Le morceauU



時の贈り物

July 14, 2009

現代の流行ものを求めないのは主義的なこと・・・


どうしても欲しかった物が翌年の同じ季節には必要なくなったり
手に入れて喜んだ物を数ヵ月後に大切と思わなくなったり

はやりを追っているようで追われる暮らし、私には向いてない。

物の入れ替わりがとんと無い家に真新しい風が一吹き。
時のかけらを頂いた。

150年前 時計に留めつけられてたエマイユの文字は古物商ECRITUREさんのお品でした。

流行は廃れ 物品は時間と時代に淘汰され・・・今に残ってきた物がひっそりと呼吸する美しさ。

楽曲たちもエマイユの数字のように 過去に流れる時の語り手なのね。

フォーレが最初の歌曲を書きはじめた頃のお品だわ。
作品番号1.はヴィクトル・ユーゴーの詩に寄せていた。



アメリカン

June 27, 2009

アメリカものをおさらいしてた。

すぐには治る見込みもなく、考えたって仕方ないから目の前の楽譜をおさらいする。


はじめは痛みで途切れがちになりながら、いつしか曲の中へ・・・
パリの芸術家さんたちが愛した良き時代のアメリカ文化、やっぱり大好き!

ソフィストケイトされてない。ちょっぴりヤクザ風。骨太なものをいい具合に崩した遊び心と懐の大きさ。キザで弱くて浮わついていて優しい。愛すべき音楽・・・♪

チャイムに呼ばれた・・・カリフォルニアのLICAちゃまから大好きないつものアレが届きましたよ♪ アメリカづいてる日なの?

再びチャイム。"桜ねえちゃん、医療相談します。"
桜ねえちゃんって・・・(笑)
面立ち整ったスラッとした青年は年下の従兄弟。重い果物を持って立ってました。まぁカ〜ワユイこと! ねえちゃん文句ないワ♪

ハーバード大学病院に勤めているところを1週間予定でボストンから帰国してきた。心強い医療相談人です。

ウイルスが下降性じゃなくて良かったとのこと。化膿に圧をかけないためにと今でも穴が開きっ放しで困っていたけど、上から抜ける性質のものでまだ良いって。下へ行ってしまうと肺や心臓が近いからすぐに命に関わるのだからねと話された。
そうね。幸運であることをたくさん探しましょう。

私はどうやってもウイルスを相手にする頭脳はないから 病気のことは打ちやって自分にできることだけを。
アメリカもののおさらいの続き。

サティが通ったカフェコンセール、ドビュッシーが愛したミュージックホールに続いて、一挙流れ込んできたアメリカの香りにパリが熱気を得た時代の曲・・・

アリス・プラン(モンパルナスのキキのご本名ネ)とマンレイが出会った年の・・・

覗き見るアメリカに私も元気を貰いたいワ。どなたの何の曲? ってお答えはまたいつかネ。



惑いの先(2)ショパン

June 24, 2009

点滴室の天井を撮ったりして・・・。
シャンデリアみたいってわけにはゆきませんね。


昨日の続きネ! 身を置く所に小さな慰めを求めない気持ちは、慰めの本質になる昇華の有無が理由かもって。御幣があれば、昇華させる力の多少と申し変えましょう。

惑いの中から作品が生まれることは多くても、芸術文学作品は惑いと1セットで昇華の形を示してくれることが大好き。

たとえばリルケと同じ風にショパンの音楽にも惑いがあって。しばしば大きな苦悩や不安感を示しますね。それでも必ず曲の終わりと惑いの先の昇華があり、音楽に変換投影する作曲作業で充分自身の中で噛み砕かれたものになってる・・・

人の心と弱さを歌っていると評されがちなショパンは その意味で決して軟弱じゃないことが愛してやまない理由の一つ・・・

昇華の形は必ずしもハッピーエンドではありません。それだってリルケと同じネ。
ハッピーエンドでないバラードが、ソナタが、どれほどエネルギーあるものかと思い憧れるの。

リルケもショパンもね、エネルギーって表現ががそぐわないかのような弱々しくて悲しい訴えがあります。それでも綿々と膨大なものを綴りゆく持久力には やはり素晴らしく大きなエネルギーを感じずにいられません。

常に憧れるのは、大きな力の持続。
昇華を可能にする持久力。それこそ本質的には一番の慰めになるものと考えるから。
持久性の力を求めて本を読みピアノを弾くような気がするワ。

明日はブルゴーニュ君です。



惑いの先(1)リルケ

June 23, 2009

家庭内で昔っから図書をやりとりしてました。同じ本を読んで読書ノートを交換した時期もあれば、詩の輪読をしたり。


影響を受けた面と、図書の好みが異なる面があります。写真右神谷美恵子氏ご著書は家族ので自分じゃあ購入しない系統・・・

お作は素晴らしいのです。人間学心理学の論文を多数収録され、知性と愛に満ちた実践活動の記録もあり。グレゴリー・ジルボーグの大著を訳出された優れたお方のご著書です。ただ好みの問いなの。

側に降りてきてくれて 当方も共感できる惑いを見せてくれ、共にあろうとする姿勢に慰められ、心の中を探りながら少しずつ答を見つけてゆく読書・・・それは全く身に合わないと感じて久しい。

今の自分が共感できないほどの大きな力を示している書物が好きなよう。私など一介の者を側に近寄らせてもくれない、絶対世界の一例を完成形で見せてくれる本に憧れ、大好きになるの。

共感を欲しない理由は、ジッドが書いた通りなんだわ。世人の親しく見聞してるような、同じ経験を共有できるような事は図書内でまで繰り返したくないと、いつしか考えるようになってた・・・

それでなくて自分が共にできないような強い世界、新しい世界を見たくてページを捲る。


**


此の度はMRIが辛かった・・・割合何だって平気なほうだのにね。造影剤で吐き気は酷いし頭部顔面固定の用具に強い息苦しさを感じたりして。

機械の中で考えてたの。リルケ "マルテの手記" のこと。
1988年頃でした。当時慶応大助教授でいらっしたリルケ研究で著名な伊藤行雄氏のお話を読みました。

リルケの自己自身の死について。マルテの投影構造 --風景を描き出すとき、何故他ではなく其の風景を切り取ったかって構造-- について。引いては人間の内部風景について。リルケが表す死の厳粛性について。

MRIの中でなんてこと考えてるの? って可笑しいし、連想は確かに焼き場を髣髴とさせる格好の機械によるけれど 深刻なことじゃあないの。

ただね・・・
側で聞く優しい慰めに場を凌ぐより 安心をさせてくれようとする世事の言葉より、リルケの力を大きな慰めと感じたの。

続きは次回に。



古い譜面台

June 22, 2009

拙宅ガレージの一辺です。

紫陽花レッドビューティーの左っ側、グレーの影がご覧になれるでしょうかしら?


此れね、一部だけ露出してる排水パイプなの。
味気ないパイプを誤魔化すために、此処には季節ごとの大きな鉢を置くのですよ。あまりわからないでしょう?(笑)

譜面台はとても古いの。モーツアルトのソナチネを弾いてたから6才くらいカナ・・・。スタジオ見学に連れてってもらった日のことでした。

音楽家さんとPAさん達とのやり取りを生まれて初めて目にしたの。音はこうして作られて音楽に携わる人たちはこんなにも真剣にお仕事してるって感動でいっぱいになった。

生まれて初めて触れた音楽スタジオの光景を側で見てた譜面台。注文手違いで余ってしまったスタジオ備品をその日に父が引き取ってきた・・・。
以来色んな楽譜を乗せて ずっと一緒に過ごしてきました。錆が出てからはガーデンプレートを。

お初の感動を下さった素敵な音楽家さんはどなた? ってお話は、またいつかネ。



--風な香り(2)アルビノーニ

June 18, 2009

お医者様通いでバテちゃったの(涙)

帰りの乗り物の中、疲れで必ず腫れてくる・・・。
おうちに着くなり寝込む日々。本末転倒?


今朝は診察お休みで嬉しい。昨日の続きのお話ね。

とても恥ずかしい告白です。

アルビノーニのアダージョって、アルビノーニ作曲と思ってた・・・
お勉強不足ですね。イタリアバロックのオペラ作曲家だったアルビノーニにピアノで触れる機会はなかったワ・・・フランスの絡みのロマンから近代を演奏していると接点がなく。

とはいえこれほどの有名曲が成ったいきさつに無頓着だったなんていけませんネ。作曲の経緯を知ることになったのは " --風な香り" から。

お医者様近くの商店を流れてきたアダージョ。ふと立ち止まった。
ねえ・・・アルビノーニの曲にどうしてプロテスタントの香りがするものかしら? って疑問に思った。
アルビノーニは他作品の知識がありません。それにしても北ドイツの香りと感じるだなんて・・・って。

変だわって調べてみればジャゾットの造作がこんにちでは明らかになっていたのね。アルビノーニの作曲断片を発見し編曲したと発表したけれど、それら逸話も含めジャゾット自身の創作だと・・・。

ひょんなきっかけでした。ジッドの旅でマックスウェーバー"プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神" やSagnebin & Gounelle "ル・プロテスタンティズム" など読んでるところでなかったら商店街を素通りしてたでしょう。

" -- 風な香り" の鍵はきっとあちこちにあるんだわ。

硬いお話が続きましたから、明日はお皿の話題でも・・・



--風な香り(1)ルームウエア

June 17, 2009

どの季節にも白は優しい大好きな色。身の周りにはたくさんの白。
お外で白いパラソル、白革のパンプス。


点滴で袖を上げ易いビーズの白いチュニク、
病中のルームウエアはそのままナイティにできちゃう白いコットン。


おじいちゃま (お友達の呼び名ネ) が おや? って仰った。ふざけてお鼻を動かしながら "僕が変わった感想を持ってると思うだろうか? 今日の格好は、君には稀な清教徒風な香りがする。" って。

本当ね、仰られるまで意識しないようなことだった・・・。いつだって似たような白い部屋着だのに。おじいちゃまの繊細な気づきに感心しました。

襟の形? 厚手木綿の風合い? おじいちゃまが気付いたわけは知らないけれど、理に合うの。


この1枚だけはイギリスから来たのだもの。そうとお答えすると満足そう。


ちょっとした雰囲気で -- 風な香りがするって感じること、核心になってる場合が意外に多い・・・。そんな気がしたのはね、楽曲にもおなじことがあったから。

続きは次回に・・・。



ミュージック・サクレ

June 11, 2009

ブログ更新は頻繁だのに、ただの一度も好きなCDのこと書いていなかった・・・

あら変だわって今朝になって気付いたの。


書きたいことが毎日お山と詰まれてて、音楽CDのお話までなかなかゆき着かないナ・・・

何年も前、買ったその日から大好きでずっとずっと聞いているCDです。お勧めを1枚だけ選ぶなら迷いなくこれ♪

ルネサンス作曲家ジョヴァンニ・ガブリエリとアンドレア・ガブリエリのイントネーションを取って、同時代モンテヴェルディが作曲。1991年ロベルト・ジーニ指揮のヴェネツィア録音。CD番号TC 561304。

この音楽がなければ暮らしてゆけないくらいに大好きです。CDの中の世界にとっぷりと身を浸していたくなる。

おうちでかけている殆どはミュージック・サクレなのです。透明感と清浄な空気に包まれる・・・。収録されているのは1声と2声の曲です。声部が少ないことの心地良い緊張感は空間をピンとさせて、気持ちを浄化してくれる。

今もね、かかっていますヨ。
明日はブルゴーニュ君です。



探しもの

May 24, 2009

探しものをしていたのです。
うふふ、見つかった!


探してたのはね、カミュ作ペストに出てくるたった1単語。


第4章オルフェイオスのオペラシーンの後に、海軍街はずれのおうちのお食事描写がありました。給仕されるお米がとっても気になったの・・・。

イスパニア風のお家と描かれてるスタイルに則れば、お米サラダかパエリアなどかもしれません。
けれども他の可能性があるでしょう。元には他の穀物の名称が書かれてて、古い時代の訳者さんが和訳の際に "米" と書き直された場合が考えられるでしょう・・・?

はやり病で市中からなくなってしまった食材によってペストの深刻さが変わるので どうしても確かめたくなっちゃった。

和訳で読んでいたから原書を読み直し。探しものは見つかりましたよ!
給仕されたのは 本当にお米だったワ。


**


これってね、楽譜に記載された元を辿って1音を探し回る作業とよく似ています。
後世の手直しかミスプリントか、どの時点で変えられたか、それは何故で どんな意味があったかって古い資料を追いかけまわす・・・。



リュリの時間

May 22, 2009

蝋燭の灯りで弾きたい曲があるワ・・・

たとえばリュリの音楽。


インフルエンザの蔓延で5月31日のコンサートが中止になってしまいました(涙) 急なことで気が抜けちゃって、レパートリー外のバロック譜を手に取った。

クープラン、ラモー、リュリ。つりがね型のお花が静かに開いてゆくような音たち・・・。
ロンド、サラバンド、ガヴォット。弾き進むと蝋燭の火が揺れる。


ガストン・バシュラール "蝋燭の焔" より
                        (渋沢孝輔様訳)

《焔の凝視は原初の夢想を永続させる。それはわれわれを世界から引き離し、夢想家の世界を拡大する。焔はそれだけでも大いなる現存であるが、しかし、焔のそばで、ひとは遠く、あまりにも遠く夢見ようとする。》



ピエタ

May 19, 2009

ラフマニノフ "エレジー" を、メインサイトMP3コーナーにupしました。


こんなにも お人にそして自分に何度も問い掛けた曲はなかったのじゃあないかしら・・・。

男の歌。
彷徨い、見出し、見失い、

求め、喪失し・・・、絶望する。

絶望の嘆きは、求めるが故。
捨てきれない希望を追うが故に終わりなき責め苦が待つ。


**


曲の中に生きている人を追っていた。いつしか追体験をするように心を重ねて共に嘆き、そしてそこから離れた。

行き着いたのはピエタ像。

先々また変化をするかもしれない。現段階の結論でした。
哀歌を背に負った人を膝に抱くように奏でること・・・。

写真はドイツの指ロザリオ



ショッカー「エアボーン」

May 11, 2009

ねえ上野さん、腕を組んでもいい?

僕お願いがあるの。
合わせが終わったら僕と遊んでくれる?


朝早く出かけたお医者様。血液検査は良くなくて、腫瘍マーカーがまたしても跳ね上がってる(溜息) 今度は何かしら・・・

考える間もなく急ぎおうちに帰って フルーティストの上野明子さんと合わせです。ブルゴーニュ君も勿論参加しますよ。
合わせの前は甘えんぼ。演奏が始まると寝そべってじっと聞いてるお利巧さんです。

メイン曲はショッカー作曲 "Airborne"
透明感ある近代和音に彩られた曲は 日本でも話題になりました。クールでナイーヴで格好良いの・・・♪ 今ソロは叙情的なものが多いから、たまにこんな曲がとても楽しい。遊び心があって精神的に重くなく、シャラッとお洒落。

アメリカもの、もっとやりたくなってきたナ・・・



フォーレ「シシリエンヌ」

May 06, 2009

フォーレ作曲シシリエンヌをおさらいしようとしたら、静かな雨が降ってきた。

だからお庭に出てみましたよ。しとしと降る霧雨の中。


岩陰から覗くブルーデイジー。しっとり濡れた沢山の蕾。
ほら、見えますか? 二人の影。あの二人の影・・・。


**


シシリエンヌは1893年、"町人貴族" の劇付随音楽として作曲されました。チェロとピアノのデュオでした。1898年 "ペレアスとメリザンド" の付随音楽に加えられ、1901年に組曲として現在の形になりました。

初期バロックスタイルの舞曲、どこかに "水" の存在を感じさせるメロディーですね。その通りに、シシリエンヌが演奏されるのは お城のお庭にある泉で二人が戯れ遊ぶシーン。

きっとね、このお花たちのような表情で濡れて戯れたの。雨の中しゃがんで眺めてた青い花びらはメリザンドのお顔になり、次にメリザンドの花冠に変わって、最後に泉の滴になった。
お城のお庭じゃないけれど、この岩陰をメリザンドの泉と呼ぶことにしよう・・・。


**


ロマンティックはここまでネ。今度のシシリエンヌはフルート伴奏だから、中間部の前打音をあまり前に出さずに纏まり良いバスにしましょう。高音域の楽器の方はベースでカウントをお取りになるからバスは流さずに・・・。

今日のおさらいは どんな映像に出会えるカナ。



ラヴェル「ラ・ヴァルス」

April 21, 2009

今夜7時はギャラリー島田にて、野口明美様の絵画とコラボ・コンサートです。
第13回パリの風プログラムの第二弾、どうぞいらしてくださいネ!


点けてたテレビ画面を思わず振り返った夜・・・グリコ、ドロリッチのコマーシャルでした。CMに流れてたのはラヴェル作曲ラ・ヴァルス。

ふわぁっと 少女の横顔が脳裏に浮かんだ。
肩までの、さらさらのオカッパ。細面の輪郭に、ふっくらした唇。ピアノを弾くと艶やかな毛先が揺れる・・・ ラ・ヴァルスのデュオをご一緒した 20代のLICAちゃまの横顔でした。

コマーシャルはごく短いフレーズ。でもその音が見せてくれた映像は、長い時と空間を越えた とても鮮やかなものでした。

桐朋のレッスン室、二台のピアノ、LICAちゃまの音と私の音、お外の緑、おしゃべり、お隣のレッスン室のヴァイオリン、楽譜の染み、廊下の人の気配、重い鞄、風に乗ってくる遠くの金管楽器の練習、埃の匂い、防音壁の穴・・・

眩しい思い出が一瞬で甦る。音楽の力って素敵・・・♪

今夜のプログラムにもラヴェルがあります。リハーサル前にグリコ・ドロリッチ、飲んでみましょっと。



ベルクの叙情

April 13, 2009

コンセルヴァトワールの学生時代、ムラ・カストロ氏のマスタークラスで はじめの頃に弾いたアルバン・ベルクのソナタ。


その頃、ベルクのアカデミックな作風に惹かれてた。

情感を頭脳的に描き出してゆく曲運び。無駄のない変奏、テーマの扱いの統一性、どこを取っても精密な構造・・・なのに、とても豊かな響き。
当時の私はベルクのドライな要素を前に出し、カストロ先生に評価を頂いた・・・。

今は違う風に感じてる。伝統的なスタイルを保った複雑精緻な楽曲から、溢れる叙情を感じてる。
以前と全く異なる曲が生まれてきた。

昨年に投稿した、ベルクのイメージは、ボードレールの詩でした。
国も時代も異なる詩人を用いることは、少し乱暴かしら? って迷いつつ、曲の背後に付き纏うイメージは、どうしてもボードレールを思わせたから。


**


今朝手にした書物の一文。

《ベルクは自らの叙情組曲に、シャルル・ボードレールの詩を引用した》

なんて素敵な符合でしょう!

この室内楽曲のこと、知らなかった・・・。お勉強不足ね。
知らないで、当たりくじを引いちゃった気持ち・・・♪

写真は愛読のボードレール関連書 "BAUDEALRE Paris sant fin"
次回はブルゴーニュ君が登場しますヨ。



ラフマニノフ「エレジー」

April 03, 2009

一人の人物像のこと、チャイコフスキー先生と話し合った。

何ヶ月もかけて・・・。


ラフマニノフ "エレジー" の曲に見えてくる心を持つ人のこと。
現実には居ない、架空の人の心模様。

訴えかけてくる旋律、極めてロマンティックなハーモニー。だからこそ難しく感じてた。
感情に流されない音作りを様々に迷い、物理的に遠隔配置になってるために空虚な響きがする展開部の処理に迷い・・・。

上辺を奏でれば哀愁ただよう曲。でもこれは哀愁じゃない気がしたワ。
一歩退いた諦めが入り混じる哀愁じゃない。
痛いくらい迫る悲哀と 哀感の重量感。
物悲しさとはちがった生々しい葛藤。
ラフマニノフの音楽は考えていたよりもずっと "生" のものだって感じはじめた。

演奏を聞いてくださったチャイコフスキー先生が笑顔で
"また一皮剥けたね。"

少しずつ変化を遂げながら、いつか自分のものにしたい大切な曲。



主題と動機

March 04, 2009

入学とともに受験生ちゃんが居なくなる時期、新しい生徒ちゃん募集の季節です。


基本を教わっていないままでやってきた生徒ちゃん。音楽解説に書いてあることがわかんないそう。

"主要主題の動機の変奏技法って何ですか?"

簡単ヨ♪ 例えばこんなお洋服とイヤリングの関係のこと。

主要主題は、お洋服の薔薇模様。
主題は、黄色の薔薇とロゼの薔薇の2つの動機で成り立ってるの。
2つ目の動機、ロゼの薔薇を取り出すでしょ。
別の材料と組み合わせて変奏させたのが、薔薇のイヤリング。


**


何だってレッスンの材料に変わってく。レッスンの時間、大好きだわ・・・♪



ラヴェル「ソナチネ」3楽章

February 04, 2009

古楽譜が好き。出版社が昔使ったロゴ。紙の匂い。


ラヴェル "ソナチネ" を手に取ったのは古楽譜市でした。
8区に建つDURAND S.A.以前、オーギュスト・デュラン氏の時代のものです。A.DURAND & FILSと刻まれた住所はマドレーヌ広場4番地。

1903年から1905にかけて作曲されたソナチネの完成年、リヨンでの初演に前後して出されたエディションでした。

表紙は、前の持ち主さんがつけた茶色い蝋引き紙。弾きながらページを繰ると、ラヴェルの音楽の背景でカサリカサリと蝋引き紙が音を立てる。


**


前の持ち主さんはね、ちょっと不器用で生真面目な男性なの。
鉛筆書きの指番号を見ると指の柔軟性が低くて、指をくぐらせることが苦手なよう。だから3楽章はひどく細かく仕分けして 左右で交互にテーマを取る大変な苦労をしてる・・・。和音の指番号に手が大きかったことが表れてる。

注意印がつけられた場所は、決まって音が跳ぶ部分。ここが苦手箇所だったのね・・・って、肩の動きが硬い若い学生さんを思い浮かべた。無骨で一生懸命な演奏が浮かんできた。


**


発見はまだまだありました。3楽章第二テーマのペダリング。左写真のように5拍子が2+3になっている・・・
左内声の松葉からしても、Rall.部分の右三連音符からしても、譜面は3+2の書き方ですが、次にa tempoに入った時の2+3と統一を図ったのでしょうか。左右の歌い方を分断するふうな試み?

過去の楽譜の持ち主さんとおしゃべりの時間。私はペルルミュテール式に3+2で演奏しますねって 話しかけたいような気持ち。



クーラント

January 31, 2009

雨上がりの朝。踵つきの白いバレエシューズをパチリ。

レースリボンで纏めてウォールハンガーに掛けていて、時々お部屋履きになりますよ。


これはね、大学の体育の舞踏授業で使っていたの。
幾つかの種目から宮廷ダンスを選んだのは、室内だから寒かったり暑かったりしなくって具合が良いんじゃあないかしらって理由でした(笑)

始めてみるととても楽しくなった。女性パートは王宮の膨らんだドレスをつまむ形に手を広げ、男性パートは腰の剣の鞘を持つ形。
そうして踊ったワルツ、ジーグ、パスピエ、パヴァーヌ。ピアノで弾いていた舞曲は、実際にステップを踏んでみることで考えを助けられたり。

授業は王宮の広間を空想するの。あすこが王座ですよって先生が仰った妄想の場所を中心に円を描いて回り踊る。男性が女性を誘い、女性は扇でお顔を隠して拒否してみたり・・・。

お誘いに応えるときは、帽子を取りながら跪く男性が差し出した手に指先を乗せるの。
前奏部分8小節数える間に手を取り合って、輪の中へ移動する。

大好きだったのはクーラント。
1拍目伸びるように進んだ後、2拍目には体重をかけずに爪先を擦るふうに動かすダンスの優雅さがオキニでした。舞曲組曲で特にステップを意識して弾く曲になりましたよ。

生徒ちゃんがクーラントを弾くとき、ステップを教え伝えてみています。

土曜日だのにお医者様へ。検査結果のお呼び出しです。特別なことがありませんように・・・。



暗譜の確認

January 18, 2009

ずっとせんにMr.Bが下さった大判カードです。ピアノの中に刻まれたロゴに色を乗せている珍しい写真ですね。右側は製作前のピアノフレーム。


コンクールに出る生徒ちゃんから相談。暗譜を確実にしたつもりでも 緊張すると怪しくなってしまうって。私も含め誰もが同じ悩みを持っていますよネ。

全体の暗譜がおよそ仕上がったらば 片手ずつの暗譜をしたり、構造の変わり目で区切って主題ごとの暗譜をするのは、皆様が試してらっしゃることでしょう。

これらのやり方は、前者が配置の把握ですね。両手を合わせた感覚で何となく弾けても、手伝っていた片手を抜いてしまうと残った手の音配置が実は頭に入っていないことが判ります。

後者は安全地帯を作る練習に当たるかしら。怪しくなっても、次の主題をキーにして中途からでも始められるための対策になります。

生徒ちゃんに勧めたのは、後者のバリエーション。
楽曲を区切って幾つかの開始位置を設けたら、反対側から弾いてゆくの。

もしもこんな曲だったなら・・・


蛇の目の傘にふる雪は
むらさきうすくふりしきる。
空を仰げば松の葉に
忍びがへしにふりしきる。


逆順に暗譜で乗せてみます。


忍びがへしにふりしきる。
空を仰げば松の葉に
むらさきうすくふりしきる。
蛇の目の傘にふる雪は


するとね、いつも通りに何となく過ぎていた箇所を改めて認識し直せるし、逆の順序を追うことで構造が尚はっきりと頭に入ります。

10分15分を越える曲の暗譜は色んな不安が付きまとうと思いますが、逆順暗譜が完全にできるようになれば、ほぼきっちり曲を憶えられたと考えて大丈夫じゃあないかしら・・・。

これから受験に臨むかたもいらっしゃることでしょう。頑張って!
今できることに尽くし切れば、その努力は当日たった一人でピアノの前に座る自分を支えるから。

引用の詩は白秋の "夜ふる雪" 。



オープンリール 時間の足音

January 09, 2009

レコードの音が好き。古い録音は演奏家さんの体温が伝わってきそう。

音符のチェックは 一部分を繰り返し聞くことができるCDを便利に鳴らす。楽曲を味わいたい時はレコード派です。


針を落とす緊張感ある一瞬は、鍵盤に指を落とす張り詰めた気持ちに同化するよう。
空で回して埃を取る数秒は、弾く前にちょっと鍵盤を拭いて心を静める動作と何か通じる。

これから音楽が始まりますよって確認し合うような。
不便にも見える作業は 音楽を受け取るための大切な作業に思えるの。

それにね、古いレコードが僅かに波打つ音がする・・・時代を隔てて私達の空間に音楽を届けてくれる 時間の足音のようではない?

レコードよりもっとたくさんの時間の足音を聞かせてくれるオープンリールも現役です。
たくさんのリールテープは宝物。

この中にはね、お師匠様のデビュー録音もあるのです。物心つかない頃に聞いて育ち、この音を作る人に師事したいと大学を希望したの。



ショパン「ワルツ」No.12

January 06, 2009

白は一等好きな色。

白いブラウス、白いカップ、白いお花・・・
ニュアンスのある白が好き。


白い曲もある気がするわ。ショパン・ワルツ12番など白を感じる・・・。
死後14年が経過してから出版されたヘ短調のワルツです。
とても感傷的で 吐息のようなフレーズが繰り返される。
吐息の色が 白い色・・・

12番ワルツをおさらい始めにする日は 白いお洋服が着たくなる。
カーディガンコートは母の手編み作品です。お襟の形や模様がちょっぴりずつ違うの。
パールを散らしてパールボタンをつけたのと、ビーズを散りばめてシェルボタンをつけたのと。


真冬の白はお気に入り・・・。



ジョビン「イパネマの娘」

December 27, 2008

ジョビン作曲 "イパネマの娘" のこと。


"伴奏譜の73ページの4段目から76ページの1段目までをカットして下さい。"

伴奏譜には様々なバージョンや長さがあります。ソリストさんが楽譜を何種類かお持ちの場合 良いバージョンを選んでしばしば寸法合わせが行われます。

メールの差出人、ソリストさんにお電話・・・
私の頂いてる譜面は73ページまでですよ。76ページなんて無いですよって(笑)

"えっどの楽譜送ったんだろう。"
ソリストさん、お電話口で歌う。
私は肩に受話器を挟みながら弾いみて寸法合わせ。

可笑しな光景だけれど時々あることなんです。
ソロでは起きないことがあるのも たまの伴奏では楽しい。

イパネマの娘は、ブラジル・リオデジャネイロにあるイパネマ海岸が舞台になったボサノヴァ曲です。
黄金色に日焼けした美しい娘さんが 太陽を浴びながら海岸を歩く。見惚れて恋心を歌う優しい歌詞と軽やかなメロディーは、どこまでも明るい光の下に響くよう。

この度はソプラノサックスでの演奏です。こちらも12月31日ピアジュリアンの年越しカウントダウンコンサートでお聞き下さいネ。

写真はアールゼメティエ美術館の冊子とヴィジットガイド。



フォーレ「夢のあとに」

December 22, 2008

夢に見た恋しい人。
ゆめまぼろしが愛しかった。目覚めると消え去る幻影。


眠りから覚めないでほしいと願っても 夢を取り戻すことはできない嘆き・・・


夢の中の幸福。けれど覚める夢と知っている。
夢が美しいから悲しいのか、目覚めることに怯えて寂しいのか。

そんな物語でしょうか。

ガブリエル・フォーレが婚約破棄となった1877年秋。悲嘆に暮れるフォーレに友人ビュッシーヌが作曲を勧めたのは、イタリアの伝承詩をビュッシーヌが仏編訳した唄でした。

短い時間に幻想的な世界が現れ消える。
ジュ・トゥ・ヴと一緒に12月31日ピアジュリアンで伴奏を致します。
どうぞいらして下さいね。


夢のあとに
                 ロマン・ビュッシーヌ

まどろみの中、君の姿を見た
幸せを、燃え上がる幻影をぼくは夢見てた
君の瞳は優しく、君の声は澄んでいて
君は光り輝いてた、朝焼けに照らされる空のように

君はぼくを呼び、そしてぼくは地上を離れて
君と一緒に光に向かい飛び立った
空はぼくたちのために雲の扉を開き
ぼくたちは見た、見知らぬ神々しい光を

ああ、ああ、夢からの悲しい目覚め
夜よ!ぼくにお前の作ったあの人のまぼろしを返してくれ
戻れ、戻ってくれ、素敵な人よ
戻れ、おお、神秘に満ちた夜よ


Dans un sommeil que charmait ton image
Je revais le bonheur,ardent mirage,
Tes yeux etaient plus doux,ta voix pure et sonore,
Tu rayonnais comme un ciel eclaire par l'aurore;

Tu m'appelais et je quittais la terre
Pour m'enfuir avec toi vers la lumiere,
Les cieux pour nous entr'ouvraient leurs nues,
Splendeurs inconnues,lueurs divines entrevues.

Helas! Helas! triste reveil des songes,
Je t'appelle,o nuit,rends-mois tes mensonges,
Reviens,reviens radieuse,
Reviens,o nuit mysterieuse!


曲をお聞きになりたい方はこちらへどうぞ・・・
        ナタリー・シュトゥッツマンです。

実際に今朝見た夢はブルゴーニュ君でしたよ!
夢のあとに、お隣で寝ているブルゴーニュ君が現れた(笑)

写真はモーリス・ドゥニ美術館の冊子



スペインのクリスマスに

December 21, 2008

ネックレスの革の十字架と 壁掛け用の木の十字架。旅先で立ち寄る修道院で少しずつ集まりました。


眺めていて、神父様にお贈りするものを思いついた・・・。

私有財産をお持ちにならない神父様。形ある物以外で、故郷マドリードを遠く離れたお心をお慰めするものは無いかしらって思ってた。
お誕生日やちょっぴり早いクリスマスにフランスのお品を頂いて、とても慰められて嬉しかったものだから こんな喜びを神父様にもお分けしたくなった。

うふふ、有ったワ! 大急ぎでコンサートMDのダビングに取りかかる。
ファリャ "火祭りの踊り" "アンダルシア幻想曲"、アルベニス "スペインの歌全曲"。それからフランス人作曲家がスペイン要素を盛り込んだ曲たちも。
ドビュッシー "遮られたセレナード" "葡萄酒の門"、ラヴェル "道化師の朝の歌" 他にもいろいろ・・・

スペインの香りの曲、たくさんあるじゃあない? そしてこれならば神父様もお心煩いなくお受け取りなされるワ。

小さなクリスマスプレゼントができて嬉しくなった日曜の朝。御ミサへお出掛けです。



サティ「ジュ・トゥ・ヴ」

December 18, 2008

ロートレックのお友達、アレクサンドル・スタンランの名をお耳になさったことがない方も、黒いにゃんこのポスターはきっとご存知ですネ。


スタンランのポスターで広告を打った文学カフェ兼音楽喫茶 "黒猫"。
スタンラン自身も所属した芸術家コミュニティの中心として、19世紀末から前衛芸術の拠点となった場所でした。

変遷は3度に渡ります。
1878年カルティエラタンに組織したクラブ "イドロパット"。
1881年にはモンマルトル画家ロドルフ・サリがアトリエを提供して、ロシシュアール通り84番地に "黒猫" の名で開かれます。
そして1885年ヴィクトル・マッセ街に拡大されたカフェコンセール黒猫として再生します。

"黒猫" でサティがピアノを弾いていた頃に作曲したのが "Je te veux(ジュ・トゥ・ヴ)" 。
時は1900年。
素晴らしくグラマラスな花形シャンソン歌手ポーレット・ダルディのために作られました。大衆歌謡の王道のような甘いメロディーに お洒落な伴奏付けは時々クールな表情も覗かせて・・・。
世紀を越えて愛されてきた歌ですネ。

31日のカウントダウンコンサートは、他曲との関係で 急遽ジュ・トゥ・ヴに曲目変更だってソリストさんからご連絡・・・。
よくあることです(笑)
朝はジュ・トゥ・ヴの譜読み。急がなくっちゃね。

写真はこれから冷蔵庫に貼ろうとしてる、モンマルトル通りの小冊子



CDとレコード

December 08, 2008

リンクして頂いてる憧れのページ、
salvage antiques様。


良いわぁ・・・♪って覗いてみては似てるモノ探しごっこ。


素敵なページに出ているお品とオソロっぽい物、お部屋の中に見つけると嬉しくなる♪

先日はバンクボックスを更新なさっていました。
ほら、拙宅のものも錠前用の金具付き。
ちょっぴりだけ似ているでしょう? ほんのちょっぴり・・・ネ!

よく聴くCDを仕舞ってあるバンクボックスは19世紀中期の品。フランスを行き来していた曽祖父から貰い受けました。

手軽に聞けちゃうCDも、重々しいボックスに入ると この一曲が大切に聴かなきゃならない貴重なものだわって再確認する気持ちになれる・・・。

入っているCDはね、ブルックナー全集ですよ。


レコードもよく起動します。


針のアップダウンも手動レバーで行う古いステレオ。
年代物の大きな木製。

今朝かかっていたのはショパン・ポロネーズ。
古い木枠のスピーカーから古い時代の音楽が流れ出る。ショパンの時代に少し近づける気分・・・。



ドビュッシー「葉ずえを渡る鐘の音」

December 05, 2008

お友達と "葉ずえを渡る鐘の音" を鑑賞していた時のこと。ドビュッシー映像第二集・・・2001年の音源を起こしていたのでした。


"運転しながらドビュッシー聞いてるとトリップして危ないんだよね。" って言葉をとっても興味深く聞いたのでした。
トリップの要因を思いついて 私たちの居たお部屋の指したの。

似た色と形がたくさん集まって溶けたようになった空間のマジックと、
似ている音色と音形が連なる音楽のマジックが どこかで繋がっている気がしたから。

"ああグラデーションでトリップするんだね。" って頷いてたお友達。

額縁はよく見れば形、素材、質感とも違っているのに、同じ空気を持った物になっている。

"葉ずえ" も同じよう・・・。
夕方の空気に曲の色とさざめきが溶けてゆく・・・



ベルク「ソナタ」

December 02, 2008

昨日の検査で測った血圧・・・
下が38(笑)
看護士さんも苦笑いです。


ボロボロのボードレールの写真は、帰ってからのレッスンでのお話・・・。


今準備しているアルバン・ベルクのソナタ、大きい生徒ちゃんが譜読みをしてみたいって。
良いわヨ♪ ってお返事。本番に乗せられないものでも、弾いて楽曲を知ってみるのは良いお勉強ですね。

生徒ちゃんの悩みは、ベルク・ソナタの資料が少ないことでした。
一楽章にした逸話しか わからないんです・・・、って。

本当ですね。私達に知ることができる背景は、作曲時のシェーンベルクとのやりとりくらい・・・。

一楽章を書き終えて行き詰ったベルクが、お師匠様のシェーンベルクに相談したそう。
答えてシェーンベルクは、"次が浮かばないのは、この楽章で、言うべきことを全部言ってしまったからだ" と言い、全一楽章になったっていう有名な逸話です。

でもね、それっしかわからないと言えるかしら・・・?
シェーンベルクとの会話は、単一楽章形式にした流れを語るだけじゃあない気がするもの。

シェーンベルクが言う、ベルクが一楽章で表し切ったこととは何だったんでしょうって掘り下げる価値がありますし、お弟子さんの単一楽章ソナタに何らかのインパクトを受けて 曲の形を認めたということも素晴らしいことだわ・・・

覗いてみましょう。曲と曲のイメージそのものを。


***


セロテープだらけの "悪の華" を取り出した・・・

ベルク・ソナタの捉えどころのない暗がり、長い瞑想、鋭い刃、叩きつける激した波、クールな黙想、重なる問い、胸塞がれる重さ、そして酷くロマンティックなものを感じる全体像・・・

ねえ、ベルクが生まれるよりもずっと以前のフランスで、表現された世界の色合いが不思議に重なる詩があったわ・・・って。


                       音楽
                                    シャルル・ボードレール
                                    堀口大學訳


          しばしばよ、音楽の、海のごと、わが心、捉ふるよ!
            青ざめし、わが宿命の、星めざし、
          靄けむる穹(そら)の下、無邊なる宇宙へと、
            われ船出する。

          帆の如く、胸を張り、
            呼吸(いき)かろく
          寄せかへす、波の背を、われ渡る、
            夜(よ)のとばり、とざす奥。

          難破の船の一切の苦悩を
            われの感ずるよ、胸の深間に。
          また順風の、あらしの波の、

            わだつみの奈落の上に、
          われを搖る。----またある時は、油凪、見る限り一面の
            わが絶望の、眞澄(ます)かがみ!


  La musique souvent me prend comme une mer!
    Vers ma pale etoile,
  Sous un plafond de brume ou dans un vaste ether,
    Je mets a la voile;

  La poitrine en avant et les poumons gonfles
    Comme de la toile,
  J'escalade le dos des flots amonceles
    Que la nuit me voile;

  Je sens vibrer en moi toutes les passions
    D'un vaisseau qui souffre;
  Le bon vent, la tempete et ses convulsions

    Sur l'immense gouffre
  Me bercent.---- D'autres fois, calme plat, grand miroir
  De mon desespoir!



ラヴェル「ソナチネ」1楽章

November 16, 2008

ストックが開きました。秋の雨にヴァイオレットはよく似合う。


小さな生徒ちゃんが知らず知らずおこなった分析をご紹介したいんです。あんまり素敵な出来栄えだから。

音楽を紙に描くのが大好きな女の子です。
音楽の"あらすじ"を楽しむことを知ってほしくて始めた課題。
受験には聴音を正確に取ることが必要だけれど、それよりも前に体験しておいてほしいことがある。

休符やリズムがきちんと書けるよりももっと大切なのは、曲の形を大きく捉えること・・・。音の書き取りはできなくて良いから、楽曲の全体図を絵のように把握する力を得ること。

書き取りの曲はラヴェルのソナチネ。まさかとお思いになるでしょう?
多量の細かな音が 密に連なって込み入っているもの・・・。
でもね、生徒ちゃん達は こんなことが簡単にできちゃうの。

音符がまだ書けない生徒ちゃん。線でも丸でも波線でも良いから、聞こえたままに何かを書いて、って教えました。

書き取りのお約束はね、"音が鳴っている間は必ず何かを書くこと。聞こえた音を形で表すこと。" なんです。

教師に課せられるお約束・・・? きっとね、描きたくなるような音楽を伝えること。聴音は音の羅列の書き取りじゃあなく、美しい音楽を描く手段なんだって体験をさせてあげること。


***


さあ実践です。


キラキラして聞こえた時、彼女はお星を書いた。
階段状に音が登る記号も 自分で作り出すようになった。
線と記号の集まりが 彼女にとっての最初の"楽譜"になりました。

そうして今回試みたのは、数字を書き入れてみること。

"貴女の楽譜に番号をつけて。最初のメロディーが1。感じが変わったら2。また変わったら3。
新しい感じに変わったナって思ったら 新しい数字を書くのよ。
前に聞いたナって思ったら・・・前に書いた数字。できるかな?"

弾きながら見やると 懸命なお顔で鉛筆を握り締めて書いている。
凄い速さで進んでゆく音の渦を 速記のように拾い出してる。数字もちゃあんと書き付けながら・・・。

音楽は止まらないから わかるところから埋めていくこと、音楽の流れに乗って聞こえたものをすぐに書き留めていく要領は、後に本格的に聴音を始めた時 充分に役立つことになるでしょう。


***


可愛い"楽譜"は素晴らしいものになりました。
小さな手で書いた番号は 曲構造にぴったりと一致します。


生徒ちゃん番号1 1小節目第一主題
生徒ちゃん番号2 4小節目第一主題確保 3小節フレーズで成るため、ここで区切るのは正解
生徒ちゃん番号3 13小節目第二主題提示 への字マークはフレーズが落ち着く表現
生徒ちゃん番号4 20小節目経過 ↓マークはretenuの表現
生徒ちゃん番号5 24小節目コデッタ ↑マークは 高音テヌート
生徒ちゃん番号2 4小節目へリピート
生徒ちゃん番号3 13小節目第二主題提示
生徒ちゃん番号4 20小節目経過部推移
生徒ちゃん番号5 24小節目コデッタ
生徒ちゃん番号6 29小節目展開部A
生徒ちゃん番号7 34小節目展開B
生徒ちゃん番号8 43小節目展開C 波印は上行音形
生徒ちゃん番号2 59小節目再現部第一主題
生徒ちゃん番号3 71小節目第二主題
生徒ちゃん番号4 78小節目推移
生徒ちゃん番号5 82小節目コーダ *マークは最高音


***


本当に素敵な"楽譜"になりましたヨ。
楽しかった! って生徒ちゃん。ええ、私もとても楽しかったワ!

皆様の音楽時間も豊かでありますように。




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