *フォーレと翼廊
    *回廊
    *軽やかさ
    *訳のやり直し


*"リディア" 落合訳
関連記事*"リディア" 再考
    *リディアという女性
    *バロックとgalantuelles
    *フォーレOp.61-5 愛しき者
    *リディアとマリアンヌ


*"トスカーナのセレナード" 落合訳
関連記事*トスカーナの目覚めと眠り
      *トスカーナの気配
      *フォーレ "トスカーナのセレナード"
      *トスカーナに憑かれて
      *フランス気質と音さがし
      *19世紀の恋情
      *トスカーナのおしゃべり


*"罪の償い" 落合訳
関連記事*身代金
    *罪と長調


*"墓地にて" 落合訳
関連記事*神戸外国人墓地


*"夢のあとに" 落合訳
関連記事*夢の目覚めの悲しさよ


*"水のほとりに" 落合訳
関連記事*サンピエトロ、体と遺骨


*"月の光" 落合訳
関連記事 *月の光とリュート
     *月の光のメヌエット
     *月の光と諦念
     *月の光に溶けて消える
     *月の光と母性
     *フォーレ "月の光"


*"森の鳩" 落合訳
関連記事*シルヴィーの鳩とたんぽぽ


*"水に浮かぶ花" 落合訳
関連記事*象徴(3)花色


*"ゆりかご" 落合訳
関連記事*ゆりかご


*フォーレ "五月" 落合訳
関連記事*"五月" のぼやき
    *フォーレ "五月" を振り返る


*"秘密" 落合訳

*"棄てられた花" 落合訳

*"秋" 落合訳

*"贈り物" 落合訳

*"ロマンス" 落合訳

*"イスパーンの薔薇" 落合訳

*"この世にて" 落合訳

*"漁夫の悲歌" 落合訳

*"祈り" 落合訳

*象徴(6) "蝶と花" 落合訳


op.58五つのヴェネツィアの歌

*"クリメーヌに" 落合訳
関連記事*アヴェ・マリス・ステラ
    *フォーレ "クリメーヌに"

op.61優しき歌

*"黎明燃え広がりて" 落合訳
関連記事*黎明、希望と決意

*フォーレ "本当は、怖いくらいに" 落合訳
関連記事*フォーレ "本当に恐ろしいほど" ラスト
    *フォーレ '気に入ってもらえることを願う'
    *フォーレOp.61-5 始まり
    *フォーレOp.61-5 第2パラグラフ
       ?僕がイヤんなるコト
    *フォーレOp.61-5 許して下さい
    *フォーレOp.61-5 愛しき者
    *リディアとマリアンヌ
    *フォーレOp.61-5 希望
    *"本当は、怖いくらいに" タイトル他
    *"本当は、怖いくらいに" 挿入箇所

*"眩耀の夏のひとひ" 落合訳
関連記事*解説 "眩耀の夏のひとひ" 訳

*フォーレ Op.61-8 落合訳
関連記事*サンルームと暗い森
    *暗い森、優しい森
    *ペーストガラスと歩調
    *詩人と決め事
       ?僕が聞いた後悔とフォーレ
    *フォーレのオアシス

op.113ミラージュ

*"水の上の白鳥" 落合訳
関連記事*ルネ・ド・ブリモンの白鳥
    *白鳥 -- 尊大な王
    *白鳥とブルーコットン
    *白鳥の黒い影
    *夢のような白鳥
    *クロモと白鳥
    *フォーレ白鳥のパラドクス

op.94イヴの歌

*フォーレ "目覚めているか、太陽の如き私の香よ" 落合訳
関連記事*創世記とフォーレ
    *果実
    *髪をほどく女
    *想いが香る
    *肌の匂い

op.106閉ざされた庭

*フォーレ "聴きいれ" 落合訳
関連記事*閉ざされた庭
    *聴きいれ
    *貴女の祈り

*フォーレ "アムール、私には愛しいのです" 落合訳
関連記事*フォーレIl m'est cher タイトル訳
    *雅歌メモ
    *歯医者さんでフォーレ
    *どなたが此の長い髪を?
    *結い髪


■訳すということ関連リンク
*訳すということ(1)野鳩
*訳すということ(2)椿姫の白
*訳すということ(3)マノン・レスコー
*訳すということ(4)カフェオレのボウル
*訳すということ(5)マカロン
*訳すということ(6)マリア様のお顔
*訳すということ(7)クロモスとお友達
*訳すということ(8)伴奏
*訳すということ(9)エコルセ
*訳すということ(10)メープルクッキー
*訳すということ(11)スタンダール
*訳すということ(12)演奏通訳



式部とヴェルレーヌ

December 16, 2016

キッチンの入り口と、タピオカちゃんが送ってくれたBeauvilléのトルションなど写しながら、背光の聖女の続きを見てゆきます。


  *聖女と塔

  背光に包まれし聖女よ
  塔に居わす妃よ

Une Sainte en son auréole.
Une Châtelaine en sa tour.

  床しさと愛の限りを
  言の葉にのせる

Tout ce que contient la parole
Humaine de grâce et d'amour;

3,4行目は直訳ですと '言葉に含まれる気品と愛のすべて' って感じカナ。


紫式部日記の《その方の才ある人、はかないことばのにほひも見え侍るめり》みたいですね。

マチルドの魅力(式部でいう 'にほひ' ) を作るものは、才(ざえ) よりもバックグラウンドが大きいというところでしょうか。

後に続く節の '貴族的な調和' や '王朝風の名' に繋がるように、雅やかな女性に憧憬を抱くところにも注目してみたい。


auréole -- tour -- parole -- amour の脚韻も女性的です。


韻を踏むことができない訳詩でもどこかに彼女のたおやかさを示すことができればいいナ。

  森深く 角笛の
  こがね色の音(ね) 響かせて
  いにしえ人たる貴婦人の
  やさし誇りに和す旋べ

La note d'or que fait entendre
le cor dans le lointain des bois,
Mariée à la fierté tendre
Des nobles Dames d'autrefois;


ヴェルレーヌ原詩はun cor。フォーレがle corに変更しています。


変更がどんな影響を与えるか試してみたいからピアノ室へ行ってきますね。

寒い朝に。



聖女と塔

December 12, 2016

ふくふくのフェイクショール。
膝掛けにショールに、お部屋で愛用中。


近頃色んな店舗で見かける形です。


長方形に2箇所ずつボタンとホールがあるの。


  ボタンA    ホールA
  ホールB    ボタンB

ボタンAとホールAを留めるとショール型に、ボタンAとホールB・ホールAとボタンBを合わせると袖になってポンチョ型に。

肩を出すのが寒い舞台袖でも便利に使いましたヨ。
オーガンジードレスは上に羽織るものがつるつる滑りがちだから
自由に形が作れる上掛けが重宝します。

**


昨日の続き "背光の聖女" 冒頭を考えてみてる。

  *優しき歌の難しさ

難しいナ・・・


1行目
背光を受けた聖女よ。
Une Sainte en son auréole.


実際の聖人じゃあなくて優しさや慈悲の象徴としてマチルドを讃える言い回しですね。

私観ですが賞讃の気持ちを '神に愛された人' と表わす形も含まれるかもしれない。

日本なら 'かぐや姫のような' などとその愛らしさを賞する感じにも少し似てるでしょうか。

タイトルもまだ仮の形です。


よく聖人像が後頭部に光を背負う形で表現されますが、後輪と言ってしまうと仏教的になるかなって迷い中・・・

仏教もカトリックもそれぞれに意味を持ちますが、カトリックで聖性を表わす人に描かれてきた輪光は、あくまで神のしもべとしてのものですね。存命中に模範に忠実に従った人を敬い慕うべく、神に何らかの光を与えられた者の徴として生き方を倣い、取りなしを願う対象とされます。

授かったものであることを日本語として表現したくって拙訳では背光を '受けた' と仮においてみました。

ヴェルレーヌはマチルドを神に愛された人だと讃えたい気持ちかもって空想したのも此んな理由です。


2行目
塔に居られる后よ。
Une Châtelaine en sa tour.


もしかしたら男女でイメージが違うかも?

少女期にグリム童話を読んで大きくなると、塔に住む若い女性にラプンツェル姫を想ったりしませんか?

それで何となく幽閉されてるお姫様のイメージを描きそうだけれど、une châtelaineは広大なお屋敷や古城の女主、または城主の妻や直接の相続人など。

閉じ込められたラプンツェルと違って
豊かな緑の中の大邸宅の風景なのですね。



優しき歌の難しさ

December 11, 2016

リビングルーム傍の好きなコーナーを拭き掃除しながら悩む。
"背光の聖女" をどう扱うかは難問に思える。


フォーレが1892年から作曲を始めた '優しき歌' はヴェルレーヌの21作品から選んだ9篇が集められている。フォーレの選抜にかかった物語は、ヴェルレーヌ詩が示す物語と若干印象が違ってくる。(順序は入れ替えられていない)

ヴェルレーヌ詩が語る詩人のパーソナリティをフォーレが篩い漉したものを私たちに見せる風な現れ方になるのも其の理由の1つだろうか。


金原礼子先生がご著書で


《この作品の特徴は、今までのように仮面をつけて月の光の中で、孤独と悲哀を心に秘めながら踊る登場人物も、クリメーヌのまわりをまわって恋を囁くアルルカンもいない。
これはマチルドとヴェルレーヌ、あるいは、マリアンヌとフォーレの愛の賛歌である。》

          ("ガブリエル・フォーレと詩人たち" より)

とお書きの通り、フォーレが多分に己の恋を投影しヴェルレーヌたちの姿に重ねた作品であるだけに、音楽を通した詩の読者はこの作品がマチルドを描いているのかはたまたマリアンヌ像なのか混乱しそうになる瞬間がある。

幸せな混乱だと思う。
それはフォーレが当詩に如何に深くそして清く心を映したかの証でもあるからだ。

果たして1行目から訳せない自分が居る。


とても私の音楽力と文章力では無理なのだけど、悩めるだけ悩んでみようと思う。

"背光の聖女" は '優しき歌' の1曲目に据えられるが、ヴェルレーヌ詩では8篇目となる。前7篇のヴェルレーヌの胸中語りを一旦置き、次篇からフォーレ歌集が開始されるのだ。

初めて登場するマチルドの音楽は実にやさしく、甘やかであどけなささえ感じられ、無垢な透明感に溢れている。

友人だったシャンソン作曲家シャルル・ド・シヴリーを通してマチルドに出会った瞬間から、ヴェルレーヌの心に優しい陽光が射し込んだかに感じられる。いや、フォーレのマリアンヌへの想いが其んな彩りを私たちに見せるのか。


■パリの風 第21回プログラム

     《第1部》

[愛と死]グラナドス
  *眠る物たち
  *愛と死

[アデュー] メンデルスゾーンOp.85-No.2
  *寝具
  *アデュー

[失われた幻影]メンデルスゾーンOp.67-No.2
  *失われた幻影

[葬送行進曲]メンデルスゾーンOp.62-No.3
  *葬送行進曲

[月の光]ドビュッシー
  *レッスン記録:月の光
  *慈しみの月光
  *レトロなワンピース
    *断捨離中です
    *断捨離後の収納
  *物とお別れ
    *赤い辞書
  *アーチの影
  *ムービーの事故

[西風が見たもの]ドビュッシー
  *古いノート
  *西風の2度
  *西風が見たもの
  *行き止まり

[スケッチ帳より]ドビュッシー
  *手紙
  *くたっとした布たち
  *あの時
  *スカートのレース
  *スケッチ帳の大過去
  *スケッチ帳

[火祭りの踊り]ファリャ
  *火祭り

     《第2部》

[旅への誘い]デュパルク
  *旅への誘い
  *早い朝の呟き
  *歌わない歌

[波と鐘]デュパルク
  *未解決

[ラシーヌによる雅歌]フォーレOp.11
  *フォーレとナポレオン3とラシーヌ
  *"ラシーヌによる雅歌" 落合訳
    ?僕が見た餃子屋さん

[牢獄]フォーレOp.83-1
  *ヴェルレーヌ "牢獄"
  *"牢獄" 落合訳
  *牢獄のポプラ
  *窓とお馬鹿さん記
  *簡素で静かな
  *背信
  *牢獄と鐘の音

[背光の聖女]フォーレOp.61-1

[古寂びた修道院にて]フォーレOp.2-1
  *僧院の廃墟にて
  *
  *2016年8月のおうち避暑
  *今日会えること
  *"古寂びた修道院にて" 落合訳
    *ユゴーxフォーレ
    *フォーレの改訂や単語など
    *フォーレと翼廊
    *回廊
    *軽やかさ
    *訳のやり直し



"牢獄" 落合訳

November 25, 2016

まだ手直しするかもしれない訳をいったん纏めてみます。




  この空ひとつ、屋根の彼方
    かくも青く、かくも静かに
  樹ひとつ、屋根の彼方
    葉先を揺らす

  この鐘ひとつ、仰ぐ空に
    ひそやかに尾を引き
  鳥一羽、枝の上に
    悲しみを歌う

  神よ、我が主よ、
    彼処には平明で穏やかな暮らしがあり
  平和のざわめきが
    あの街から聞こえてきます

  なのにお前・・・お前は何をしてる
    絶えぬ涙を流して?
  さあ言え、何をしてるんだ?
    お前の青春はいずこ


Le ciel est, par-dessus le toit,
 Si bleu,si calme!
Un arbre,par-dessus le toit,
 Berce sa palme.

La cloche dans le ciel qu'on voit,
 Doucement tinte.
Un oiseau sur l'arbre qu'on voit
 Chante sa plainte.

Mon Dieu, mon Dieu, la vie est là
  Simple et tranquille.
Cette paisible rumeur-là
  Vient de la ville.

--- Qu'as-tu fait, ô toi que voilà
  Pleurant sans cesse,
Dis, qu'as-tu fait, toi que voilà,
  De ta jeunesse?


3節はお祈りの部分として '神よ' 以降を括弧で括ってたのを外したり、若干語順を変えたりして迷ってるところは沢山ある。


長く頭を抱えたのは '平明で穏やかな' のところです。
'簡素' のほうが五感は良いから迷った。

'Simple et tranquille' には遠い暮らしだったヴェルレーヌの心情が顕著に顕れてるのは、私でもすぐ思いつくくらい有名な "忘れられた小歌曲" の第2に当たる詩・・・

  1節の中にマチルドの囁きと、ランボーへの愛が描写される。
  え〜? ってびっくりな詩ですよね。複雑極まる精神状態。


    ぼくの魂も、ぼくの心も、いまは錯乱して、
    もはや二重にしか物は見えない。

             (井上究一郎様訳)

と惑乱に嘆くのは当然ですよね。女性の妻と男性の愛人を愛すれば、そう落ち着いた心持ちで居られはしないでしょう。


此んな状態と比較して Simple et tranquille な生活を温かく感じたのだとすれば、'簡素' の語から連想させる暮らし振りの平易さよりも、精神的なシンプリシティを強調したいっていう今段階の結論です。

例えば上記Ariettes oubliées 2の3節に見られる '脅えているきみよ、いとしい愛よ' と妻の苦しみを知って苦悩しながらもランボーを愛さずにいられない生活が齎した錯乱状態とは異なる平明さが彼に響いたのではないかと。


*ヴェルレーヌ "牢獄"
*牢獄のポプラ
*窓とお馬鹿さん記
*簡素で静かな
*背信
*牢獄と鐘の音



牢獄と鐘の音

November 22, 2016

しっくりこない。
全く以てしっくりこない。


未だまとまらない "牢獄" を今一度考えてみる。

  *ヴェルレーヌ "牢獄"
  *牢獄のポプラ
  *窓とお馬鹿さん記
  *簡素で静かな
  *背信


  この空ひとつ、屋根の彼方
    かくも青く、かくも静かに
  樹ひとつ、屋根の彼方
    葉先を揺らす

  この鐘ひとつ、仰ぐ空に
    ひそやかに尾を引き
  鳥一羽、枝の上に
    悲しみを歌う

  "神よ、我が神よ、
    彼処の暮らしは飾り気なく穏やかで
  平和なざわめきが
    あの街から聞こえてきます"

  なのにお前・・・お前は何をしてる
    絶えぬ涙を流して何を?
  さあ言え、何をしてるんだ?
    お前の青春は何処へ?


1つずつ問題を潰したい。


今の考えでは前半1,2節には大きな難点はない風に思えるけれど

  この鐘ひとつ、仰ぐ空に
    ひそやかに尾を引き

の部分は少し迷った。

尾を引くって言い方は日本語だと悪い事柄の意味合いが強いかもしれませんね。フランスでは事物の余韻のように事の善し悪しに関わらず使われる。

そう言えばせんにクラブプーランクで、演奏指示としてプーランクが '尾を引く・ひきずる' の楽譜表示を書付けた箇所のおしゃべりをしたナ・・・


中でも当詩のtinteは主に教会の鐘が鳴る場合に使うワードで、鳴り重なるニュアンスが含まれる。

英擬音のding dong (またはding dong dang) にみえるように、鐘が左右に振れる鳴り方あるいは複数の鐘が左右に振れて音が重なる感じだが、

  拙訳で '尾を引く' の文を当てた理由は鐘の音よりも
  むしろ残響のほうを印象づけるためだった。


というのは、


ヴェルレーヌにはおそらく鐘は見えてないと思われたからだ。
小さな空と屋根と、遠くにポプラは見えるが
教会は視界には入っていないように感じられないだろうか?

彼にとってのただ1つの小さな空に鐘の音が響く。
'かくも青い空' に鳴る鐘はどんな風に彼の心を捉えただろう。

暮らしを立てていた場所から隔てられた牢獄へさえも教会の鐘の音が届く時、生の明るさ・美しさ・救い・慈愛・優しさを備えた場所から心に忍び入る鐘の音は、彼に懺悔と改心を促したかもしれない。


doucement tinte をはじめは遠い場所の鐘のかすかな響きと読んだが、鐘の余韻・残響が心の奥底に入り込み、共振して、悔悛の想いに手を伸べる秘そやかな優しい呼び声のように響く心情と考えた。

つまり残響はヴェルレーヌの心の中に響き残る、自己省察を促し助けるものの形であったと拙訳では仮定した。そしてその対象に次節で彼は "神よ" と叫ぶのだ。

**


そうそう "牢獄" の曲は、ロップイヤーうさぎちゃんの微かに暗みのあるフルートの音色で演奏します。



背信

November 18, 2016

フランスアンティークのおメダイをたくさんupしてきて、手持ちは此れで最後カナ。


今日のはリジューの聖テレーズ様。おメダイは大抵ラテン語だけれど、フランスのは裏文字もフランス語が刻まれてるものが多いですね。

**


詩中のMon Dieu をカトリック的な視点で眺めて思うこと。

  *ヴェルレーヌ "牢獄"
  *牢獄のポプラ
  *窓とお馬鹿さん記
  *簡素で静かな

カトリックが威勢を誇る国にあって同性愛のタブーを犯している自覚は、ヴェルレーヌにとって21世紀の私たちが思う以上に大きなものだったでしょう。

道ならぬ恋は世に多く、それぞれに悲しみ苦しみがあるけれど・・・

19世紀フランスという場所で教会が禁じたものを破ることは、世間の目以外の部分でもヴェルレーヌの心理に影響を与えた気がするのです。


ヴェルレーヌが禁固2年となった騒動のお相手であるランボーを見てみます。


堀口大學様が記されたランボー年譜を読むと1866年12歳時点では《病的なほどの信仰心》《'信仰気違い'と学友間にあだ名される》とあります。

彼の母も狂信的なカトリック信者でしたが、その専制的な性質はランボーを後に教会生活から引き離す原因にもなったのでしたね。


フランス文学者の栗津則雄様はご著書で此んな風に纏めてらっしゃる。

《彼女は、ランボーたちが、近所の子供たちと遊ぶことを許さず、一文の小づかいも与えない。学校へは迎えに出、宿題帳を検査し、終日ただひたすら勉学を強いる。

日曜には、シャルルヴィルの市民たちは、ミサに行くランボー一家の奇妙な行列を眼にするのである。"先頭にはふたりの女の子、ヴィタリーとイザベルが手をつないで歩き、二列目にはふたりの男の子、フレデリックとアルチュールがそれぞれ青い綿のこうもりを持って歩きます。しんがりを占めるのは、身体をしゃんとのばし、黒いコサージュをつけ、綿の手袋をはめた母親でした"

この挿話は、母親がおどろくべきエネルギーで息子に課したはげしく乾いた法則を明らかに語っていると言いうるだろう。そしてこの法則こそ、ランボーのなかに無際限な生と自由へのおそろしくなまなましく全体的な渇望を生み出したもっとも本質的な原因にほかならぬ。》


幼いランボーにとって教会の数々の戒めは、母の厳しさと重なるところが皆無だったとは言えない気がするのです。


一方ヴェルレーヌのほうは、背徳をある種エネルギーに変えることができたランボーとは違う性質でした。

  背信の自覚が齎した心情を考えるにつけ
  詩中のMon Dieuが読む人の心に響きます。

過去に背いてしまった神にもう1度手を差し伸べられたいと願う想いは、眼に見える大きな背徳を犯さず従って罪を感取できない者よりも強い誓いをつくり出すこともあるでしょう。

2年の刑期を終えたヴェルレーヌは1875年2月、ランボーを再びカトリックへ導こうとします。自分は神に救われたという思いを強く抱いていたのでしょうね。


後年には再びすさんだ生活に踏入って最後の同性愛対象者と暮らすことになるけれど・・・それでも "牢獄" の作品に見られるこの時の気持ちは真実だったのでしょうね。



簡素で静かな

November 16, 2016

雨上がりのマムが色を深めた朝。
"牢獄" の続きの訳を試みてみる。



  *ヴェルレーヌ "牢獄"
  *牢獄のポプラ
  *窓とお馬鹿さん記


  "神よ、我が神よ、
    彼処の暮らしは飾り気なく穏やかで
  平和なざわめきが
    あの街から聞こえてきます"

  なのにお前・・・お前は何をしてる
    絶えぬ涙を流して何を?
  さあ言え、何をしてるんだ?
    お前の青春は何処へ?

Mon Dieu, mon Dieu, la vie est là
  Simple et tranquille.
Cette paisible rumeur-là
  Vient de la ville.

--- Qu'as-tu fait, o toi que voilà
  Pleurant sans cesse,
Dis, qu'as-tu fait, toi que voilà,
  De ta jeunesse?


改訂の余地あり。


1,2パラグラフは独りきりの内省の時・・・
凋落した我が身に力を落とした嘆息の時間に思われる。

其してどうしようもない絶望感に襲われて
発することができるただ1つの呼びかけがMon Dieuだ。

何の書物で見たのだったかヴェルレーヌの房の写真を目にしたことがある。灰色の (白黒写真だったために灰色の壁と私が思ってるだけかもしれません。) 殺風景な壁にたった1つ十字架にかけられたイエズス様の像が掛かってた。

詩集 "叡智" を記した室内でヴェルレーヌが目にできたのは此の十字架だけだったのねって見入ったと思う。


その房で2度繰り返されるMon Dieu,Mon Dieu,の悲痛な叫びは同じ単語だが、'神よ、我が神よ' と訳した。フォーレのメロディーで2度目のMon Dieuで音高が下がる通り、2度目が一層内省的な胸中に思われた。

同パラグラフは天へ向けた対話としてシンプルな丁寧語が相応しいと思われたが、急に調子が変わる日本語に違和感を感じた。そこで対話文として括弧で括る表記にしてみた。


実際楽曲では音量も和音のボリュームも増す箇所だけれど
訳の言語だけでそれを顕すことができず大変迷っているところです。


街の暮らしを指して、簡素で静かな (今のところ '飾り気なく穏やかで' と試訳している部分) と述べる心情を想い浮かべてみる。

**

男女の色恋はとかく複雑なものだが、19世紀当時の男同士となれば弥が上にも煩雑な事柄が多かったことだろう。その上お相手は多分に奔放なところがあるランボーだ。

縺れた関係だったが、それよりもっと縺れていたのはヴェルレーヌ自身の心境だったかもしれない。


牢獄から街の人たちのシンプルな生を神に語る彼は
しかし倦んだ関係のさなかに必ずしもシンプルな生を求めてはいなかったかもしれない。

  穏やかさ、憩い、寛ぎ。
  虚栄や劣等意識を抱かない関係。
  愛憎とは違うプレーンな愛。

それがどんなに安らいだ気持ちを与えてくれるか、ひょっとしたら彼は房にあってやっと思い出して目を留めたのかもしれない。

混沌とした関係は気分を病ませ、何が愛で何が憎しみかもはやわからなくなってしまっていたかもしれない。愛と執着、愛と痴情は更に当人には種別しづらいものだろう。


  本当に求めていたことに気づかずに過ごした時間、
  あるべき状態に立ち返ることができなくなった惑い、
  惑いを振り切る色事、そして繰り返される諍い、

あらゆる誤りに気がついた果てに口をついたMon Dieuなのだ。
  
続きはまた。


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*訳すということ(12)演奏通訳



窓とお馬鹿さん記

November 09, 2016

最高に可愛いお尻を見せるポテトちゃん。
古い木枠スピーカーをクンクン調べてます。


昨日のように訳詩してみるとき、お利口さん風を繕う癖がある。

  *牢獄のポプラ

本当は詩に興奮して、うっぴゃ〜♪ ってはしゃいでるくせに
何喰わぬ顔を装って、静かめに書いてるフリをする。

オタクが社会生活を送る上で必要な術だ。

長文に走りそうになるのを改め、
テンションが上がってるのを文章上だけは抑え、
お風呂にも持ち込んでは本をぐちゃぐちゃにして
興奮で水面を叩いて撥ねかしてるのを隠す。

今朝はお初に包み隠さずありのままを書いてみる。


訳について。


Le ciel / Un arbre / La cloche / Un oiseau と定冠詞と冠詞が交互になっているのを訳でも表現したかった。しかし日本語の性質上うまくゆかない。

宙を見上げた。
Mac前の壁はクリップつきワイヤーでぶら下がったファゴットリード材メーカーのノランテールのラベルがブラブラしてる。

リード材は葦だが今はポプラだ・・・と思いながら1分ほど空中を凝視してた。

無音だ。
ヴェルレーヌの房も此んな無音だっただろうか。

そうだ。だから詩の後半で街の喧噪が彼の心にクローズアップされてくるのだと考え、其れから
いえいえ今は1行目でしょう、って思い直す。

  空、樹、鐘、鳥はいずれも空(くう)に在る。
  これらが後悔に倦んだ彼に手の届かないものと映るのだ。

  座ったままでは届かないクリップワイヤーに手を伸ばす。
  もはや私の目には赤いラベルが空の青にしか見えてない。
  ヤバイやっちゃ・・・と思い、手を引っ込める。


節の並びは此うだ。

1節 ------ 空 樹
2節 ------ 鐘 鳥

そして冠詞の並びにワードが入れ替わる。

定冠詞 -- 空 鐘
冠詞 ----- 樹 鳥

ああ好き好き・・・


どうしても定冠詞と冠詞の違いを日本語で伝えたいと思い詰める。


  この空ひとつ、屋根の彼方
    かくも青く、かくも静かに

  樹ひとつ、屋根の彼方
    葉先を揺らす

  この鐘ひとつ、仰ぐ空に
    ひそやかに尾を引き

  鳥一羽、枝の上に
    悲しみを歌う


どうだろう? 悪くない気がした。

もしもフォーレが2,4節を1,3節のヴァリアンテ的に作ってくれていれば、これが上手く嵌るんだワ! ってピアノ室へ駆け下りる。

楽譜を開いて読みながら階段を上がった。最上段で踏み外して怖い思いをした。自分の家の階段数って身体で憶えてるものでしょうに譜面の中の拍子感で上がると度々こうなる。

しかし出た声は、"やった! やった! むふふ〜" だった。

予測通りの作曲に階段のプチ事故は蟻の脳みそで瞬時に忘れて、1,3節に連動した2,4節になってる楽譜に狂喜した。


'この空' って顕し方はありだワって思った。
彼は広くどこまでも続く空を見上げているのじゃあないからだ。


狭い房に空いたただ一つの窓。その窓は多くの刑務所と同じできっと高めの位置にある。従って視界は狭い。彼は頑強な格子越しに、小さく切取られた空を見てる。

彼の視界に入るのは空の一部だ。小さな小さな一部だ。
空は広いものと万人が思っている。
刑務所に入る前のヴェルレーヌも然うだっただろう。
しかし今彼が目にできる空はとても小さい。
なけなしの空だ。

それを差して 'この空' と・・・つまり彼の房にだけある彼の空を 'この空' と示している感じは悪くない気がした。


次は '彼方' だ。


直訳すれば '屋根の上' であるが、'上' と日本語に置き替えた際ピンとこなかった。屋根と空の位置関係が判りづらくなってしまうからだ。

屋根は同建築物の中に連なる屋根か。L字またはコの字型の建造物なら別棟の屋根が見えるだろう。はたまた彼の窓にかかる廂の上に洋瓦が乗る張り出しを屋根と呼んだのだろうか?

ネットでベルギーの古い刑務所を調べた。
キャ〜出た出た♪ 喜んでページへ飛んだ。

これこれ。ヴェルレーヌが入ったブリュッセルのプティ・カルム刑務所よ。

出てきたのは嬉しいけれどこのページじゃ敷地と構造の関係は判からず、廂は張り出してない。
すると別の建物の屋根のことだろうか。


屋根が彼の窓近くとも、遠い屋根であろうとも、いずれも屋根と空は遠くある。そして空の遠さは、獄中にある彼が手に入れることができない浮き世の遠さでもある。


しかし樹はどうだろう。


空を屋根の彼方と置いた場合、同じワードが使われてる樹も屋根の彼方で良いだろうか?

どちらにも使われている par-dessus le toit を同ワードで訳さなければならないために位置関係が知りたいのだ。

そこで昨日引用した河上徹太郎様が訳されたヴェルレーヌの獄中記を出してきた。

《中庭の中で、豊かにそよぐ葉の茂みの頂きが揺れているのが見えた。》
《その樹は近所の街角か散歩町にある高いポプラか何かであった。》


窓近くにそよぐポプラの葉じゃあないことが確かとなる。
彼が踏み入ることができない場所の遠いポプラだ。

よし '彼方' で行こう。
ヴェルレーヌにとって遠い世界となった空と街の樹だ。

妄想は進む。ヴェルレーヌが視たものが水彩画となって目の前にある気になる。

**


昨日の訳のたった1行に此んな調子だった。
そのままを書くと退かれちゃうから静かな人を装う必要がある。

トーン低めのグリーンの写真を取り入れて、さらっと抑揚なく書きたがるのは此うした理由です。



牢獄のポプラ

November 08, 2016

フォーレ "牢獄" の楽曲訳を試みる。


  *ヴェルレーヌ "牢獄"


  空ひとつ、屋根の彼方
    かくも青く、かくも静かに

  樹ひとつ、屋根の彼方
    葉先を揺らす

  鐘ひとつ、仰ぐ空に
    ひそやかに尾を引き

  鳥一羽、枝の上に
    悲しみを歌う

Le ciel est, par-dessus le toit,
 Si bleu,si calme!
Un arbre,par-dessus le toit,
 Berce sa palme.

La cloche dans le ciel qu'on voit,
 Doucement tinte.
Un oiseau sur l'arbre qu'on voit
 Chante sa plainte.


詩中の樹は棕櫚って訳されている場合がある。


une palme には大きく2つの意味があり、1つは確かに棕櫚または古語で椰子科の樹木ですね。
しかしもう1つの意味として掌状の物・掌状の植物・鳥類の水掻きを示します。

'樹の指先' と訳されてる場合は後者を採用した形となり、私個人は此れに大きく賛同しています。


  何故ってヴェルレーヌの獄中から見えたのは
  棕櫚ではなくてポプラだったから。

同じように Berce sa palme を'その指先を揺らす' と訳された井上究一郎様も

《この詩の実景は詩人の "私の獄中記" (1893年) で語られている。
'樹が一本' の樹はポプラであった。》

と記されてる。


残念ながら私は獄中記の原書を持ち合わせていないけれど河上徹太郎様の訳文は手元にありましたよ。


こんな景色です。

《前の壁の窓の向こうに、
(私は本当に、長く密な格子で固めた窓を持っていた。)
敢ていえば私の生の倦怠が襲って来る悲しい中庭の中で、豊かにそよぐ葉の茂みの頂きが揺れているのが見えた。
それは八月のことで、その樹は近所の街角か散歩町にある高いポプラか何かであった。》


拙訳では 'ポプラの指先' はシンプルに '葉先' とし
互生するグリーンを表わしましたが
詩中に '葉' のワード自体はありません。

訳詳細についてはまた今度に。


■パリの風 第21回プログラム

     《第1部》

[愛と死]グラナドス
  *眠る物たち
  *愛と死

[アデュー] メンデルスゾーンOp.85-No.2
  *寝具
  *アデュー

[失われた幻影]メンデルスゾーンOp.67-No.2
  *失われた幻影

[葬送行進曲]メンデルスゾーンOp.62-No.3
  *葬送行進曲

[月の光]ドビュッシー
  *レッスン記録:月の光
  *慈しみの月光
  *レトロなワンピース
    *断捨離中です
    *断捨離後の収納
  *物とお別れ
    *赤い辞書
  *アーチの影
  *ムービーの事故

[西風が見たもの]ドビュッシー
  *古いノート
  *西風の2度
  *西風が見たもの
  *行き止まり

[スケッチ帳より]ドビュッシー
  *手紙
  *くたっとした布たち
  *あの時
  *スカートのレース
  *スケッチ帳の大過去
  *スケッチ帳

[火祭りの踊り]ファリャ
  *火祭り

     《第2部》

[旅への誘い]デュパルク
  *旅への誘い
  *早い朝の呟き

[波と鐘]デュパルク
  *未解決

[ラシーヌによる雅歌]フォーレ
  *フォーレとナポレオン3とラシーヌ
  *"ラシーヌによる雅歌" 落合訳
    ?僕が見た餃子屋さん

[牢獄]フォーレOp.83-1
  *ヴェルレーヌ "牢獄"

[古寂びた修道院にて]フォーレ
  *僧院の廃墟にて
  *
  *2016年8月のおうち避暑
  *今日会えること
  *"古寂びた修道院にて" 落合訳
    *ユゴーxフォーレ
    *フォーレの改訂や単語など
    *フォーレと翼廊
    *回廊
    *軽やかさ
    *訳のやり直し



"ラシーヌによる雅歌" 落合訳

October 26, 2016

フランスの古いおメダイです。


裏面はREGISとしか刻まれていないから自信はないけれど16世紀末フランスにお生まれのジャン・フランソワ・レジ司祭様だと思います。聖ヨハネ・フランシスコ・レジスって呼び方が一般的ですね。


今朝は "ラシーヌによる雅歌" を訳してみますね。



《ラシーヌによる雅歌》

          J.B.ラシーヌ詩
          落合訳

いと高きところの御(み)ことば、我らの唯一の望み。
天と地の永遠の光なる。
穏やかなる夜(よ)に 我ら静寂を破らん
主(しゅ)なる救い主 あなたの眼差しを我らに投げかけ給え

あなたの聖寵の力強き焔を我らの上にそそぎ給え
あなたの御声によりて悪を去らせ給え
あなたの掟を忘れさせんとする憂う魂の眠りを覚まし給え

おおキリストよ! あなたを言祝ぎ集う
忠実な民に御(み)恵みを与え給え。
あなたの恩寵により充ち満てる
世々に至る栄光の賛歌を聞き入れ給え



Verbe égal au Très-Haut,notre unique espérance,
Jour éternel de la terre et des cieux,
De la paisible nuit nous rompons le silence:
Divin sauveur,jette sur nous les yeux.

Répands sur nous le feu de ta grâce puissante;
Que tout l'enfer fuie au son de ta voix;
Dissipe ce sommeil d'une âme languissante
Qui la conduit à l'oubli de tes lois!

Ô Christ ! sois favorable à ce peuple fidèle,
Pour te bénir maintenant assemblé;
Reçois les chants qu'il offre à ta gloire immortelle,
Et de tes dons qu'il retourne comblé.


今日は最終行1点だけの訳註を。


tes dons qu'il retourneの文を、与えられたもののお返しの風に扱う向きもあるかもしれません。此の合唱曲を聞いたときプログラムには其のような訳が刷られていました。

フランス語訳として何ら問題なく正しいですが、拙訳はカトリック的な観点から 'お返し' または '返歌' の表現を用いていません。

神が与えたもうた御寵みが私たちの内に満ちることを文中のretourneとし、グロリア・パトリの扱いで永遠の聖寵を讃える形としました。返す脈略ではなく、返し切れない恵みを与えられたという気づきから始まるアレルヤ(アレル=褒めたたえよ/ヤハ=神)という理解から此うした訳し方をしてみました。

報いる存在には遠い人間ながらも主を讃える(ベネディクトゥス・ドミヌス・デウス)カンティクムの聖務日課のスタイルと考えて、栄唱やマニフィカトの言い回しを含めた訳になりました。

**


今日はこの詩と関係ない11月用のリハーサル。
リハーサル休憩用のお菓子を焼いた朝デス。

訳よりも、甘みが足りなかったお菓子にメイプルシロップをかけようかどうしようかが今この瞬間の最大の悩み。


*フォーレとナポレオン3とラシーヌ



"古寂びた修道院にて" 落合訳

October 21, 2016

可愛い小鳥クリップを
シーリングフックに掛けたシュガーバインに留めつけてみた。


後ろはフランスアンティークのティッキング。
渋い色合いのところにチョンと可愛いモノをプラスです。

"古寂びた修道院にて" の小鳥はどんな姿だったのでしょうね。
新たな訳を纏めておきます。


フォーレによって順序替え・削除された箇所があるため
元のユゴー詩の節番号を振りました。
単語はフォーレが改訂したほうを用いています。


    《古寂びた修道院にて》

                 ヴィクトル・ユゴー詩
                 落合訳

1)
  ふたりきりで、歓喜溢れ、歌ってる!
  愛し合って
  神が蒔かれた 春の季節
  摘んでる!

2)
  笑い顔が きらめく
  暗い影の 中にも
  昔ここは 蒼い顔と
  憂う想い 満ちてた

3)
  結ばれた ばかりの
  ふたり愉悦に ひたって
  愛らしく 互いに
  ささめき声 交わして

4)
  そよそよと そよぐ風に
  清しい木霊 溶けてく。
  修道院の 暗みに
  喜びは 高まる

1)
  ふたりきりで、歓喜溢れ、歌ってる!
  愛し合って
  神が蒔かれた 春の季節
  摘んでる!

2)
  笑い顔が きらめく
  暗い影の 中にも
  昔ここは 蒼い顔と
  憂う想い 満ちてた

5)
  シスター達の マザー様が
  手を合わせて 祈った
  石の上で ふたりは
  ジャスミンの 花摘む

7)
  求め合って 追いかけ合って
  愛よ、あなたの暁が
  夜の古い 回廊に 
  広がるのを 感じて

8)
  くちづけし合って 
  愛し合って 
  幾度でも 繰り返し
  絶え間なく 抱き合って

9)
  柱の下で、アーチの下で、
  大理石の 像の下で。
  でもこれは 木々の中の
  小鳥たちの おはなし


1)
Seuls,tous deux,ravis,chantants!
Comme on s'aime!
Comme on cueille le printemps
Que Dieu sème!

2)
Quels rires étincelants
Dans ces ombres,
Jadis pleines de fronts blancs,
De coeurs sombres.

3)
On est tout frais mariés,
On s'envoie
Les charmants cris variés
De la joie.

4)
Frais échos mêlés
Au vent qui frissonne.
Gaîté que le noir couvent
Assaisonne.

1)
Seuls,tous deux,ravis,chantants!
Comme on s'aime!
Comme on cueille le printemps
Que Dieu sème!

2)
Quels rires étincelants
Dans ces ombres,
Jadis pleines de fronts blancs,
De coeurs sombres.

5)
On effeuille des jasmins
Sur la pierre.
Où l'abbesse joint les mains,
En prière.

7)
On se cherche,on se poursuit,
On sent croître
Ton aube,Amour,dans la nuit
Du vieux cloître.

8)
On s'en va se becquetant,
On s'adore,
On s'embrasse à chaque instant,
Puis encore,

9)
Sous les piliers,les arceaux,
Et les marbres,
C'est l'histoire des oiseaux
Dans les arbres.


やっと次の曲のお話へ進める〜。


駄目訳の旧いほうも貼っておきますね。
曲のニュアンスが出せてない分、ワードには此方が忠実です。


旧1)
  2人きりで、嬉々として、歌ってる!
  なんて愛し合ってるんだろう!
  神がお蒔きになられた春を
  摘んでるんだね!

旧2)
  かつては
  蒼白い顔をした
  暗い心に満ちていた此の影に
  笑顔がなんて煌めいてるんだ!

旧3)
  たった今結婚したばかりの
  2人は悦びで
  愛くるしい多彩な叫びを
  交わしあう。

旧4)
  そよそよそよぐ風の中へ
  すがすがしい木霊も溶けていく。
  暗い修道院の中だから
  際立つ陽気さも増していく。

旧1)
  2人きりで、嬉々として、歌ってる!
  なんて愛し合ってるんだろう!
  神がお蒔きになられた春を
  摘んでるんだね!

旧2)
  かつては
  蒼白い顔をした
  暗い心に満ちていた此の影に
  笑顔がなんて煌めいてるんだ!

旧5)
  修道女たちのマザーが
  手を組み合わせて祈る、
  石の上で
  ふたりはジャスミンの花を摘む

旧7)
  お互いを求め合って、追いかけ合って、
  愛よ、あなたの暁が
  夜の古びた回廊のなかにも
  広がってゆくのを感じるでしょう?

旧8)
  くちづけし合って
  愛し合って
  幾度も幾度も絶え間なく
  抱き合って

旧9)
  柱の下で、アーチの下で、
  大理石の彫像の下で。
  でもこれは木々の中の
  小鳥たちのお話


*僧院の廃墟にて
*ユゴーxフォーレ
*フォーレの改訂や単語など
*フォーレと翼廊
*回廊
*軽やかさ
*訳のやり直し



訳のやり直し

October 19, 2016

あらら、毎日咲き殻を取り去ってるつもりなのに写真に写してみると残ってました。駄目ですね〜


"古寂びた修道院にて" の訳が咲き殻以上のゴミで・・・

ユゴーとフォーレに挟まれて、詩訳にも楽曲訳にもならないまま
ザッと書付けていったものが本当に良くないナ。

スタイルというものが皆無で見苦しい上に曲の完成形だけは頭を過って、動けなくなっちゃってる感満載でした。


  *僧院の廃墟にて
  *ユゴーxフォーレ
  *フォーレの改訂や単語など
  *フォーレと翼廊
  *回廊
  *軽やかさ


どう改善できるでしょう・・・? って頭を捻って
6/8系を出してみることにしました。


歌詞じゃあないから音とワードは嵌めないけれど、6/8の2拍子を表わしたらどうかなって。少しはアレグレットの雰囲気が出たでしょうか・・・

1)
  ふたりきりで、歓び溢れ、歌ってる!
  愛し合って
  神が蒔かれた 春の季節
  摘んでる!

2)
  笑い顔が きらめく
  暗い影の 中にも
  昔ここは 蒼い顔と
  憂う想い 満ちてた

3)
  結ばれた ばかりの
  ふたり愉悦に ひたって
  愛らしく 互いに
  ささめき声 交わして


1)
Seuls,tous deux,ravis,chantants!
Comme on s'aime!
Comme on cueille le printemps
Que Dieu sème!

2)
Quels rires étincelants
Dans ces ombres,
Jadis pleines de fronts blancs,
De coeurs sombres.

3)
On est tout frais mariés,
On s'envoie
Les charmants cris variés
De la joie.


迷うところですが多分此方がベターなのでしょう。


詩の調子と曲の調子・詩の意味と曲の意味がある面で相反するところがあるために、訳にどちらのトーンを取り入れるか全然定まらなくて悩みました。

今朝段階の結論は、訳には楽曲の意味を反映させるよりメロディーとリズムに則った様態で作ってみようというところ。

失敗した旧い訳のほうも貼っておきます。
続きはまた。

旧1)
  2人きりで、嬉々として、歌ってる!
  なんて愛し合ってるんだろう!
  神がお蒔きになられた春を
  摘んでるんだね!

旧2)
  かつては
  蒼白い顔をした
  暗い心に満ちていた此の影に
  笑顔がなんて煌めいてるんだ!

旧3)
  たった今結婚したばかりの
  2人は悦びで
  愛くるしい多彩な叫びを
  交わしあう。



軽やかさ

October 17, 2016

前半がうまくいってないユゴー詩の楽曲訳を取りあえず最後まで・・・


  くちづけし合って
  愛し合って
  幾度も幾度も絶え間なく
  抱き合って

On s'en va se becquetant,
On s'adore,
On s'embrasse à chaque instant,
Puis encore,

  柱の下で、アーチの下で、
  大理石の彫像の下で。
  でもこれは木々の中の
  小鳥たちのお話

Sous les piliers,les arceaux,
Et les marbres,
C'est l'histoire des oiseaux
Dans les arbres.


うまくいってないのは私の中で楽曲の語り口が定まってないからだと思う。


軽いアレグレット。1小節が同ハーモニーになるパターンが多い6/8拍子。安寧な雰囲気のADur。

しかし当曲の明度を、どこまで軽やかさに繋げるか迷ってる。

手元にある文献に数行書かれているこの詩の註釈には、
なあんだ鳥のお話だったのかと最後に判りウイットに富んでいる、って意味の事が書かれていました。

ユゴー詩の上では其うかもしれない。
でも私は、間違ってるかもしれないけれど透明感溢れるフォーレ楽曲としての此の詩が機智に富んだ陽気で軽妙なものと捉えていないのです。


主人公が鳥だったことは人の世と人間の生の儚さのように思えて


楽曲アプローチは朗らかさより何か乾いた明るさを秘めた作品に描きたくなる。

明度は高く、しかしこの曲の軽やかさは陽気さに向くのじゃなくて静けさに繋がるものでありたい気がする。


最終の2パラグラフに若干の訳註を。


詩中の単語に忠実であれば小鳥ではなく鳥。
しかし肉感的な躯体の可能性もある鳥の単語にするよりも、哺乳類の気配と完全に非なる表徴に限定される小鳥のほうをあえて選びました。


また原詩には大理石のあとに彫像の単語は入っていません。
この場面で大理石で造られてるのは主に聖人の彫像と想定して
情景がわかり易いよう加えています。


  *僧院の廃墟にて
  *ユゴーxフォーレ
  *フォーレの改訂や単語など
  *フォーレと翼廊
  *回廊



回廊

October 11, 2016

ちょっと前のブログを見てみると、平熱に下がったって書いてるのは9月28日みたい・・・


楽な状態は1週間ばかり続いて、また毎日発熱するようになってる。

どうなってるのかなあ。あまり動かないようにして訳の続きでもしましょうか。

  *僧院の廃墟にて
  *ユゴーxフォーレ
  *フォーレの改訂や単語など
  *フォーレと翼廊


1,2,3,4,1,2,5と進んだ後フォーレは第6パラグラフを削除しています。


5に続く7は少し迷うところでした。

  お互いを求め合って、追いかけ合って、
  愛よ、あなたの暁が
  夜の古びた回廊のなかにも
  広がってゆくのを感じるでしょう?

On se cherche,on se poursuit,
On sent croître
Ton aube,Amour,dans la nuit
Du vieux cloître.

1パラグラフを8小節に当てる組み立ての楽曲で、8小節ずつの2組(16小節)を1フレームとして作られています。

後半の8小節がよりメロディアスになるため、前半8小節の情景描写に対して後半では精神的な雰囲気にスポットを当てるのが楽曲構造に忠実な形じゃあないかって感じたのでした。


Le cloîtreは修道院内の内庭を巡る回廊でいわゆる禁域です。


夜の暗い回廊にあけぼのが広がる・・・それは禁域であったところが夜明けの微かな光によって、展けた場所と繋がりをもつイメージでもあるかもしれません。

cloîtreと韻を踏んだcroîtreが、愛の広がりとも感じさせる形にしてみました。


■訳詩リンク
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    *フォーレOp.61-5 許して下さい
    *フォーレOp.61-5 愛しき者
    *リディアとマリアンヌ
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    *"本当は、怖いくらいに" タイトル他
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    *フォーレOp.61-5 愛しき者
    *リディアとマリアンヌ


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*"祈り" 落合訳


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*"月の光" 落合訳
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     *月の光のメヌエット
     *月の光と諦念
     *月の光に溶けて消える
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     *フォーレ "月の光"


*象徴(6) "蝶と花" 落合訳


*"水に浮かぶ花" 落合訳
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*"ゆりかご" 落合訳
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*フォーレ "五月" 落合訳
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    *フォーレ "五月" を振り返る

*"秘密" 落合訳
*"棄てられた花" 落合訳
*"秋" 落合訳
*"贈り物" 落合訳


*"森の鳩" 落合訳
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■訳すということ関連リンク
*訳すということ(1)野鳩
*訳すということ(2)椿姫の白
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*訳すということ(4)カフェオレのボウル
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*訳すということ(6)マリア様のお顔
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*訳すということ(12)演奏通訳



フォーレと翼廊

October 09, 2016

フォーレ "古寂びた修道院にて" より。
マザーが祈る場所の光景を思い浮かべてみました。


タイトルに大修道院とあることから、両側に側廊を設けた大きな建築を想像します。この中のどんな場所を詩は描いてるんでしょうね。

私の狭い体験からの連想に過ぎないけれど、知る限りフランスのシスターやマザーたちが個人的にお祈りされてる際はアプスのほうでお見かけすることが少ない感じがしています。

翼廊で跪かれてたり、側廊へ逸れられて小さなスペースの小祭壇前で穏やかな祈りの時間を過ごしてらっしゃる修道女様が多く記憶に残ってる。

何となく・・・ほんとうに何となくだけれど
詩が描いてる場所は内陣 (教会の中心になるエリア) の中央大祭壇の聖域前部じゃあない気がするのです。


教会内のお祈りの場所はそれぞれお気に入りがあって


守護聖人ゆかりの祭壇だったり心打たれる彫像や絵画がある所のニッチ祭壇だったり、各々が一番心静かに祈れる場所を密かにもっていたりもしますね。

詩のマザーについて今以上の描写は出てこないけれど
個人的に私は内陣ではない小祭壇を連想しています。

**


前記事に書きましたユゴーの 'Sous la pierre (石のもと)' をフォーレが 'Sur la pierre (石の上)' に書き換えている事について・・・

つるりとした小振りの、恐らくは低い四角い形の石の下に居ると顕した原詩では、小さな生き物=小鳥の想定が既に表現されているのでしょうか。

もし其れであればフォーレが改訂した文では、まだ此処に居るのがふたりの人間のようにも感じさせますね。


同パラグラフ joint ses mains を les mains に変更したのもフォーレの筆によるものですが、


此れに関しては意味如何ではなくってメロディーをよりレガートに近づけるためと研究されています。


  *ユゴーxフォーレ
  *フォーレの改訂や単語など



フォーレの改訂や単語など

October 06, 2016

フランスフランスって言ってるくせに何故かベルギーものが集まってるアッパーシェルフ。


古い家の中でもっと古い時代の音楽のための訳詩を試みる時間は好きです。

"古寂びた修道院にて" の続き、第4パラグラフからでしたね。

  *ユゴーxフォーレ


  そよそよそよぐ風の中へ
  すがすがしい木霊も溶けていく。
  暗い修道院の中だから
  際立つ陽気さも増していく。

Frais échos mêlés
Au vent qui frissonne.
Gaîté que le noir couvent
Assaisonne.

Frais échos はフォーレの改訂でユゴー原詩は Purs ébats となっています。


3行目は2通りの訳し方が可能ですよね。暗い所でさえも段々に喜びが高まるって形と、暗い所が喜びを際立たせるって風に assaisonner (〜を添える・加味する) の直訳に忠実な形と。


前者の楽曲上の(詩の上ではそうとは限らないかもしれない)難点は '暗い' 場所であることが否定的なニュアンスを帯びること。古い修道院は得てして物理的に暗いですから、気持ちが塞いだ暗さに直接結びつくわけではないですね。
対して後者の難点は説明的な訳になって詩的じゃあないこと。

そこで試しに前後者2つを併せた訳し方にしてみました。'暗い修道院の中だから' という風に、暗さを雰囲気ではなく物理的事実として扱い、次行に 'だから' に続く意味で '際立つ' をもってきて次ワードと繋げてみました。


楽譜を追ってたら一瞬混乱・・・。


フォーレはこの後第5パラグラフへ進まずに、冒頭メロディーが還ってくるところに再度1,2パラグラフを挿入しています。

1,2,3,4,1,2 と進み、続く第5パラグラフ。

  修道女たちのマザーが
  手を組み合わせて祈る、
  石の上で
  ふたりはジャスミンの花を摘む

On effeuille des jasmins
Sur la pierre.
Où l'abbesse joint les mains,
En prière.

2行目 Sur la pierre もフォーレの改訂で原詩は Sous la pierre になってます。

修道女って訳されてるのも目にすることがある l'abbesse ですが、シスターという言い方のsoeur、または修道女様の une monial や Une religieuse じゃあなくて une abbesse は正確には修道院長様ですね。(この単語も前時代の日本の訳では尼僧院長とされるようです)

女性の修道院長をシスターたちの指導者としてマザーと呼びますから、拙訳ではこれを当てました。マザー・テレサなども此の立場からの呼称ですね。


この面白くない記事の続きはまた。


■訳詩リンク
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    *想いが香る
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    *結い髪


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       ?僕が聞いた後悔とフォーレ
    *フォーレのオアシス


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    *フォーレOp.61-5 第2パラグラフ
       ?僕がイヤんなるコト
    *フォーレOp.61-5 許して下さい
    *フォーレOp.61-5 愛しき者
    *リディアとマリアンヌ
    *フォーレOp.61-5 希望
    *"本当は、怖いくらいに" タイトル他
    *"本当は、怖いくらいに" 挿入箇所


*"リディア" 落合訳
関連記事*"リディア" 再考
    *リディアという女性
    *バロックとgalantuelles
    *フォーレOp.61-5 愛しき者
    *リディアとマリアンヌ


*"眩耀の夏のひとひ" 落合訳
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*"黎明燃え広がりて" 落合訳
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*僧院の廃墟にて


*"イスパーンの薔薇" 落合訳

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      *トスカーナの気配
      *フォーレ "トスカーナのセレナード"
      *トスカーナに憑かれて
      *フランス気質と音さがし
      *19世紀の恋情
      *トスカーナのおしゃべり


*"この世にて" 落合訳


*"漁夫の悲歌" 落合訳


*"罪の償い" 落合訳
関連記事*身代金
    *罪と長調


*"墓地にて" 落合訳
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*"祈り" 落合訳


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    *フォーレ "クリメーヌに"


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     *フォーレ "月の光"


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*"水に浮かぶ花" 落合訳
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*"秘密" 落合訳
*"棄てられた花" 落合訳
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*"贈り物" 落合訳


*"森の鳩" 落合訳
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ユゴーxフォーレ

October 03, 2016

ゆらゆら揺れるハンギングポールのバスケットで
終わりかけの夏のお花が夢見るような表情をしてる。


花開く季節の始まりは希望を纏い、終わりの季節に憂うのは人だけかもしれない。お花たちは終わることをこんなにも安らいだ表情で受け入れる。

シュガーバインは空中にも細く初々しい根を伸ばした。宙を掻いて住処を探す様子が健気で、根取りをしてあげたくなった。


次回パリの風のラストに選んだ1曲にも、生命の営みを包みこむ眼差しを感じます。


  *僧院の廃墟にて

また少しずつ訳してゆこうかな。

タイトルは今のところ "古寂びた修道院にて" としました。古い時代に邦訳された楽曲タイトルは僧院となっている。カトリック系用語訳の問題も垣間見えるところだと思う。

日本にカトリックが渡来した頃、オリジナルの日本訳語は作られないままに既に根付いていた仏教用語に照らし、其れに近い意味をもつものを対訳として嵌めた単語が随分たくさんあるようですね。

僧院ももしかしたらその1つかもしれないって個人的には推察するけれど、どんな経緯なのでしょうね。


今はただ単純にカトリックの背景の詩をカトリック教徒の自分が訳そうと思う際、ごく自然に修道会が使うune abbaye(大修道院)を当てたくなったので上のタイトルとしてみた。


またles ruines(廃墟)を '古寂びた' とすることも迷いましたが、訳詩じゃあない楽曲訳として透明感あるDurの楽曲の最後まで其処がもはや誰も居ない場所だと示さないほうを選びました。


手始めに短い3パラグラフだけ。


響き豊かなADurにアレグレットの軽い6/8拍子が感じられる訳の運びにしたいけれど、できるかなあ・・・


  2人きりで、嬉々として、歌ってる!
  なんて愛し合ってるんだろう!
  神がお蒔きになられた春を
  摘んでるんだね!

  かつては
  蒼白い顔をした
  暗い心に満ちていた此の影に
  笑顔がなんて煌めいてるんだ!

  たった今結婚したばかりの
  2人は悦びで
  愛くるしい多彩な叫びを
  交わしあう。


Seuls,tous deux,ravis,chantants!
Comme on s'aime!
Comme on cueille le printemps
Que Dieu sème!

Quels rires étincelants
Dans ces ombres,
Jadis pleines de fronts blancs,
De coeurs sombres.

On est tout frais mariés,
On s'envoie
Les charmants cris variés
De la joie.


第2パラグラフはユゴー原詩ではPleines jadis de fronts blancsですがフォーレによって変更された形で記載しますね。


■パリの風 第21回プログラム

     《第1部》

[愛と死]グラナドス
  *眠る物たち
  *愛と死

[アデュー] メンデルスゾーンOp.85-No.2
  *寝具
  *アデュー

[失われた幻影]メンデルスゾーンOp.67-No.2
  *失われた幻影

[葬送行進曲]メンデルスゾーンOp.62-No.3
  *葬送行進曲

[月の光]ドビュッシー
  *レッスン記録:月の光
  *慈しみの月光
  *レトロなワンピース
    *断捨離中です
    *断捨離後の収納
  *物とお別れ
    *赤い辞書
  *アーチの影

[西風が見たもの]ドビュッシー
  *古いノート
  *西風の2度
  *西風が見たもの
  *行き止まり

[スケッチ帳より]ドビュッシー
  *手紙
  *くたっとした布たち
  *あの時
  *スカートのレース
  *スケッチ帳の大過去

[火祭りの踊り]ファリャ
  *火祭り

     《第2部》

[古寂びた修道院にて]
  *僧院の廃墟にて
  *
  *2016年8月のおうち避暑
  *今日会えること



パリとアズナヴール

June 15, 2016

淀屋橋駅を降りてフェスティバルホールへ行く道々、異様な高揚の原因を考えてた。


シャンソンの生きる伝説、シャルル・アズナヴールの日本ラスト公演を前に

  *最後の来日コンサートへ

長年の大フアンにとって当然の興奮とは別に、哀惜の情を感じてた。痛いような昂りだった。

アズナヴールを通して見られるパリへのノスタルジーだった。


神戸の生活に溶け込んで幾年も経ったけれど、心の奥底ではパリの風景の中に生きる時間を多くもって暮らしてきたと思う。


それはまるで金婚式を迎えてさえ、他の人との初恋の思い出が忘れられない者のようだ。

メランコリックな心情をたまに私が外に向けて散開できるのは、日々触れるフランス音楽に乗せてであり、フランス文学フランス哲学を通してであり、其してひときわ多くフランスという国を頒つカトリックに寄ってだ。

私は其れらに頼り切ってる。


フォーレやプーランクに、フランス18,19世紀の思想家の弁に、神父様の語りに埋没しながらやっと気持ちを守られて暮らしてる。

  とは言え学術や信仰だけじゃない。
  パリの生活の匂いも愛慕の大きな対象だ。


街の片隅の汚れた小さなバーの、エミール・ゾラの小説を彷彿させる粗暴な温かさを抱きしめ、

古びたカフェカウンターの床に散らばる吸い殻の、指を火傷をしそうなくらい根元まで吸われた短さに彼らの生活を見て、

エクトール・ギマールの風情あるメトロデザインの前に佇む、パリジャンと移民と旧統治国出身者にそれぞれの人生を感じ・・・

  パリがパリである所以のひとつは
  プロレタリアートへの懐の深さだ。

アズナヴールの歌を渇仰するのは


彼が歌うパリを信奉するからだ。

  続きはまた明日に・・・



フォーレIl m'est cher タイトル訳

January 27, 2016

コンポティエに天然石を盛って、頂いたばかりの小さいパルファンボトルをちょんと散らした。


フォーレ作曲 "アムール、私には愛しいのです" タイトル訳についてのおしゃべりです。

  *結い髪

旧約聖書 '私を花で支え給え' の雅歌によるエピグラフ (ヘブル原典とアラム語の影響など複雑なメギロースで、訳改訂が重ねられた近年の版は花に替えて葡萄菓子が用いられること多数) が添えられた詩で、本文1行目がそのままタイトルになっています。

もし1行の括りに忠実であろうとしたら "アムール、私には大切なのです。目隠しが" となりますが・・・


目隠しの単語には2行目の関係代名詞以降が掛かって、3行目でその理由が歌われます。

となれば説明のされない '目隠し' がタイトルに登場するのは日本文にとっていささか唐突に感じられるため、拙訳では目隠しの語と其れに掛かる定冠詞をタイトルには含めませんでした。


この辺りの匙加減は訳者様によって様々でしょう。私観ですが楽曲訳の立場では、フォーレ歌曲の、それもSuite形式の歌曲タイトルにはなるべく楽曲と齟齬がないワード割をしたいかなって、今のところは考えています。


■パリの風 第20回リンク

*見る音楽
*パリの風の歩み
*パリの風の形態


*憧れの窓
*ボルドゥーとゴイェスカス
*グラナドス "窓辺の語らい" +Faure

  *"クリメーヌに" 落合訳
  *アヴェ・マリス・ステラ
  *フォーレ "クリメーヌに"


*マクダウェル "タランテラ風に"
*マクダウェル "タランテラ風に" +Faure

  *フォーレ "タランテラ" 背景
  *フォーレ "タランテラ" 楽曲


*マクダウェル "牧歌" +Dukas


*マクダウェル "ブルレスク"

  *雅歌メモ
  *歯医者さんでフォーレ
  *フォーレ "アムール、私には愛しいのです" 落合訳
  *どなたが此の長い髪を?
  *結い髪


*マクダウェル "ピューリタンの時代から" +Faure

  *フォーレ "聴きいれ" 落合訳
  *閉ざされた庭
  *聴きいれ
  *貴女の祈り


*マクダウェル "ミッドサマー" +Faure

  *フォーレ "九月の森の中で" 落合訳
  *人生の秋
  *乾きと樅
  *森の安堵
  *深い森の中
  *失望の葉のひとひら


*ドビュッシー "仮面"

  *カディスの娘とパリの娘


*ドビュッシー "マズルカ"


*ドビュッシー "喜びの島" 再
*ドビュッシー「喜びの島」(1)シテール
*ドビュッシー「喜びの島」(2)ホールケーキ
*ドビュッシー"喜びの島" +Faure

  *フォーレ "目覚めているか、太陽の如き私の香よ" 落合訳
  *創世記とフォーレ
  *果実
  *髪をほどく女
  *想いが香る
  *肌の匂い



結い髪

January 22, 2016

クチュリエにお掃除機をかけがてら写真をパチリ。


今朝は髪に関する2つ目のワードの拙い一考を。

  *どなたが此の長い髪を?

上記事と同じ行、10行目Le faix d'or de mes longs cheveux? のLe faix は主に文語で使われるワードで重荷・積荷の意ですね。

対単語で正しく訳すなら日本語にも重さを指す表現を加えることが望ましいかもしれない。しかし形容詞の扱いで '重く長い金色の髪' にするとニュアンスが違うと考えたのだ。

彼女の髪質が重たいのでも、長い分の重量を示すのでもないと思えるからだ。(また始まった、オタクっぽい… )


結い上げた形状または結んだ状態をおろし髪に対して積み荷と表し、それは一定重量よりも寧ろ形姿を示すものに思われた。


寄って荷の名詞が形容するのは結い髪の粧いではないだろうか。
語としては '髪の束' も可能かもしれない。しかしである。

'どなたが此の長い金色の髪をほどいたのでしょう? ' と述べる是時、結い上げた髪束はもう存在しない。解かれた髪はおろし髪になっているのだ。

つまり此処での '束' は滑り落ちたのちの髪の房じゃあなく結い上げられていた時の '荷' であると考え、拙訳では 'どなたが〜' 以後の科白にLe faix の訳語を加えなかった。

  *フォーレ "アムール、私には愛しいのです" 落合訳

今日のクラブは楽しくいきましょ〜♪


下らないオタクですがどうぞよろしくお願いいたします。
ヴィルモランの資料写真集を持っていきます。みんなで見ましょうネ。


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*見る音楽
*パリの風の歩み
*パリの風の形態


*憧れの窓
*ボルドゥーとゴイェスカス
*グラナドス "窓辺の語らい" +Faure

  *"クリメーヌに" 落合訳
  *アヴェ・マリス・ステラ
  *フォーレ "クリメーヌに"


*マクダウェル "タランテラ風に"
*マクダウェル "タランテラ風に" +Faure

  *フォーレ "タランテラ" 背景
  *フォーレ "タランテラ" 楽曲


*マクダウェル "牧歌" +Dukas


*マクダウェル "ブルレスク"

  *雅歌メモ
  *歯医者さんでフォーレ
  *フォーレ "アムール、私には愛しいのです" 落合訳
  *どなたが此の長い髪を?


*マクダウェル "ピューリタンの時代から" +Faure

  *フォーレ "聴きいれ" 落合訳
  *閉ざされた庭
  *聴きいれ
  *貴女の祈り


*マクダウェル "ミッドサマー" +Faure

  *フォーレ "九月の森の中で" 落合訳
  *人生の秋
  *乾きと樅
  *森の安堵
  *深い森の中
  *失望の葉のひとひら


*ドビュッシー "仮面"

  *カディスの娘とパリの娘


*ドビュッシー "マズルカ"


*ドビュッシー "喜びの島" 再
*ドビュッシー「喜びの島」(1)シテール
*ドビュッシー「喜びの島」(2)ホールケーキ
*ドビュッシー"喜びの島" +Faure

  *フォーレ "目覚めているか、太陽の如き私の香よ" 落合訳
  *創世記とフォーレ
  *果実
  *髪をほどく女
  *想いが香る
  *肌の匂い



どなたが此の長い髪を?

January 19, 2016

枯れ感が可愛いキャニスター。大好きだから3種類セットだったのを3つの場所で楽しみたくて別々に置いてます。


フォーレ 'イヴの歌' No.7訳の註釈から・・・

  *フォーレ "アムール、私には愛しいのです" 落合訳


第3、4パラグラフにもフォーレによる改訂が見られます。

11行目etreinte sombreはフォーレの筆によるものでレルベルグではetreintes sombresと複数形で著されてる。反対に14行目はToute d'extase et de baisersとフォーレは変更しており原詩はbaiserと単数です。

続いて髪に関しての2単語について加筆がある内、今日は1単語目だけを。


'どなたが此の長い金色の髪をほどいたのでしょう? ' は正しく直訳すると '私の長い金色の髪' です。3つの理由で "此の" に置き替えました。

楽曲はイヴの歌7曲目とよく比較されて詩も同じレルベルグであることから、[私] というものに一定以上の執心を見せ、所有格 '私' の数は日本語にするには不自然なほど多用して訳したイヴのパーソナリティと '閉ざされた庭' との空気感を分けたかったのが理由の1つ目。

  *果実

次に女が "私の髪" と口にする時すぐ側の自身の髪を指す連体詞を置いて問題はなかろうというのが2つ目の理由です。

前後描写があれば男や子供の髪を愛撫しながら此の髪と言うことは可能だけれど、"此の髪"の訳から彼女が自らの髪を指して述べていると明白に表せる場合なので敢てこうしました。


理由3つ目は日本語になった場合の情景の広がりを求めたことだった。


ほどかれた彼女の髪はどんな風だろう?
結っていた髪がするりと背中へ滑り落ちただろうか、それとも乱れた房が頬を隠して肩から胸へ波打っているだろうか。

面白い事に、エデンのイヴが幾度も重ねて [私] と言うときに怖れのなさと自己への愛着を大きく感じさせたのと正反対に、当詩の場合

  どなたが私の髪をほどいたのでしょう?
  どなたが此の髪をほどいたのでしょう?

前者のほうが [私の所有物である髪] に対して客観性を持つニュアンスに感じるのは私だけだろうか。それはイコール物理的に髪とそれを見る眼が遠いことも感じさせる気がするのだ。

  どなたが私の髪をほどいたのでしょう?と
  後ろに流れ落ちた髪を背で感じている女

  どなたが此の髪をほどいたのでしょう?と
  前肩に垂れ零れた房に頬で触れる女

と情景を連想したのだった。

**


  以上3つが '此の' と訳した含意です。

  やだやだ、またオタクっぽいブログ書いちゃったよぉ。


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  *森の安堵
  *深い森の中
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*ドビュッシー "仮面"

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*ドビュッシー "マズルカ"


*ドビュッシー "喜びの島" 再
*ドビュッシー「喜びの島」(1)シテール
*ドビュッシー「喜びの島」(2)ホールケーキ
*ドビュッシー"喜びの島" +Faure

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  *創世記とフォーレ
  *果実
  *髪をほどく女
  *想いが香る
  *肌の匂い



フォーレ "アムール、私には愛しいのです" 落合訳

January 17, 2016

桜草がボリュームたっぷりに咲きました。
今朝はフォーレOp.106 '閉ざされた庭' よりNo.7を訳してみますね。


《アムール、私には愛しいのです》

             レルベルグ詩
              落合訳

アムール、瞼を塞ぐ目隠しが
私には愛しいのです。
か弱き薔薇に注ぐ陽の
柔らかな錘のような重みなのです。

歩み出そうとすると、なんて不思議なこと!
水上を歩くかのようで・・・
どこへ置こうと足は重さを増して
輪に潜りこんでしまうのです。

闇の中、どなたが
此の長い金色の髪をほどいたのでしょう?
暗がりの抱擁を身に帯びて
私は炎の波間に沈みます。

恍惚と口づけに溢れて
唇は私の魂を奏でだす。
燃え上がる大河の上
灼熱の花の如く開きます。


l m'est cher,Amour,le bandeau
Qui me tient les paupières closes;
Il pèse comme un doux fardeau
De soleil sur de faibles roses.

Si j'avance,l'étrange chose!
Je parais marcher sur les eaux;
Mes pieds plus lourds où je les pose,
S'enfoncent comme en des anneaux.

Qui donc a délié dans l'ombre
Le faix d'or de mes longs cheveux?
Toute ceinte d'étreinte sombre,
Je plonge en des vagues de feu.

Mes lèvres où mon âme chante,
Toute d'extase et de baisers
S'ouvrent comme une fleur ardente
Au-dessus d'un fleuve embrasé.


残念、訳だけで時間がなくなっちゃったから註釈その他加筆はまた今度に・・・


ミニチュア如雨露をupしてMacを離れます。


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  *アヴェ・マリス・ステラ
  *フォーレ "クリメーヌに"


*マクダウェル "タランテラ風に"
*マクダウェル "タランテラ風に" +Faure

  *フォーレ "タランテラ" 背景
  *フォーレ "タランテラ" 楽曲


*マクダウェル "牧歌" +Dukas


*マクダウェル "ブルレスク"

  *雅歌メモ
  *歯医者さんでフォーレ


*マクダウェル "ピューリタンの時代から" +Faure

  *フォーレ "聴きいれ" 落合訳
  *閉ざされた庭
  *聴きいれ
  *貴女の祈り


*マクダウェル "ミッドサマー" +Faure

  *フォーレ "九月の森の中で" 落合訳
  *人生の秋
  *乾きと樅
  *森の安堵
  *深い森の中
  *失望の葉のひとひら


*ドビュッシー "仮面"

  *カディスの娘とパリの娘


*ドビュッシー "マズルカ"


*ドビュッシー "喜びの島" 再
*ドビュッシー「喜びの島」(1)シテール
*ドビュッシー「喜びの島」(2)ホールケーキ
*ドビュッシー"喜びの島" +Faure

  *フォーレ "目覚めているか、太陽の如き私の香よ" 落合訳
  *創世記とフォーレ
  *果実
  *髪をほどく女
  *想いが香る
  *肌の匂い



歯医者さんでフォーレ

January 13, 2016

ロンシャン窯の絵付けって好きだなあ。
お皿の窪みにギャレット・デ・ロワがぽっこり。


半年ごとの検診で小さい虫歯が見つかって、昨日歯医者さんへ行きました。お菓子の食べ過ぎよね〜。

  待合室でフォーレ '閉ざされた庭' 7曲目を訳してました。
  虫歯治療から現実逃避して詩に触れるのは楽しかった。

各章に旧約の雅歌のエピグラフが記されている当作品集はカトリック教徒にとってこたえられない楽しさです。

  *閉ざされた庭


如何にも雅歌風な運びに聖書フレーズが散りばめられる。


薔薇/シャロンの薔薇
    (手持ちのフランス聖書94年改訂版には
     シャロンの薔薇が水仙となる表記があります)
水上を歩く/イエズス様とペトロの対話
錘/イザヤ28隅の石


等々ぼんやり読むだけでも様々な場面を彷彿とさせます。


  アムール、瞼を塞ぐ目隠しが
  私には愛しいのです。
  か弱き薔薇に注ぐ陽の
  柔らかな錘のような重みなのです。

  l m'est cher,Amour,le bandeau
  Qui me tient les paupières closes;
  Il pèse comme un doux fardeau
  De soleil sur de faibles roses.


  歩み出そうとすると、なんて不思議なこと!
  水上を歩くかのようで・・・
  どこへ置こうと足は重さを増して
  輪に潜りこんでしまうのです。

  Si j'avance,l'étrange chose!
  Je parais marcher sur les eaux;
  Mes pieds plus lourds où je les pose,
  S'enfoncent comme en des anneaux.


歯医者さんの待ち時間が短かったのでココまでしか訳せてない。

尚7行目 Mes pied plus lourds はフォーレによる改訂で、レルベルグ原詩ではtrop lourdsです。拙訳はフォーレ楽曲訳の視点なのでフォーレが手を加えたものを基としますね。


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  *アヴェ・マリス・ステラ
  *フォーレ "クリメーヌに"


*マクダウェル "タランテラ風に"
*マクダウェル "タランテラ風に" +Faure

  *フォーレ "タランテラ" 背景
  *フォーレ "タランテラ" 楽曲


*マクダウェル "牧歌" +Dukas


*マクダウェル "ブルレスク"

  *雅歌メモ

*マクダウェル "ピューリタンの時代から" +Faure

  *フォーレ "聴きいれ" 落合訳
  *閉ざされた庭
  *聴きいれ
  *貴女の祈り


*マクダウェル "ミッドサマー" +Faure

  *フォーレ "九月の森の中で" 落合訳
  *人生の秋
  *乾きと樅
  *森の安堵
  *深い森の中
  *失望の葉のひとひら


*ドビュッシー "仮面"

  *カディスの娘とパリの娘


*ドビュッシー "マズルカ"


*ドビュッシー "喜びの島" 再
*ドビュッシー「喜びの島」(1)シテール
*ドビュッシー「喜びの島」(2)ホールケーキ
*ドビュッシー"喜びの島" +Faure

  *フォーレ "目覚めているか、太陽の如き私の香よ" 落合訳
  *創世記とフォーレ
  *果実
  *髪をほどく女
  *想いが香る
  *肌の匂い



想いが香る

December 02, 2015

スカプラリオの聖母のおメダイ。


"目覚めているか、太陽の如き私の香よ" 最終パラグラフです。

  *創世記とフォーレ
  *果実
  *髪をほどく女


とっても短い詩なのに聖書媒体+ヘレニズム風登場人物のイメージに手間取ってる。


  私が腕を広げているのを
  彼には届かぬ声が
  私の谷の百合の香気に満ちているのを
  彼は感じているだろうか

  Sent-il que j'étends les bras,
  Et que des lys de mes vallées,
  Ma voix qu'il n'entend pas
  Est embaumée?


着目したいのはやはり香り。
20行目に5種類目であり7度目になる香り描写がある。


1行目 senteur 香
2行目 arôme 芳しさ
4行目 parfum 匂い
7行目 senteur (8行目にもEt de 以降の熱き薔薇に掛かる) 香
12行目 odore 薫香を放つ
20行目 embaumée 香気に満ちる


1,2,4行目香・芳しさ・匂いは、イヴ自身の匂やかさを確かめるような描き方があり、側へ寄って初めて鼻孔がくすぐられる。

7,8,12行目匂い・薫香を放つは、甘やかな匂いを近い範囲へ発散するものたちの様子にイヴが重ねられる。

20行目香気に満ちるは、想いと共に遠い '彼' に向けて照射したい香りとなる。

  なんて素人風に考えてみて・・・


直訳では


私が両手を広げているのを、そして私の声が (←彼には聞こえない声であるところの) 谷間の百合によって (谷間の百合で) 香っているのを彼は感じているだろうか

が近いのだと思いますが

  百合で声が香っている
   ↓
  声は届かなくても
  百合からの香気のように立ちのぼっている恋慕

といった具合にイヴが届けたい想いを優先したイメージで訳してみた。


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髪をほどく女

November 28, 2015

女が髪をほどく。


男にとっては仕草が注目点だったり、ほどいた意味を求めたりがあるかもしれない。
キュッと結んで上げていた髪が滑り落ちる一瞬を境目に、インティメイトな空気を感じるかもしれない。

しかし女にとって髪を解いた瞬間はそうした余者の視線に拘わりなく、第1には自分自身が心地良さを得ることに目を向けるのじゃあないかしら?

  開放感と弛緩。
  朝の髪が授かっていた甘い香りが再び漂い始める。
  それを頭の端で確かめるインフォーマルな安楽。

男の眼に魅力と映る髪を解く一瞬に女はほぼ無意識でいる。


其う言って語弊があるなら女は髪を解いて緩和を求める自分の衝動に、より忠実ではなかろうか。

先んじて寛ぎを得る。其うしてのちに流れる髪が自らの自由と美しさを後押ししていると知覚するイヴ。

"目覚めているか、太陽の如き私の香よ" の続きです。

  ほどきかけた髪が
  息づき始める今この時を
  彼は知っているだろうか?
  大地の上で感じているだろうか?

  Sait-il à cette heure,
  Que j'entr'ouvre ma chevelure,
  Et qu'elle respire?
  Le sent-il sur la terre?

直訳ですと、


私が髪をほどきかけて
その髪が呼吸している
   ↓
  この時 → を、彼は知っているか

此うなりますが


既に髪が呼吸し始めている ← 解きかけた時
   ↑
ほどきたい衝動が満たされる安堵によって
自分自身が息をつける
   ↓
髪も喜んでいるのを感じられる・髪が喜んでいると
感じられるほど自身がリラックスする
   ↓
解き放たれた (髪だけではなく)
女であるイヴの自由な魅力が満ちた
   ↓
  この時 → を、彼は知っているか

の意味を含め日本語的に繋げて
上のように試訳しました。


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  *閉ざされた庭
  *聴きいれ
  *貴女の祈り

*マクダウェル "ミッドサマー" +Faure

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  *乾きと樅
  *森の安堵
  *深い森の中
  *失望の葉のひとひら

*ドビュッシー "マズルカ"

  *創世記とフォーレ
  *果実



貴女の祈り

November 15, 2015

秋雨の2日間。


雨を映す空間は仄暗くて、お庭に落ちる水粒の音が幽かに聞こえた。
風邪の閉じこもりにはぴったりの空模様。レルベルグに触れる寛ぎ時間だった。

"聴きいれ" は短い曲だから、今日の訳でお終いです。

  *閉ざされた庭
  *聴きいれ


レルベルグ詩の第3パラグラフをフォーレが削除したため
楽曲内では2,4パラグラフを残すところとなっています。


  まだ震えている貴女の唇から
  祈りの言葉が絶え、
  金色の光を浴びた薔薇の
  微笑となって和らぐ時

  Alors que ta parole expire
  Sur ta lèvre qui tremble encor,
  Et s'adoucit en un sourire
  De roses en des rayons d'or;

  静かに黙する貴女の魂が
  閉ざされた庭に眠る精の
  柔らかさにつつまれて
  悦びと安らぎを見出せますように

  Que ton âme calme et muette,
  Fée endormie au jardin clos,
  En sa douce volonté faite
  Trouve la joie et le repos.

第2パラグラフ ta parole は第1パラグラフ ta prière の文句となるため '祈りの言葉' と意訳にした。


ta parole に続く expire のほうは '途切れる' 意味もあるけれど、日本語で '途・切れ' にすると中断のイメージになってしまうのが気になった。お祈りは "主イエスキリストの御名によってアメン" と共に閉じるから此処ではあくまでも祈り終えた描写でなければとの考えの元 '絶える' を置いた。

実は、楽曲内でフォーレが用いなかった第3パラグラフにはマリア様のご訪問の場面が描かれる。それら踏まえて祈りる姿を歪めず描く訳にしたかった。



聴きいれ

November 10, 2015

パリのフェーブや、ビゴさんのカテドラル型のフェーブ。
ピアノ室前のコーナーに今年はどんなフェーブが増えるかな。


御公現祭を夫婦でもう楽しみにしてて、今年はどこのお店のギャレットにする? って相談中。今は2店舗が決まってる♪

"聖ジュリアン伝" のあと同じくフローベールの晩年の三作の最後 "ヘロデア" を読み終えた。

  *秋の読書

聖書が題材の物語は面白くって、登場人物が既に共通知識になっている上での作家の見方を知るのがとっても興味深くて好き。

  フォーレ "聴きいれ" も聖書モチーフが刻まれています。


いわゆる聴許は、


フォーレが作曲したレルベルク詩のフランス語では exaucement
お祈りのラテン語では exaudio ですね。

'我らの祈りを聞き入れ給え' では活用形を用いて Christe, exaudi nos.

タイトルは単語としての '聴許' やお祈り文によく記される '聞き入れ' などの間で迷って、今のところは '聴きいれ' としています。


  貴女がその輝く両の手に
  疲れた額を乗せるとき
  私の愛が貴女の祈りの内に
  聞き届けられますように

  Alors qu'en tes mains de lumière
  Tu poses ton front défaillant,
  Que mon amour en ta prière
  Vienne comme un exaucement.


'祈る貴女' を思う '私' は、恋人だけを見つめるのじゃなく
恋人が今向き合う神を介して優しい思いを届けようとする。

想いと視線が二重に交わる詩をどのように訳せるか悩みます。

4行目は直訳では '聴許の如く届きますように' だけれど
お祈り文のように '聞き届けられますように' とした。

前出のラテン語のお祈りも '我らの祈りを聞きいれ給え' と補足訳がなされますが Christe, exaudi nos そのものは '我らを聞きいれ給え' と顕されることを踏まえて、いつもながらベストではありませんが現時点で自分に考えられる形です。




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