Le verreW



大人になった日は?

December 10, 2011

キッチンの壁に引っ掛けてる古い電気。
生まれた時からあった。私よりも古株さん。
女性的なキッチンに無骨なテイストのバランスが好き。


  朝のキッチンのおしゃべり。
  大人になったナって思ったのはいつ? って。

大人かな? って感じた瞬間をきっと皆様がお持ちですね。其のときの気持ちもそれぞれに。こそばゆかったり嬉しかったり・・・

  私はね、ちょっとだけ寂しかった。
  寂しくて怖かった。
  
大人になったと感じたのは、お祈りの最後の文句を大人たちの風に唱えるようにと教わった時だった。

物心つかない頃から毎日毎夜口にしたのは、
"この小さなお祈りをイエズス様のお名前を通してお捧げ致します" ってお終いの言葉だった。

ある時からお祈りの最後が少しだけ変わった。
"この小さき祈りを主イエズス・キリストの御名によって御前にお捧げ致します" って。

**


生活習慣の僅か2、3の単語が変わっただけだのに願いやお祈りを言葉にのせる責任を持つ年齢になったって漠然と思った。

多分お祈りの中だけじゃなく、恵みを請い求める理由や心理や可否を1つずつ振り返らなければならない年になったと感じて・・・
大人であることは厳しい事なのねって朧げに捉え始めた。

寂しく怖かったのは、恵みに甘えていられる無自覚な季節はそろそろ終えなければならないって感じたからカナ・・・

其れからお祈りが変わった。

  続きはまた今度ね!



"贈り物" 落合訳

November 21, 2011

ピゼイのボジョレー・ヌーヴォーが届きました。


贈り主様、いつも本当にありがとうございます。
今年のピゼイはボトルの口のシールがかわゆいの。

今朝は予約投稿を試しています。
フォーレ作曲 "贈り物"。リラダンのやさしい詩を訳してみた。

**


    《贈り物》

            ヴェリエ・ド・リラダン
            落合訳

もしも君が、いつの夜か 
病める心の秘聞を尋ねたら
僕は話すよ、君の気持ちを揺り動かすため
ある古い詩情を

もしも君が、未来に落胆し
悩み憂うと話すなら
僕はただ、露を一杯に湛えた薔薇を
摘み集めるよ

もしも君が、寂れた墓を好んで咲く
死者達の花のように
僕の悔恨を分かち合うというのなら
僕は君に白い鳩を贈るよ

**


フォーレが作曲したリラダンの詩は僅か2作だけ。

告白の詩と読めば陳腐に感じられるかもしれないけれど、其うじゃない気がする。"僕" にとっての "僕" と "君" の位置が切なく素敵だと思うの。

"僕" が "君" を自身より少し高い場所へ置き、そっとそっと語りかける遠慮がちな気配。

穢したくない "君" のほうが多分一生懸命に "僕" に寄り添おうとしてて、"僕" は歓びを感じながら "君" を壊さぬよう、ためらっているような・・・

悔恨を持つ "僕" を墓場と表し、片や "君" は花だと言う。
白鳩については以前書いたと同じく、此処では汚点の無い者と読んで良いんじゃあないかしら・・・

陰なる存在 "僕"。"君" へは清澄の象徴を贈り物に・・・
やさしい詩ですね。

《Les présents》

          Villiers de l'Isle-Adam

Si tu demandes quelque soir
Le secret de mon coeur malade,
Je te dirai pour t'émouvoir,
Une très ancienne ballade!

Si tu me parles de tourments,
D'espérance désabusée,
J'irai te cueillir seulement
Des roses pleines de rosée!

Si pareille à la fleur des morts,
Qui fleurit dans l'exil des tombes,
Tu veux partager mes remords.
Je t'apporterai des colombes!



*"ロマンス" 落合訳

*"月の光" 落合訳
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     *月の光のメヌエット
     *月の光と諦念
     *月の光に溶けて消える
     *月の光と母性
     *フォーレ "月の光"

*"イスパーンの薔薇" 落合訳

*"トスカーナのセレナード" 落合訳
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      *トスカーナの気配
      *フォーレ "トスカーナのセレナード"
      *トスカーナに憑かれて
      *フランス気質と音さがし
      *19世紀の恋情

*"罪の償い" 落合訳
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    *罪と長調

*"墓地にて" 落合訳
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*"夢のあとに" 落合訳
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*"クリメーヌに" 落合訳
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*"水のほとりに" 落合訳
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*"リディア" 落合訳
*"この世にて" 落合訳
*"ゆりかご" 落合訳
*"漁夫の悲歌" 落合訳
*"棄てられた花" 落合訳
*"水に浮かぶ花" 落合訳
*"秋" 落合訳

*"森の鳩" 落合訳
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ラベイユの蜂蜜

November 13, 2011

戴き物をした。


リボンを解いてお箱を開けるときってワクワクしますネ。

ラベイユのバイオ蜂蜜って各国の養蜂家の方々のお写真までカタログに記載されてて、お味の種類も豊富で楽しいの・・・♪

フランス、スペイン、イタリア・・・頂戴したのはギリシャの蜜でした。


パンに塗って、フロマージュブランにかけて、オートミールに入れて色々に楽しみます。
小っちゃな硝子の取手つきの瓶が可愛いこと。


朝食を終えたらばソロ練習をなるたけ多く午前中に進めてしまおう。頑張ってる生徒ちゃん2人のレッスンを済ませたらば、次の合わせの曲達は何曲見られるカナ・・・

  体力が倍もあれば良いのに。
  其うすれば倍もおさらいできるんだのにね。
  ナンテ、考えても無益なことを考える。

お稽古を終えるとき、もっと弾きたかった! って毎日思う。
おさらいに厭きる前に体力が尽きて止すのが悔しい。
厭きるまで弾きたい。ずうっとピアノばかり弾いていたいなぁ。



本日PJ秋の夕暮れ

October 21, 2011

肌寒い季節になると

手放せないもの。


フランスのマロンペースト♪
主にマロン・オ・レに使ってますヨ。ミルクを沸かしてラム酒とヴァニラをちょっぴり加えて簡単出来上がり。

もうひとつ今の季節に手放せないのはシャンソンです。
秋はシャンソンが聴きたくなる。弾きたくなる。
ブログ友さんにイヴ・モンタンの素敵な映像を教えて頂いたの。

モンタンは "枯葉" の録音が数々ありますが、此の録音の魅力的なコトったら!
なんて渋くお年を重ねられたことでしょう。


  先々枯葉も伴奏編曲を書出してみよう、なんて考えながら。
  そしてね、続きの映像も見付けちゃいましたヨ。
  なんて素晴らしいの・・・



  熱いマロン・オ・レを飲んでモンタンに感激して
  大好きな秋の始まりです。

昨日は午前から相方さんとタップリ合わせ。
今日は早めの時刻からリハーサル。

ゆっくりまったり弾き始めて、お客様がいらっしゃるまでに場を暖めておきましょう。

今夜7時半、ピアジュリアンでお待ちしております。
秋の夕暮れをご一緒に・・・



"秋" 落合訳

October 17, 2011

日本間に飾るお花を悩んでた朝。


21日PJでお披露目するフォーレ "秋" の訳詞をしてみた。


《秋》

             アルマン・シルヴェストル
    落合訳

霧けぶる秋の空、哀しみの地平線、
日没は不意に訪れ、しののめは青ざめて、
感傷の日々は過ぎてゆく
渓流の水の如くに

かつて若さを謳った魅惑の丘へ
我が心 後悔の翼に乗せ連れ去られる
はなやぎの若き時代の様に
駆け巡り 夢みつつ 

輝く思い出の日々 まばゆい太陽
今いちど花ひらく やさしい薔薇の花束に
涙溢れる
20年、私の心は忘れていた!

**

しっとりした8分の12拍子。5度と6度の連なりで人生の秋を歌いはじめる。

小節配分をとても面白いと思う。冒頭の現在は詩の通り陰鬱に時の流れが弛んでいる。同じ音づかいをしながらも第1パラグラフで5拍分の休符 (6小節目) だった処が、第3パラグラフでは1拍の休符 (28小節目) に変わる。

若かりし夢の日々の時間が あっという間だったように時が詰められる。

フォーレのロマンティックなマジック・・・

       《Automne》

            Armand SILVESTRE

Automne au ciel brumeux,aux horizons navrants.
Aux rapides couchants,aux aurores pâlies,
Je regarde couler,comme l'eau du torrent,
Tes jours faits de mélancolie.

Sur l'aile des regrets mes esprits emportés,
-Comme s'il se pouvait que notre âge renaisse!
Parcourent,en rêvant,les coteaux enchantés,
Ou jadis sourit ma jeunesse!

Je sens,au clair soleil du souvenir vainqueur,
Refleurir en bouquet les roses deliées,
Et monter à mes yeux des larmes,qu'en mon coeur,
Mes vingt ans avaient oubliées!


*"ロマンス" 落合訳

*"月の光" 落合訳
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     *月の光のメヌエット
     *月の光と諦念
     *月の光に溶けて消える
     *月の光と母性
     *フォーレ "月の光"

*"イスパーンの薔薇" 落合訳

*"トスカーナのセレナード" 落合訳
関連記事*トスカーナの目覚めと眠り
      *トスカーナの気配
      *フォーレ "トスカーナのセレナード"
      *トスカーナに憑かれて
      *フランス気質と音さがし
      *19世紀の恋情

*"罪の償い" 落合訳
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    *罪と長調

*"墓地にて" 落合訳
関連記事*神戸外国人墓地

*"夢のあとに" 落合訳
関連記事*夢の目覚めの悲しさよ

*"クリメーヌに" 落合訳
関連記事*アヴェ・マリス・ステラ

*"水のほとりに" 落合訳
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*"リディア" 落合訳
*"この世にて" 落合訳
*"ゆりかご" 落合訳
*"漁夫の悲歌" 落合訳
*"棄てられた花" 落合訳
*"水に浮かぶ花" 落合訳

*"森の鳩" 落合訳
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ツボなんです

October 14, 2011

お庭で育った唐辛子。


イーヨーのお山で収穫してきたナタ豆。
よく乾かして瓶に詰め冬支度のキッチンに備える。

お料理を美味しくする葉や種の恵みがガラスに詰まって並ぶと、豊かだなあって思う。

**


今日は合わせの1日。

大好きな音楽のツボのお話、しましょうか・・・

  弾きながら顔を崩してしまう時がある。
  ツボに入った瞬間なんです。

奏者様それぞれが違う世界を見せて下さる楽しみ。
伴奏者の醍醐味だって思う。

  *プーランク "ロマンツァ"

色んな奏し方の内、蝶番君の音楽はとっても頻繁にツボに入ってきて、弾いてて嬉しいの。

ブログのお客様でフォーレ "夢のあとに" が大好きな方がいらっしゃるの。だから夢のあとにを例におしゃべりしてみましょうか。

**


強弱が語りを素敵に反映してる曲って思う。例えば39小節目からのクレシェンド・・・Reviens, reviens, 戻ってきておくれって、失った恋への堪えがたい気持ちをクレシェンドに乗せるのね。

フォルテへ昇る生々しい訴えが胸を打ちますね。

  ところが蝶番君は此処でクレシェンドを取らずに
  40小節目 radieuse の radieu で僅か膨らませるだけ。

すると曲の世界観が変わるワ・・・

まどろみに見た過去の恋人の夢から覚めて戻ってきてと願うより、もう取戻せないって知っている風な寂寥が先に立つ。

其うして42小節目のディミヌエンドも殆ど作っていませんでした。radieuse の se から次小節と同じ弱音に・・・

radieuse 輝きって言葉がふっと立ち消えた印象を残すのでした。

  寂寞とした音楽観がツボに入って
  シビレルのです・・・♪

此ういった音楽は自分自身は持っていなかったものだから本当にお勉強になりましたよ。

弾きながらね、つい嬉しくなってフフって笑っちゃうことがあるのです。哀しい曲だのにいけないわネ!



"棄てられた花" 落合訳

October 07, 2011

キャンティ・クラシコを頂戴した。


フィレンツェからシエナのD.O.C.G。さすがのコシがあります。

"19世紀フランス美食の芸術" を読んでるところ。笑ってしまうくらい拘った19世紀ガストロノミーの美意識が満載です。

**


ババール合わせの朝に、今日お初に合わせるフォーレ "棄てられた花" を訳してみましょ。

《棄てられた花》

               アルマン・シルヴェストル
      落合訳

私の狂気を運んで
風のままに
歌ううちに千切られて
夢見ながら棄てられた花
私の狂気を運んで
風のままに

花が?がれる如くに
愛は命失う
貴方に触れた手は
二度と私に戻らない
花が?がれるように
愛は命失うのよ

可哀想な花を枯らす風
今艶やかでも
明日には色褪せる
花を萎れさせる風
私の心も枯らして!



シルヴェストルは詩集を持っていないから譜面を見ながら訳しましたヨ。

  自制を失った心を映すような詩と楽曲。
  ストレートなデュナーミクが似合いますね、きっと・・・

和音はたぶん固めに、ハーモニー変わりも優しく暈さず鋭いアクセントを作るのが良いカナ、など考えながら目を通す朝です。

あとは合わせながら微修正ネ!

ファゴットの最後、" mon coeur! " に当たる部分はテンション高いクレシェンドをお願いしてみよう。ピアノパートのクレシェンドへ繋げて頂いて長いフレーズに取ろう。ナンテほくそ笑む。

ほくそ笑むのはね、今は幅が細めのリードを使われていて、無理に圧をかけたときの繊維質な音色の軋みが大好きなんですもの。

  うふふ、朝から変態さん発言に終わります。
  さぁ1日頑張りましょ♪


《Fleur Jetée》

            Armand SILVESTRE

Emporte ma folie
Au gré du vent,
Fleur en chantant cueillie
Et jetée en rêvant,
Emporte ma folie
Au gré du vent:

Comme la fleur fauchée
Périt l'amour:
La main qui t'a touchée
Fuit ma main sans retour.
Comme la fleur fauchée
Périt l'amour.

Que le vent qui te sèche
O pauvre fleur,
Tout à l'heure si fraîche
Et demain sans couleur,
Que le vent qui te sèche,
Seche mon coeur!


*"夢のあとに" 落合訳
関連記事*夢の目覚めの悲しさよ

*"月の光" 落合訳
関連記事 *月の光とリュート
     *月の光のメヌエット
     *月の光と諦念
     *月の光に溶けて消える
     *月の光と母性
     *フォーレ "月の光"

*"イスパーンの薔薇" 落合訳

*"トスカーナのセレナード" 落合訳
関連記事*トスカーナの目覚めと眠り
      *トスカーナの気配
      *フォーレ "トスカーナのセレナード"
      *トスカーナに憑かれて
      *フランス気質と音さがし
      *19世紀の恋情

*"罪の償い" 落合訳
関連記事*身代金
    *罪と長調

*"墓地にて" 落合訳
関連記事*神戸外国人墓地

*"クリメーヌに" 落合訳
関連記事*アヴェ・マリス・ステラ

*"ロマンス" 落合訳

*"水のほとりに" 落合訳
関連記事*サンピエトロ、体と遺骨

*"リディア" 落合訳
*"この世にて" 落合訳
*"ゆりかご" 落合訳
*"漁夫の悲歌" 落合訳
*"水に浮かぶ花" 落合訳

*"森の鳩" 落合訳
関連記事*シルヴィーの鳩とたんぽぽ



本日県美コンサートです

September 24, 2011

コンサート前祝いを

早々と頂いてしまった。


イタリアの素晴らしいワインとオイルのセットでした。

今朝は10時入り。
10時半から公開リハーサルをして、
2時より本番のあと
夕刻、楽器と衣装の荷物のまま
入院中の友人を訪ねる予定ですヨ。


**


もはや緩和治療しかないと言われた友人は
余命宣告の日を過ぎて久しい。

  其うしてまた無茶を言った。

今日のコンサートに何とかして行きたい、少しでも気分が良くなったら行けないものかって。
パリの風の初めから欠かさず演奏を聞いてくれた友人だった。

水も飲めなくなって辛い症状に苦しんでるのに、コンサートを知ると途方もない事を言い出す。聞きに行きたいと繰り返す。

友人にできることがないか
毎日のように考える。


**


  蝶番君と相談して 終演後見舞うことにした。
  病棟で音は出せないけれど音楽の気配を届けられたら・・・

今日は元々本番後一緒にお夕飯も食べられない予定だった。
お茶一杯でタイムリミット。

蝶番君は大阪のレッスンが、私は閉店までにリサイタルドレスの採寸確認に行かなきゃいけない用がある。

終演して着替え・お片付けを終えたら友人の病室へダッシュね。
ベッドで音楽の空気を待ってる友人にどうしても顔を見せたい。

  2人ともご飯抜きのままバタバタお別れするまで
  長〜い1日になりそうです。
  ドリンク剤飲んで頑張りましょ。

**


コンサートは午後2時から県立美術館ホワイエにて。
ご入場無料です。
どうぞいらしてくださいませ・・・♪

  そして大切な大切な友人へ。
    待っててね。終わったら飛んでくから。


*生きててよ
*元気になって
*祈り
*病床の絵
*食べてね
*会いたいよ
*折れた百合
*会えたね
*祈りの花
*月の光と母性
*届きますように・・・
*ピアジュリのお約束?
*お便りいただきました
*生と日々
*ハヤシライス
*「ごめんね」
*ブルターニュの聖画
*軌跡
*再転院
*想い
*2011年8月
*退院と再入院

?僕がおうどん屋さんで見たこと
?僕が思う荷台屋さん
?僕が行ったお見舞い



バルザック "幻滅"

August 22, 2011

バルザック "幻滅" を読み終えた。


カフカ "城" に続いて大長編だった。

長編のあり方には幾通りかがあって、例えばゾラはラヴェルのボレロのように1つ要素が形を変えながら同じ方向へ押し流される集合体の力が大きい長編と感じるし、デュマの劇性を見せる長編のあり方はオペラの作りのようかもしれない。

"幻滅" は内の要素が恐ろしく多様で、かつ我慢の時間帯が長い長編。我慢の時間帯とは挿入のお話が何処へ繋がるかわからぬままに進む時間。またはアカデミックな解説に停滞したような時間。あるいは転換せず倦んでくる時間。

面白かったのは、それら我慢の時間の必要性を考えられた事だった。

結末を急ぎ知りたい気持ちは愚かと知らされた気がした。
最終まで読破すれば然るべき時に結末を見せよう、と・・・
時を決めるのは作家だ、と主張する風な媚の無さが魅力的。

  シュエップスを飲みながら考えた。
  夏の終わりの味がした。

  曲の運びもきっと同じことが言えるわね・・・

**


長編続きで疲れたから今日はヘッセを持ってお出かけしましょ。ギタリスト様と待ち合わせて見知らぬ土地へ・・・♪



想い

July 26, 2011

ダマスクローズのコロンを買った。


薔薇の青いような香りを楽しんで・・・
友人は消毒薬の匂いの中に居るんだと泣いた。

友人は時々外出をしてる。
片付けることがあるって言った。

私は恐ろしくなって、お片付けなんかしなくていいって言った。
整理をして・・・ 安心したりホッとしたり、もしかして思い残す事はないって考えたりしたらどうしようって、怖くてたまらなくなった。

思い残す事をお山ほど作ってやろうって、私、騒いだ。

此ういったお仕事受けるか受けないかどうしたらいいかな? 相方さんが弾きたいって言ってる曲は私はスキルが低い作曲家だけど迷惑かけないかな?

音楽に門外漢の友人へ やたらに相談をもちかけた。
私にはまだまだ貴方が必要なのよ。
わかって頂戴よ。
お片付けなんてしないでよ。
思い残す事だらけで居てよ。
安心して死ねないって思ってよ・・・


*生きててよ
*元気になって
*祈り
*病床の絵
*食べてね
*会いたいよ
*折れた百合
*会えたね
*祈りの花
*月の光と母性
*届きますように・・・
*ピアジュリのお約束?
*お便りいただきました
*生と日々
*ハヤシライス
*「ごめんね」
*ブルターニュの聖画
*軌跡
*再転院

?僕がおうどん屋さんで見たこと
?僕が思う荷台屋さん
?僕が行ったお見舞い



夢の目覚めの悲しさよ

July 04, 2011

冷たいものが嬉しい気候。

ココアのムースをこしらえた。


夢のあとにに続くお話です。

      まどろみに見た 麗しの君が姿
と訳を始めた曲の冒頭。1小節のピアニシモ打音と "眠りの中で" と微かなクレシェンドで儚く始まる旋律は、なんと喪失感に満ちていることでしょう。

幾度も詩を読み返し、音を繰り返し、迷ってた。
直説法半過去形で記された詩を日本語に訳すとき、未完結の過去形で表すほうが より詩的に感じられると思った。其のように著わしたかった・・・

とても迷ったんです。

  夢の中で、美しい君の姿を見ていた。
  僕は燃立つ幻影のような幸福な夢を見ていた。

語りの説得力は 此のほうがきっと大きい。
その上 半過去らしく訳せば、第3パラグラフの現在形が引き立って、夢と現実とのギャップも表現できるのでしょう。

けれどもフォーレは3つのパラグラフの調子を変えぬまま曲づくりをしている・・・ ならば詩句も同時間を示す形に揃えたいと思った。

幸せな過去を描く夢と慟哭の現在とを同じテンションで歌うって どんな風かしらって考えてたんです。悲しみに疲れ切った者の仕業のような・・・

夢を反芻する。過去を過去のできごとにあらず、今此処に在るかのように縋りたい想い。恋を失って乾き疲れた者をほんの一瞬暖める思い出語りを現在形で唇に乗せると、逆説的に一層の喪失感を増すことにならないかしら・・・

其んな思いつきで・・・
間違った考えかもしれないけれど今回は現在形で試みました。

まどろみに見た 麗しの君が姿
幻影は燃立ち 幸福の夢想に耽る

一見しあわせそうな詩句が 短調の哀しい旋律で息ながく歌われる絶望感。アンダンティーノの抑えた抑揚と 止まぬ痛みのような打音が相まってゆきます。

**

最終の部分。

私は前半un ciel を《空》と訳し、後半複数形になった時に総称として《天》の表現を当てました。それは同じく後半divines を《神々しい光》という訳より、《天》と合わせてよく使われる《恩寵》をおくことで より神性の強い意味合いで使いました。

詩の改行に従って訳すとすれば・・・

  天は僕たちのために雲間を開いてくれた。
  秘められた輝き、垣間見た恩寵

  ああ、ああ、夢の目覚めの悲しさよ。

詩句の割振りは此う切れます。でもフォーレは

天は僕たちに雲間を開き、
    秘めたる眩いばかりの・・・

恩寵を鑑(み)せたはずだった、ああ!
  ああ、夢の目覚めの悲しさよ。

上のふうにフレーズを取っています。
垣間見た恩寵・・・手に入れられると思った愛を 失ったとも掻き消されたとも語らぬまま、《Helas! ああ!》を当曲の最高音に据え、同時に最強音に据えています。

ピアニシモとピアノが基調の静まった歌曲で 《ああ!》に加えられたフォルテの痛々しさ。

フォーレが前詩句を後フレーズ位置に持ってきた形は、《ああ!》を最も切なく歌い上げる最良の形に思えます。


*"夢のあとに" 落合訳

*"月の光" 落合訳
関連記事 *月の光とリュート
       *月の光のメヌエット
       *月の光と諦念
       *月の光に溶けて消える
       *月の光と母性
       *フォーレ "月の光"

*"イスパーンの薔薇" 落合訳

*"トスカーナのセレナード" 落合訳
関連記事*トスカーナの目覚めと眠り
      *トスカーナの気配
      *フォーレ "トスカーナのセレナード"
      *トスカーナに憑かれて
      *フランス気質と音さがし

*"墓地にて" 落合訳
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*"クリメーヌに" 落合訳
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*"ロマンス" 落合訳

*"水のほとりに" 落合訳
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*"リディア" 落合訳
*"この世にて" 落合訳
*"ゆりかご" 落合訳
*"漁夫の悲歌" 落合訳
*"水に浮かぶ花" 落合訳

*"森の鳩" 落合訳
関連記事*シルヴィーの鳩とたんぽぽ



「夢のあとに」落合訳

July 02, 2011

アールグレイの

冷たいゼリーを作った。


とっても悩んだ "夢のあとに" ・・・やはり訳してみることにした。

        《夢のあとに》

                  ロマン・ビュッシーヌ編
                  落合訳

    まどろみに見た 麗しの君が姿
    幻影は燃立ち 幸福な夢想に耽る
    まなざしは甘やかに 声音の澄みて
    君は暁の空のごと きらめく

    君が僕を呼び、僕は地を駆る
    明るみへ 君ともにゆこうと。

    天は僕たちに雲間を開き、
       秘めたる眩いばかりの・・・

    恩寵を鑑(み)せたはずだった、ああ!
    ああ、夢の目覚めの悲しさよ。
    夜よ、あの幻を返しておくれ。
    戻ってきておくれ。
       戻ってきておくれ輝きよ。
    戻れ幻想の夢よ。

**


迷った理由は 詩歌に長けたお方が今 "あら・・・?" って思っていらっしゃる通りのコト。そう、ほかでお目にされる訳詩とセンテンスと改行にズレができるのを否めない事。

ビュッシーヌ訳編 "夢のあとに" じゃあなくってフォーレ作曲 "夢のあとに" の楽曲訳的役割を重視すれば 行に誤差が出る珍しいパターン。詩に大層敏感で忠実な扱いをするフォーレは、特に初期作品には此のような現象は少ない気がするのですが・・・

マリアンヌ・ヴィアルドに婚約破棄をされ打ち沈んだ年若いフォーレ。心の吐露のように作曲した歌曲は、私的な作品として、フォーレにとって他作品と異なる意味合いを持ったのかもしれませんね・・・

**


一等迷ったのは詩の前半をどんな角度から語るかでした。
伝承詩のビュッシーヌ訳を読む限りは、幸せな第1,2パラグラフと 夢だったと悲しみに暮れる第3パラグラフに分けることもできます。

けれども最初から嘆きの6打音を響かせるフォーレを代弁するとしたら、やはり冒頭も目覚めのあとの(夢のあとの) 悲しみの気配をもって訳すのが相応しく思えました・・・

続きのお話はまた今度ネ!

       《Après un rêve 》

                 Romain Bussine

Dans un sommeil que charmait ton image
Je rêvais le bonheur, ardent mirage,
Tes yeux étaient plus doux, ta voix pure et sonore,
Tu rayonnais comme un ciel éclairé par l'aurore;

Tu m'appelais et je quittais la terre
Pour m'enfuir avec toi vers la lumière,
Les cieux pour nous entr'ouvraient leurs nues,
Splendeurs inconnues, lueurs divines entrevues;

Hélas! Hélas! triste réveil des songes,
Je t'appelle, ô nuit, rends-mois tes mensonges,
Reviens, reviens radieuse,
Reviens, ô nuit mystérieuse!


*"月の光" 落合訳
関連記事 *月の光とリュート
       *月の光のメヌエット
       *月の光と諦念
       *月の光に溶けて消える
       *月の光と母性
       *フォーレ "月の光"

*"イスパーンの薔薇" 落合訳

*"トスカーナのセレナード" 落合訳
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      *トスカーナの気配
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月の光に溶けて消える

May 21, 2011

確か2歳くらい。

お初にクロスを贈られた。


当時から大好きでいまだ大切にしてる此の色合いは、自分のなかでヴェルレーヌ "フェットゥ・ギャラント" の景色に近い気がしてる。
月の光の続きのお話です。

拙訳では月の光をあらゆる心情のアイロニーに捉えたのでした。
せんに書きました月とピエロの関係を下敷きにした考えでもあって・・・

  *象徴(1)月とピエロ

ピエロのような役割と心情の二重性に被せてみたくなった。たとえば

リュート響かせ舞い遊ぶ
気まぐれな仮装の陰に憂う

Tristes sous leurs deguisements fantasques.
仮装の下に、が直訳ですけれど 全編見姿と心の陰の対比が歌われる中では、仮装の陰としたかった。

私観は、上述対比の橋渡しになるのが、リュートの音色であり 短調の旋律であるってことなんです。

     《歌いさざめく》のじゃなくてリュートを響かせ
     《鼻歌にうたう》のじゃなくて短調を奏でる。

ヴェルレーヌがピンポイントに使った言葉は、詩の物悲しさをより増している気がして。

**

同書収録 "パントマイム" "コロンビーヌ" と並んで魔術的な映像世界をイメージさせる詩でありつつも、だからこそ魔術的イメージに置かれた人間の悲哀を強く感じてしまうのでした。

おかしな仕業かもしれないけれど、詩世界の人物を1人の人間として取り出したくなったの。

其うして彼らの音楽も 彼らのbonheurの望みも、彼らとともに月の光に溶けて消える。

センチメンタルが過ぎるでしょうか・・・

  フォーレ "月の光" お初のお披露目は6月24日PJにて。


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       *フォーレ "月の光"



チャボ君の裏方

May 16, 2011

今夜はノベルティー君の

ソプラノサックス伴奏です。


会員様用のコンサートだから宣伝はなしネ。
皆様にお出会いできますのは、6月24日PJですヨ。

**


せんだっての本番5月3日のお話をいたしましょう。
裏方さんはチャボ君でした。

前にチャボ君に会ったことがあるの・・・ 拙宅ピアノのソステヌートペダルの調子がおかしくなった時。調律師Mr.Bを呼び出したらば、人手が要り用とかで一緒に来てくれたのがチャボ君。

・・・なのですって。私は自分のピアノのソステヌートが壊れた記憶さえないの。暗譜はなんとか入るけれど、きっと記憶構造が変なのね。なんにも憶えていないのよ。

Mr.Bが仰った。私はダイニングルームでMr.Bとチャボ君にケーキをお出ししてご一緒したって・・・ 
上がっていただいてお茶とお菓子をお出ししたらば常識的には記憶に残る筈だのに、ペダル事件さえ全く白紙。

"ねぇ、それって本当にうちのお話?
私のピアノ、ペダル壊れたことあるの? "


怪しすぎる科白にMr.B茫然。

**


余程頭が悪いのかもしれないワ。
病気レベルね・・・


どうしようもない私相手にチャボ君は本当によく務めてくれました。
良いコンサートにしようって気持ちが、細やかな実務以上にとっても心に響いた。

裏方さんはお勤め事項がお山ほどもある。皆までこなして自主的に色んな工夫をしてくれていました。

リハーサル前、ロープウェイ試運転の時刻に一緒に乗ったゴンドラの中。チャボ君が鞄から取り出したのは会場見取り図。数あるドア位置を予め印刷してあって、締切り場所の確認から始まったワ。

回廊形式でお人の出入りを止めるのが難しい朝のホールでは、リハーサル中の立ち入り禁止札を持参してくれ貼りに走ってくれた。

ペットボトルのお茶用紙コップまで前日に買っておいてくれて、楽屋では 側で静かに良い時間を与えてくれた。

押付けのない奥ゆかしい心配り。チャボ君を目にしてるだけで、緊張でひりひりする気持ちが和らいだ。

コンサートは此んな方々のお陰で作られています。
感謝の気持ちに添えてワインなんて贈ってみる。

素敵な裏方さんに出会えて本当に嬉しかったナ。

   違ったわね、
       出会ったのは数年前なのネ。



「月の光」落合訳

May 12, 2011

体調不良。

加減の悪さで目を覚ました。


眩暈で冷や汗が出て、横になっても起き上がっても どの道気持ち悪い。ならば、と枕元のヴェルレーヌを訳した。

《月の光》

                   ポール・ヴェルレーヌ
                   落合訳

極彩色の汝(な)が心
仮面舞踏の妖惑(ようわく)よ
リュート響かせ舞い遊ぶ
気まぐれな仮装の陰に憂う

短調の旋べにのせる
恋の勝利と世の好機
安らぎを頼らぬ歌は
月の光に溶けて消える

梢の鳥に夢を見せ
滑(なめ)石の彫像いだく噴泉を
恍惚の嗚咽に誘う
悲しくも
艶(なまめ)かしき月の光に

**

既に堀口大學様が異なった感覚で訳されているけれど、楽曲訳として新たに試みたくなった。詩に触れるうち、予期せぬほど感情移入した。

楽曲が作曲家のものでありながらも仲介者としての演奏家の視点が外せないように、此の訳も私の個人的感覚でしかないけれど・・・

堀口大學様は第1パラグラフを此うと訳された。

   そなたの心はけざやかな景色のようだ、そこに
   見なれぬ仮面(マスク)して仮装舞踏のかえるさを、
   歌いさざめいて人々行くが
   彼らの心とてさして陽気でないらしい。

私は以降のパラグラフも含め "彼ら" の人称代名詞を外しています。訳上では1行目の "そなた" が2行目以降の主語にさえ読み取れる場合もある。それも目的に含めた試みです。

理由の第一は原詩のvotreは背景のロココ世界から離れた特定人物を指すと限定し辛いこと。

第二には18世紀王朝を基の風景におき、ベルガマスク(堀口様訳上での仮装舞踏)の名の通りイタリア劇の登場人物が点在する景色 --- 月の光の他にもヴェルレーヌ詩には 此んな場面が数ありますね --- の中の出来事ということ・・・

それぞれの心模様が現れると同時に、月の光が王朝風俗を照らし吸い取る1枚のタブローとして捉えました。その場合人称詳細を分けるより、個人じゃなくて共通した仮面の下の悲しみの赴きを重視しました。

此の曲のソロパートとピアノパートの絡みが、どちらがメロディーというのじゃなく溶け合うことでタブローになる如くに詩を捉えました。其れがフォーレのアプローチに近い気がして・・・

続きはまた今度ネ!
明日合わせだから何とか譜読みを仕上げましょう。

《Clair de Lune》

                Paul Verlaine

Votre âme est un paysage choisi
Que vont charmants masques et bergamasques
Jouant du luth et dansant et quasi
Tristes sous leurs deguisements fantasques.

Tout en chantant sur le mode mineur
L'amour vainqueur et la vie opportune,
Ils n'ont pas l'air de croire a leur bonheur
Et leur chanson se mele au clair de lune,

Au calme clair de lune triste et beau,
Qui fait rêver les oiseaux dans les arbres
Et sangloter d'extase les jets d'eau,
Les grands jets d'eau sveltes parmi les marbres.


*フォーレ "月の光"

*"イスパーンの薔薇" 落合訳

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「イスパーンの薔薇」落合訳

April 11, 2011

果物のコンフィチュールをくださったのは


ふわふわの髪をした とっても愛らしい女の子。内気そうな仕草、はにかんだ笑顔、一生懸命な瞳。プティクロのsuzu様に甘く可愛い瓶詰めを頂いた日、イスパーンの薔薇を訳したくなった。

甘い香りがする詩だからかな・・・
19世紀詩人ルコント・ド・リールをフォーレが甘美な楽曲で彩った。

ソロの通し練習前に自主訳してみますね。

《イスパーンの薔薇》

               ルコント・ド・リール
                       落合訳 (歌曲箇所のみのVer.)

白きレイラ、
苔におおわれ花ひらく イスパーンの薔薇
モッスルのジャスミン オレンジの花々
あなたの軽い吐息ほど 涼やかに甘く香るにあらず

珊瑚の唇、軽やかに笑う音色(ねいろ)
せせらぎの水よりも
オレンジの枝ゆらす明るいそよ風よりも
苔むす棲家にさえずる鳥よりも優し

レイラ、ふと逃げ去ったあなたの
甘やかな唇失なった日から
オレンジは淡く薫らず
苔中の薔薇たちは 天上の香なくし

ああ軽やかな蝶のごとき若い情
小さな羽で私の元へ戻ってきたら
オレンジの花の香りが
苔に覆われたイスパーンの薔薇の香が
戻ってきたら・・・
今ひとたび

**

フォーレは全文を用いず上のように第3、第5パラグラフを省略しています。全文は以下に訳しました。

《イスパーンの薔薇》

               ルコント・ド・リール
        落合訳

白きレイラ、
苔におおわれ花ひらく イスパーンの薔薇
モッスルのジャスミン オレンジの花々
あなたの軽い吐息ほど 涼やかに甘く香るにあらず

珊瑚の唇、軽やかに笑う音色(ねいろ)
せせらぎの水よりも
オレンジの枝ゆらす明るいそよ風よりも
苔むす棲家にさえずる鳥よりも優し

けれどレイラ、
苔の下の薔薇の香
オレンジの枝にそよぐ微風
泉わき出す密かな呻きは
あなたの脆い愛より 確かな喜悦

レイラ、ふと逃げ去ったあなたの
甘やかな唇失なった日から
オレンジは淡く薫らず
苔中の薔薇たちは 天上の香なくし

薔薇に、オレンジの枝に、歌わぬ鳥は
濡れた綿毛と苔の中とどまり
庭の泉は優しげな歌を止めて
澄んだ空は 朝焼けに輝かず

ああ軽やかな蝶のごとき若い情
小さな羽で私の元へ戻ってきたら
オレンジの花の香りが
苔に覆われたイスパーンの薔薇の香が
戻ってきたら・・・
今ひとたび

**

本日いつにも増してよぼよぼ訳の結果になった理由を、全文版を用いてお話ししますネ・・・
(ブログ新バージョンの仕様にアクソンが出ぬまま)

まずは各パラグラフ最尾の下線部をご覧下さいナ。
mousseとlegerが代わる代わるに出現するのを "ず(つ)" と "し(び)" の音を交互に使って表したくなったんです。

**

Les roses d'Ispahan dans leur gaîne de mousse,
Le jasmins de Mossoul,les fleurs de l'oranger,
Ont un parfum moins frais,ont une odeur moins douce,
O blanche Leïlah! que ton souffle léger.
白きレイラ、
苔におおわれ花ひらく イスパーンの薔薇
モッスルのジャスミン オレンジの花々
あなたの軽い吐息ほど 涼やかに甘く香るに
あらず


Ta lèvre est de corail et ton rire léger
Sonne mieux que l'eau vive et d'une voix plus douce.
Mieux que le vent joyeux qui berce l'oranger,
Mieux que l'oiseau qui chante au bord d'un nid de mousse.
珊瑚の唇、軽やかに笑う音色(ねいろ)
せせらぎの水よりも
オレンジの枝ゆらす明るいそよ風よりも
苔むす棲家にさえずる鳥よりも
優し


Mais le subtile odeur des roses dans leur mousse
La brise qui se joue autour de l'oranger
Et l'eau vive qui flue avec sa plainte douce
Ont un charme plus sûr que ton amour léger!
けれどレイラ、
苔の下の薔薇の香
オレンジの枝にそよぐ微風
泉わき出す密かな呻きは
あなたの脆い愛より 確かな
喜悦


O Leïlah! depuis que de leur vol léger
Tous les baisers ont fui de ta lèvre si douce
Il n'est plus de parfum dans le pâle oranger,
Ni de céleste arome aux roses dans leur mousse.
レイラ、ふと逃げ去ったあなたの
甘やかな唇失なった日から
オレンジは淡く薫らず
苔中の薔薇たちは 天上の香
なくし


L'oiseau,sur le duvet humide et sur la mousse,
Ne chante plus parmi la rose et l'oranger;
L'eau vive des jardins n'a plus de chanson douce.
L'aube ne dore plus le ciel pur et léger.
薔薇に、オレンジの枝に、歌わぬ鳥は
濡れた綿毛と苔の中とどまり
庭の泉は優しげな歌を止めて
澄んだ空は 朝焼けに
輝かず


Oh! que ton jeune amour ce papillon léger
Revienne vers mon coeur d'une aile prompte et douce.
Et qu'il parfume encor la fleur de l'oranger,
Les roses d'Ispahan dans leur gaine de mousse.
ああ軽やかな蝶のごとき若い情
小さな羽で私の元へ戻ってきたら
オレンジの花の香りが
苔に覆われたイスパーンの薔薇の香が
戻ってきたら・・・
ひとたび

**

次に各パラグラフ1行目のお尻尾をご覧くださいネ。
最尾mousseとlegerが逆になってleger --- mousseの順で交互に表れています。
此方は "あ" と "お" の交代でまとめました。

こんな細工をしたいがために、今回特に訳はよれてしまいましたが・・・
フォーレの音づかいに照らすと、必要なことに思えたの・・・

**

Les roses d'Ispahan dans leur gaine de mousse,
Le jasmins de Mossoul,les fleurs de l'oranger,
Ont un parfum moins frais,ont une odeur moins douce,
O blanche Leilah! que ton souffle leger.
白き
レイラ、≪a≫
苔におおわれ花ひらく イスパーンの薔薇
モッスルのジャスミン オレンジの花々
あなたの軽い吐息ほど 涼やかに甘く香るに
あらず


Ta levre est de corail et ton rire leger
Sonne mieux que l'eau vive et d'une voix plus douce.
Mieux que le vent joyeux qui berce l'oranger,
Mieux que l'oiseau qui chante au bord d'un nid de mousse.
珊瑚の唇、軽やかに笑う
音色(ねいろ)≪o≫
せせらぎの水よりも
オレンジの枝ゆらす明るいそよ風よりも
苔むす棲家にさえずる鳥よりも
優し


Mais le subtile odeur des roses dans leur mousse,
La brise qui se joue autour de l'oranger
Et l'eau vive qui flue avec sa plainte douce
Ont un charme plus sur que ton amour leger!
けれど
レイラ、≪a≫
苔の下の薔薇の香
オレンジの枝にそよぐ微風
泉わき出す密かな呻きは
あなたの脆い愛より 確かな
喜悦


O Leilah! depuis que de leur vol leger
Tous les baisers ont fui de ta levre si douce
Il n'est plus de parfum dans le pale oranger,
Ni de celeste arome aux roses dans leur mousse.
レイラ、ふと逃げ去った
あなたの≪o≫
甘やかな唇失なった日から
オレンジは淡く薫らず
苔中の薔薇たちは 天上の香
なくし


L'oiseau,sur le duvet humide et sur la mousse,
Ne chante plus parmi la rose et l'oranger;
L'eau vive des jardins n'a plus de chanson douce.
L'aube ne dore plus le ciel pur et leger.
薔薇に、オレンジの枝に、歌わぬ
鳥は≪a≫
濡れた綿毛と苔の中とどまり
庭の泉は優しげな歌を止めて
澄んだ空は 朝焼けに
輝かず


Oh! que ton jeune amour ce papillon leger
Revienne vers mon coeur d'une aile prompte et douce.
Et qu'il parfume encor la fleur de l'oranger,
Les roses d'Ispahan dans leur gaîne de mousse.
ああ軽やかな蝶のごとき若い
情≪o≫
小さな羽で私の元へ戻ってきたら
オレンジの花の香りが
苔に覆われたイスパーンの薔薇の香が
戻ってきたら・・・
ひとたび

**

楽曲のお話など続きはまた今度ネ!
ソロライブまであと10日。おさらい頑張ってきますネ・・・♪


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「ゆりかご」落合訳

March 10, 2011

初見で譜面を覗いてアレ? って言い合った。


ピアノ譜面台に置かれたのはフォーレ歌曲 "ゆりかご"。

赤ちゃんをあやす揺りかごだのに、どうしてmollなんでしょうね? って話した。お初に見る楽譜を覗き込んで、んんん?? って首を傾げた。

音を出してみれば やはり悲しい曲調で・・・ 遅いテンポで心の痛みを歌うようなメロディーの意味は、詩を読んでわかった。


《ゆりかご》

              シュリ・プリュドム
        落合訳

遥か長く 船を連ね
うねり浅く 凪いで揺れて
女の手が 揺らす籠の
無きが如く 続く埠頭

やがて来たる とわの別れ
女たちが 泣いて縋る
男たちは 海と空の
極み求め 碇上げる

港遠く 過ぎて霞む
船が岸を 離れゆく日
心引くは 去った丘に
残してきた 揺りかご


《Les berceaux》

                   Sully Prudhomme

Le long du Quai,les grands vaisseaux,
Que la houle incline en silence,
Ne prennent pas garde aux berceaux,
Que la main des femmes balance.

Mais viendra le jour des adieux,
Car il faut que les femmes pleurent,
Et que les hommes curieux
Tentent les horizons qui leurrent!

Et ce jour-là les grands vaisseaux,
Fuyant le port qui diminue,
Sentent leur masse retenue
Par l'âme des lointains berceaux.


**


陸への心残りと後悔をうたうようなアンダンテ8分の12拍子。
拍子感とフレージングが入った身体には、3音ずつの4つ打ちに訳すことしか考えられなかった。

bmollという調のガサッとした音の質感は、波のリズムに乗せて少々粗野な空気を孕んだ言葉が似合う気がした。

訳は今回大きく意訳をしています。

例えば
  Et que les hommes curieux
  Tentent les horizons qui leurrent
の2行を直訳すれば、
《好奇心強い男たちは水平線に呼び返されて験してみたくなる(=船出をする) 》
という感じですが、

水平線を海と空の境にし、また海と空の際を極みと置き換えることで、挑戦したくなる好奇心を含みました。

  男たちは 海と空の
  極み求め 碇上げる

と、あくまでもフォーレ歌曲に沿った8分の12拍子で訳したかったのです。


**


今訳しながら楽譜を手に取っています。演奏上はお尻尾の部分に興味あるナ。

ソロパートが1小節半長くのばすB音をディミヌエンドをしないで、最後をふっと消すだけにしてはどうかしらね? 試してみたいナ。船の汽笛のようなラストを・・・

ピアノパートもリタルダンドを殆どかけない演奏を 次回合わせで弾いてみたい。何故って、引き止められそうな心に反して港は同じ速度で遠ざかり、最後に見えなくなるのだもの。

詩情を映してゆきたい曲ですネ。
訳はよぼよぼですが、発想の意味だけ記しました。

写真は平義久作品の室内オケのときのパンフです。


*"墓地にて" 落合訳
*"クリメーヌに" 落合訳
*アヴェ・マリス・ステラ
*"ロマンス" 落合訳
*"水のほとりに" 落合訳
*サンピエトロ、体と遺骨
*"リディア" 落合訳
*"この世にて" 落合訳
*"漁夫の悲歌" 落合訳



「墓地にて」落合訳

March 04, 2011

優しい詩と感じるかたもいらっしゃるでしょう。


和やかな墓地の幸いを歌ってて・・・。海に死した者に比べ、光に包まれたお墓の優しさが書かれてるから。

フォーレの曲はまったく違ってる。ドゥーブルピアノから3小節でモルト・クレッシェンドをしてフォルテへ登るのが第3パラグラフ海の箇所。

緊張度高いハーモニーとアンダンテのテンポに守られたまま掬い上げるように切迫する3連符・・・ 唱したいのは此の部分じゃないかしら。

幸せな葬儀を終えた人より、心にあるのは海で亡くなった人だった。
遺体上がらぬまま海に残る人への激情が、穏やかなお墓を見たとき甦った。今も水底にあって弔われることない人を歌った・・・
其んな風に思える楽曲でした。

だから曲に沿って此んな形に訳してみました。


《墓地にて》

                    ジャン・リシュパン
             落合訳

此処に死せる者は幸いなり
野の鳥のごとく 友の傍
香り草と歌声に なきがら包まれて
金いろの夢の中 ゆるやかに眠る
陽光のもと友が集い 
永の別れを告げる

親たちは跪き 十字架に涙を零す
遺骨は花々の下 やさしい涙に湿る
黒い森にやってくる誰もが
逝去の年を知り
死を悼み 名を呼ぶのだ

海に死す者がどれ程に残酷か
海原の底深く
故里を遠くに離れ
ああなんと惨い!
蒼の藻だけをまとい
誰にも知られず裸で揺られてる
大きく眼開いたまま!

此処に死せる者は幸いなり
野の鳥のごとく 友の傍
香り草と歌声に なきがら包まれて
■金いろの夢の中 ゆるやかに眠る
陽光のもと友が集い 
永の別れを告げる■


《Au cimetière》

                     Jean Richepin

Heureux qui meurt ici
Ainsi
Que les oiseaux des champs !
Son corps, près des amis
Est mis
Dans l’herbe et dans les chants.

Il dort d’un bon sommeil
Vermeil,
Sous le ciel radieux.
Tous ceux qu’il a connus,
Venus,
Lui font de longs adieux.

À sa croix les parents
Pleurants,
Restent agenouillés ;
Et ses os, sous les fleurs,
De pleurs
Sont doucement mouillés.

Chacun, sur le bois noir,
Peut voir
S’il était jeune ou non,
Et peut avec de vrais
Regrets
L’appeler par son nom.

Combien plus malchanceux
Sont ceux
Qui meurent à la mé,
Et sous le flot profond
S’en vont
Loin du pays aimé !

Ah ! pauvres, qui pour seuls
Linceuls
Ont les goémons verts
Où l’on roule inconnu,
Tout nu,
Et les yeux grands ouverts.

Heureux qui meurt ici
Ainsi
Que les oiseaux des champs !
Son corps près des amis
Est mis
Dans l’herbe et dans les chants.


訳の一考を・・・

第2パラグラフ冒頭に情景の意訳があります。

直訳ですと十字架に向かって涙を流して其の前に跪く、となります。此う訳せば図としてはお墓に立てられた十字架を見つめ十字の許に跪く格好ですね。

《跪き 十字架に涙を零す》にしたのは、埋葬のシーンとも捉えられるためです。前者ですと既に遺体を葬った上に立てられた十字架になりますが、後者は横型。棺の中で遺体が手にした十字や棺の蓋に刻まれた十字があり得ます。

此の詩の【時】を考えれば、別れを告げる時間・・・つまりまだ棺は完全に埋められていないように思えたのです。À sa croix 彼の十字架に、とありますから 埋葬後神への祈りの跪きよりは、息子との最後の別れに物理的に膝を折った図に絡めました。

次に単語です。
第1パラグラフ vermeil は不思議な言葉で、深紅を表す場合と金色を表す場合があるんです。情景から判断して金いろの眠りを選んでいます。


**


楽曲に戻ります。

激化した展開部を終えるとフォルテシモから僅か1小節の急激なディミヌエンドでピアニシモに戻る再現部。提示部が戻る格好よりも一層うなだれたトリプルピアノで奏したいナって思ってる・・・

理由はね、冒頭に述べた処へ・・・
海に残った人への強い情と設定した部分です。

Peut voir S’il était jeune ou non,
私は "逝去の年を知り" って訳しましたところの直訳は "彼が若い人だったか そうでないかを見ることができて" です。詩だのに唐突でしょう?

リシュパンは何のコトを言ってるの? って思うでしょう? お墓に刻まれる生年と没年のことですね。それは海底の遺体には決して望めないこと・・・ もっと申せば藻の絡まった水死体は "若い人だったかどうか" さえ判別できなくなっている・・・

とても重く暗い歌だと思うんです。
だからお墓の前で 君は幸せだ、って・・・

手持ちのコピーの版がもし正しければ 原詩は■の前までになります。■印に挟まれたところはフォーレが提示部から持ってきた箇所。

先日初見で弾いてとっても気に入った曲なので訳してみましたヨ。

*"クリメーヌに" 落合訳
*"ロマンス" 落合訳
*"水のほとりに" 落合訳
*サンピエトロ、体と遺骨
*"リディア" 落合訳
*"この世にて" 落合訳
*"漁夫の悲歌" 落合訳



「クリメーヌに」落合訳

March 01, 2011

パリで求めたガラスの細工。

詩の中の女性に似合いそう・・・


 《クリメーヌに》

                     ポール・ヴェルレーヌ
            落合訳

夢まぼろしの舟歌の
ことのはも無きロマンスの
愛し瞳の 天の色

君が妙なる囁きに
惑い乱れし我が胸の
あはれ眺めも眩むごと

君が姿の青白き
けがれ知らずや白鳥の 
薫る御(み)肌の匂やかに

ああ君ありき!
楽の音の染み入りてなお 
消え去りし天使の煌き
御身の総て音と香の

やさし韻律
響き鳴り交う やるせなさ
囚えられし我が心
アーメン


 《A Clymène》

                     Paul Verlaine

Mystiques barcarolles,
Romances sans paroles,
Chère, puisque tes yeux,
Couleur des cieux,

Puisque ta voix, étrange
Vision qui dérange
Et trouble l’horizon
De ma raison,

Puisque l’arôme insigne
De ta pâleur de cygne
Et puisque la candeur
De ton odeur,

Ah! puisque tout ton être,
Musique qui pénètre,
Nimbes d’anges défunts,
Tons et parfums.

Azur d’almes cadences
En ses correspondances,
Induit mon coeur subtil,
Ainsi soit-il!


**


ヴェルレーヌ詩 "クリメーヌに" は既に堀口大學様の名訳があります。新たに訳詩を加えるなんて、ほんとうなら許されないワ。

大學様はとても文学的に訳された。

  思わせぶりな舟うたよ、
  文言(もんごん)のない恋歌よ、
  よき人よ、空のいろ
  君がひとみ、

フォーレ歌曲 "クリメーヌに" は、弱く細い音ではじまるドルチェ・エスプレッシーヴォ。美しいクリメーヌその人をうたったように線が細くなよやかな旋律なのです。

楽曲訳だったらば、大學様は男性的な調子が強い気がしたの・・・
だからフォーレに照らして冒険です。

興味深いことにパラフレーズが拍子替わりのダブルバーを越えてくるのヨ。次のパラグラフである部分に、前のパラフレーズが重なってくる・・・ それら少し考慮して訳してみましたヨ。

よぼよぼ訳シリーズ、なんだか続いちゃってます・・・
自分たちで選曲をして自分たちがコンサートで弾く曲は やっぱり自分で訳して理解するのが楽しいカナ・・・ってだけの理由なんです。

フォーレに大盛り上がりの変態さんオタク・アマチュアは、嬉しがって此んな遊びもしちゃいます。

*"ロマンス" 落合訳
*"水のほとりに" 落合訳
*サンピエトロ、体と遺骨
*"リディア" 落合訳
*「この世にて」落合訳
*"漁夫の悲歌" 落合訳




「漁夫の悲歌」落合訳

February 25, 2011

プロコフィエフの音はおよそ頭に入った。


でもまだ身体には入ってない。身体に音が染み込むまで、同じ練習を続けましょう。

今朝は悲しい訳詩です。フォーレ歌曲ゴーティエの詩。


《漁夫の悲歌》

                 テオフィル・ゴーティエ
        落合訳

愛するひとは死にました
落涙は絶える間もなく
恋の想いと魂は
墓の下へと奪われた
私を待たず天へ帰った
あのひとだけを連れ去る天使
私は終(つい)ぞ呼ばれなかった
無残に朽ちた運命に
ああ、愛を失い 愛を失い 海へ出る

白い艶肌 棺に眠る
世の一切は喪に服す
取り残された白い鳩
置き去りにされ泣いている
つがい失くした魂咽ぶ
無残に朽ちた運命に
ああ、愛を失い 愛を失い 海へ出る

果てしなく広がる夜は
弔いの衣(きぬ)下ろす如
私が歌う恋歌を ただ空だけが聴いている
ああ、美しいあのひとを
どれほどまでに愛したか
あの慈しみは二度とない
無残に朽ちた運命に
ああ、愛を失い 愛を失い 海へ出る


《Chanson du pêcheur (Lamento)》

          Theophile Gautier

Ma belle amie est morte,
Je pleurerai toujours;
Sous la tombe elle emporte
Mon âme et mes amours.
Dans le ciel,sans m'attendre,
Elle s'en retourna;
L'ange qui l'emmena
Ne voulut pas me prendre.
Que mon sort es amer!
Ah! ■sans amour■ s'en aller sur la mer!

La blanche créature
Est couchée au cercueil;
Comme dans la nature
Tout me paraît en deuil!
La colombe oubliée
Pleure et songe a l'absent;
Mon âme pleure et sent
Qu'elle est dépareillée.
Que mon sort est amer!
Ah! ■sans amour■ s'en aller sur la mer!

Sur moi la nuit immense
S'éten d comme un linceul,
Je chante ma romance
Que le ciel entend seul.
Ah! comme elle était belle,
Et comme je l'aimais!
Je n'aimerai jamais
Une femme autant qu'elle
Que mon sort est amer!
Ah! ■sans amour■ s'en aller sur la mer!


今日の訳は色々なところで冒険をしています。
最も大きな冒険は文体でした。

此の詩の訳でほぼ定まってあるのは、"俺" などの一人称と "しちまった" 他紋きり調も多い話言葉。おそらくは漁師さんってご職業柄の表し方なのでしょうね?

私のは訳詩じゃなく楽曲訳です。フォーレの16分音符の波の中に浮かんで沈む慟哭。日常に使うだろう推測の話言葉を 其のままお引越しさせるのが相応しいと感じられませんでした。

お話の言葉は環境から身につくことが多くって・・・だから漁師さんなら海の言葉で話すべき? いいえ。もっとも大きな悲しみの底、心の一番柔らかい部分に隠れてる言葉は違うもので良いんじゃあないかしら。

絶望を語るのは俺やオイラじゃなくて、あえて "私" の1人称にしました。そして彼が口にしたことじゃなくて、日常口許にはのぼらないだろう言葉をあえて使ったの。何故ってね・・・

彼がお友達に話すなら、気持ちまでをお墓の下へ "持ってっちまった" となるかもしれない。けれどもその《思い》はもっともっとウエットな言葉が相応しいと思うから・・・

素人だからこそできる冒険かもしれないですね。


**


次にタイトルです。Lamento は通常記されるように哀歌のほうが忠実な直訳だと思います。私の日本語感覚の範囲での考えなのだけど、哀歌は時間経過ののち本人のなかでこなれた哀しみのように感じてしまったの。

悲歌とするほうがナマの嘆きが一層ダイレクトな気がしたのヨ。

■印の間はね、フォーレがリピートにとった部分です。"愛のないまま海へ行かなければならないのか" って箇所はフォーレ歌曲に沿って "愛を失い 愛を失い" とリピートしました。


**


リディアで白鳩を清い乙女に訳した理由を記しましたけれども、第2パラグラフの此処こそは白い鳩のままの訳になりますね。

第3パラグラフは少し考えました・・・ un linceul は意味範囲が広い言葉で、夜の帳ともいえますし通例として死装束とも置かれます。その場合やはり文化背景が気になるところ。

死装束と読むとき経帷子など、死者に着せ掛けるものをどうしても連想するでしょう。ゴーティエのお国で漢文字を記された浄衣を纏わない以上、前者のように夜の帳のほうを選んで暗い垂れ布を表す意味に弔いの衣としましたよ。

なんとなく増えてくよぼよぼ訳。目的はピアノ室で進んでる曲合わせの題材に過ぎません。


**


今朝はドビュッシーを作り直してみたい。

*「この世にて」落合訳
*"ロマンス" 落合訳
*"水のほとりに" 落合訳
*サンピエトロ、体と遺骨
*"リディア" 落合訳



「リディア」落合訳

February 20, 2011

フォーレがマイブームだから・・・

今朝もひとつ拙い訳を


《リディア》

                      ルコント・ド・リール
               落合訳

リディア、君の薔薇の頬に 瑞々しい白きうなじに
ほどいた髪が黄金色に煌き流れる

輝く時の眩(まばゆ)さよ
やがて来たる死を忘れ
どうか君のくちづけを、花の如き唇で 花の如き唇で
清き乙女のくちづけを

密なる百合は
君の乳房に絶え間なく甘美な香を零し
若き女神よ、君から涌き出でる
悦楽の波にのまれる

くちづけられた魂は歓喜に震え
愛しの人よ、君を愛して果てる

ああリディア、僕の命を返しておくれ
とめどなく此うして息絶えられるように


《Lydia》

             Leconte de Lisle

Lydia sur tes roses joues
Et sur ton col frais et si blanc,
Roule étincelant
L'or fluide que tu dénoues;

Le jour qui luit est le meilleur,
Oublions l'éternelle tombe.
Laisse les baisers, tes baisers de colombe
Chanter sur ta lèvre en fleur, sur ta lèvre en fleur

Un lys caché répand sans cesse
Une odeur divine en ton sein;
Les délices comme un essaim
Sortent de toi, jeune déesse.

Je t'aime et meurs, ô mes amours.
Mon âme en baisers m'est ravie!
O Lydia, rends-moi la vie,
Que je puisse mourir toujours!


**


はじめに僅かな注釈を・・・

tes baisers de colombe が "貴女の白鳩のキス" "鳩のようなキス" ってそのまま訳されることが多いのネ。私は考えが違ってて、tes purs baisers と同義に訳しました。

白鳩 la colombe はカトリック世界で聖霊の清澄 la pureté du Saint-Esprit の象徴または平和と純真 la simplicité de la paix の象徴ですものネ。

転じて l'accomplissement amoureux et celui de l'âme 愛の達成・魂の実現の形でも歌われます。

男女間の愛では白鳩の羽の汚点なき清浄さ Blancheur immaculée とともに、クルルって鳴く柔らかな声を、甘くやるせない囁き douceur de son roucoulement に置くことができるから・・・

背景を踏まえ緩い示唆として "清き乙女のくちづけ" と致しました。


**


また、拙訳では煽情の言葉を覆い隠さぬほうを選びました。

リディア内フォーレの音選抜は興味深くって・・・ 僅か数小節でバロックの音がした。19世紀に古典主題を扱った高踏派の一種古代嗜好的な部分を顕著に保つ楽想で・・・

古典趣味としてあえて性の内容を表す訳を試しましたヨ。

繰り返される "花の如き唇で 花の如き唇で" は2度目に緩やかなリタルダンドが。同じ旋律 "とめどなく此うして息絶えられるように" では
リットが1小節繰り上がり豊かなディミヌエンドの弱音で果てるように・・・

楽曲に則ってまいれば如何にしても官能要素は消せず。また高踏派の特徴でもあるロマン主義とは大きく異なるところを踏まえて・・・

つまり感情吐露を忌むコント・ド・リール詩では、字面上は心を綴る風に見えようとも、ロマン主義風訳に留まるのは避けたくなったのでした。

官能を中心に扱えば1つの感情達成としてロマン的吐露とは異なるのじゃあないかしらって・・・。フォーレのバロック調の4拍子の刻みに反ロマン主義的考えを後押しされた試み。


**


文学もフランス語も専門じゃない私なんかの訳は、もちろん訳詩としてご参考にもなりません。フォーレ歌曲のベースとして験しましたヨ。

*「この世にて」落合訳
*"ロマンス" 落合訳
*"水のほとりに" 落合訳
*サンピエトロ、体と遺骨



限界

February 18, 2011

コンサートのチョーカー

此れがいいカナ・・・って眺めた。


首元に当てるとひんやり冷たい。ガラスのお花が入ってる。

ずっとずっと昔から考え続けてるのは・・・
何かをしようって思いついたときに自分の限界を照らして、したい事を縮めずに居られるようになりたいって点。

努力で補える種類のことなら極点を限らないこと・・・難しいかもしれないけれど、とっても大きな喜びの1つねって憧れる。

音楽ではね・・・
此の曲は弾けないから此っち・・・って、限界を据えて選曲するのが私にとっては一等つまんないって思ってきた。何故って変態さんオタク・アマチュアなんですもの・・・

  *変態さんオタク・アマチュア

選べるプログラムならプロとしては一等弾きたい曲、一等美しいと感じる曲を、一等弾きたいときに弾きましょうよって思えちゃう。キャパに合わなければ自分をついてゆかせればいい。"でも" は要らない。

単純な試み。単純な希望。そして単純な悦び。

アマチュアの方が力を超えた曲にチャレンジしなさるのも大好きヨ。
弾いてみたいって純粋な気持ちが伝わってくる。たとえ思い通りじゃない出来映えでも聞いてて楽しい気持ちになれるもの。

プロフェッショナルなら不出来じゃあ済まないけれど、其のために悦びを控えるなら どの道良いプロじゃないって考えてきた。


**


できれば合わせ物も同じ風に・・・ 各々持ってる不得意分野への劣等意識のしがらみに楽曲が左右されない形を望んでた。学生時代のように其の事で掴みかかったりはしないけど、心の中は何ら変わらない。

音楽を前に限界を作って縮こまる一切に関与せず、自由で伸びやかなアプローチを行なえるアンサンブルが実現したらどんなに素敵でしょう・・・って夢見てた。


**


似たような希望を持つプロはたくさんいらっして、
でも具合良く同じ者同士がアンサンブルで出会うことは少なくて。

出会えると嬉しい。
音楽だけを考え懸命に労を費やす穢れなさに出会うと嬉しい。

選曲はうんと単純。音を出して・・・
あらぁとってもいい曲・・・♪ って双方が思ってる一瞬の間合い。

  此れやりたいですね -- やりましょう
  此れもスゴク弾きたい -- 是非

難しいの大変の長いのと何にもない。難題はわかった上。
それでも・・・
"大変" は個々が解決すべき問。
"弾きたい" はアンサンブルの問。

単純なことが単純に運ぶ。うふふアマチュア精神ね。単純であり続けるために人間がしなければならない努力は大きいかもしれない。其の分よろこびも きっと大きいワって・・・

シンプルで大切なことをひしひしと実感するデュオ。



「この世にて」落合訳

February 14, 2011


ズワイガニ姫のお庭に

立派な洋芙蓉の木があるんです。


お願いして頂いた実、リビングルームへ飾ったの。ほっこりまぁるくて、ふわふわ産毛が生えてて大好き・・・♪ もっとたくさん欲しくなって昨夜おねだりしました。姫、下さいナ♪

実を飾ったテーブルでウイスキーソーダを作りながら、フォーレ楽譜からプリュドムの詩を拾った日曜の夜。


《この世にて》

             シュリ・プリュドム
             落合訳

この世にて リラの花枯れゆき
鳥歌う季節は逝く
けれど夢見る、常夏の日々

この世にて そっとふれ合う唇に
柔らかな艶めき消える
けれど夢見る、長い長いくちづけ

この世にて 人はみな涙する
友の愛 恋の情にも
けれど夢見る、永遠の絆の二人 
             絆の二人


《Ici-bas!》

               Sully Prudhomme

Ici-bas tous les lilas meurent,
Tous les chants des oiseaux sont courts,
Je reve aux etes qui demeurent
Toujours!

Ici-bas les levres effleurent
Sans rien laisser de leur velours,
Je reve aux baisers qui demeurent
Toujours!

Ici-bas,tous les hommes pleurent
Leurs amities ou leurs amours;
Je reve ■aux couples qui demeurent■
Toujours!


                                                 ■マークの間をフォーレはリフレインに作曲しています。
                                                 フォーレ楽曲に沿ってリピートで訳しました。


コンセプトは過去2回と同じ・・・

  *"ロマンス" 落合訳
  *"水のほとりに" 落合訳
  *サンピエトロ、体と遺骨

アダージオの緩みにのったピアノの16分音符。波のように歌のメロディーへ誘いかけるフォーレ歌曲。ピアノパートに流れがあるから七五調など区切らずに、ごく僅かな区切りだけ設けるふうに訳したい。

幾曲もを弾き並べて気づいたの・・・ プリュドムの詩につけるとき、フォーレはとっても透明度高い音をつかう・・・

  *フォーレ祭り

そしてね特別に大切にされた曲に仕上がってる風に感じるのよ。

プリュドム詩が大好きだったの? 当時の若い心に寄り添うものだったの? フォーレに問うてみたくなる。

明日はブルゴーニュ君がブログを書く日カナ。



フォーレ祭り

February 13, 2011

フォーレの音楽みたいな

パリの職人さん作ペンダント。


アルコル橋ちかくで求めたのだったカナ・・・さざなみみたいなガラスの細工が好きなんです。

ピアノ室でも さざなみの音楽が・・・

蝶番君の鞄からゴッソリ掴み出てきた束は膨大なフォーレ!
素敵なフォーレ時間を過ごしたのですヨ。

純正と柔軟さ、高い音楽力と技巧を見事併せ持つお方とのデュオは刺激的でとっても豊か・・・♪

  *変態さんオタク・アマチュア

フォーレをOp.1から順々に弾いてみようって。Op.1-No.1、Op.1-No.2、Op.2-No.1、Op.2-No.2・・・ うふふビックリでしょう?

完全なオタク仕様でたくさんが好きな私にはピッタリな提案でした。そしてね興味深い発見があったのヨ。

はじめサンサーンスっぽい流れだったり、メンデルソゾーンのお勉強っぽかったりした曲たちが、作品番号を追うにつれて徐々にフォーレの音楽へと近づいてゆく。

様々な詩を扱う中、フォーレ自身が親しい詩人さんや思い入れある詩につけた曲は特に詩情が生きていて・・・

フォーレのお祭りネ! 楽しくて楽しくて弾き進み、お腹空いてフラフラになった時は6時間半が経過してた。時刻も遅すぎ、曲はまだまだ残ってて・・・ どうしましょ。

フォーレばかりの別日を儲けよう、って蝶番君。
嬉しいナ・・・♪ 楽曲の空気感を味わい音の絡み合いに遊びながら 徐々に曲が選ばれてゆく時間って素敵だワ。

フォーレを多く載せるのは、9月末のコンサート予定ですヨ。
詳細は追ってお知らせしますネ。

■最近のフォーレリンク
  *フォーレ "月の光"
  *"水のほとりに" 落合訳



日々。

February 01, 2011

簡単フロマージュブランで自家製おやつ。


半月ぶりに会った人に問われた。2週間何してた?
気の効いたご返事も思いつかず馬鹿正直に1つずつ答えながら日々を振り返る。

プーランク譜を桐朋図書館から取り寄せると到着日に郵便局からお電話かかった。楽譜が郵便局でベルトコンベアに巻き込まれ破損・汚損したってビックリな事件だった。

リサイタルちらしに載せる後援書類を揃えて、幾日も印刷校正に首っぴきになってた。校了すると甘いものが食べたくなって、マルシェ籠ちゃんに教えてもらったバター菓子を焼いた。

音楽家協会のお集まりと、こうべ芸文のお集まりを欠席しちゃった。
トーマス・マンを読み終えて、新しくルソーを手に取った。
お隣さんがお庭の可愛い実を集めておいて届けてくれた。

ソロのショパン4曲とドビュッシー3曲の外枠をおよそ暗譜して、
残るショパン5曲目は内声が憶えられてない。

おさらいで切れたピアノ弦を張ってもらってご機嫌になった。
デュオ曲を譜読みして、レッスンの合間にたくさん製譜した。

コンサート打ち合わせに神戸高校へお出掛けした。
外出の翌日お医者様が炎症の酷さに驚いて、また数日治療がお休みになった。

CDプレーヤーが急に壊れた。買いなおすとジャックが歪んでて入らない不具合品だった。交換に来てもらう日を急いでくれなきゃ困るって少しガミガミ言った。

新しいプレーヤーでケックランやデュティユをいっぱい聞いてる。
クリスマスローズを2鉢追加する贅沢をした。
そのぶん、欲しかった手袋を諦めた。

此んな日々。
なんでもない日常。



知と愛

December 30, 2010

ヘッセの長編大作 "知と愛" を読み終えた。


ゆっくりけちんぼに読んだのに終わっちゃって寂しいワ。
芸術の精神真髄に触れる印象的な力作でした。

先日プラトーンとヘッセの同テーマを比べる風に書いたんだった・・・
*ソクラテスと肉体

"知と愛" で連想したのも同プラトーン著、死と知恵をめぐる部分。


《哲学者以外の人々は誰も死を一つの大きな悪だと考えている》
《そして彼らのうちで勇気のある人々が死に耐えるのは、死よりも大きな悪を恐れるからではないか》

《してみると哲学者以外の人々は、恐れと恐怖とによって勇敢である。
しかし人が恐怖と臆病とによって勇敢であるというのは、不合理ではないか》

                                       (田中美知太郎様・池田美恵様訳)


此の部分で死は第一のテーマじゃあなくって知恵の重要性への例に扱った格好だった。そしてね、もう少しお話してほしいって思ったのよ。

死に対する知恵の次には、死の昇華の言及を望んだ。けれど其れはソクラテス・プラトーンらの主題とは異なるものだから・・・


**


美しく昇華を描いたのが次に読んだヘッセだったから嬉しかった。
"知と愛" 長編半ばに此のように書かれるの。少し長いけれど素晴らしいので引用しますね。


《おそらくすべての芸術の根本は、そしてまた、おそらくすべての精神の根本は、
死滅にたいする恐怖だ、と彼は考えた。

われわれは死を恐れる。無常にたいして身ぶるいする。
花がしぼみ、葉が落ちるのを、くりかえし悲しくながめる。
そして、自分たちもはかないもので、まもなく衰えはてることのたしかさを、自分の心の中で感じる。

われわれが芸術家として像を作ったり、あるいは思想家として法則を求め思想を公式化するとき、
大きな死の舞踏の中からせめて何かを救い、
われわれ自身より長い寿命を持つ何かを樹立するために、そういういとなみをするのである。

親方が美しいマドンナを作るときモデルとした女性は、おそらくもう衰えはてるか死んでいるだろう。
彼もやがて死ぬだろう。ほかの人々が彼の家に住み、彼の食卓で食事をする。

------ だが、彼の作品は変わることなく残り、静かな修道院の聖堂で、
百年も、それ以上たった後も、なお光を放ち、いつまでも美しく、
そしていつも変わらずかぐわしく悲しい口もとに、たえず微笑を浮かべているだろう。》


**


そして後半。
ナルチスが問い、ゴルトムントが長い流浪の末に答えます。


-- 芸術がきみにもたらしたもの、きみにとって意味したものは、いったいなんだったかね?

《それは無常の克服だった。》

《瞬間のかなたに、形象と聖なる物との静かな国を作る。
それに協力するのはぼくにはとうとく慰めになると思われた。
なぜならそれは、無常なものを永遠化することに近いのだから。》

                                       (高橋健二様訳)


芸術が側近くにある意味と幸せを改めて考えた。


**


今日12月30日は

毎年恒例の蟹鍋の日


ノベルティ君とちょっぴり合わせをしたら、皆で熱々お鍋・・・♪
バタバタする年末は細切れに読めるのにしよっと。
コクトー戯曲 "地獄の機械" を本棚から選んだ。



たった1枚の年賀状

December 08, 2010

今年も解禁日にお届けくださった遠来の贈り物。


シャトー・ドゥ・ピゼイのボジョレが届いてしばらく経つと、お年賀準備の季節が来る。


**


ゲンゴロウ先生が仰ったの。小学校で担任をして交わった元生徒達に年賀状を書いてるって。

もしかしたら、大人になって1枚も年賀状を貰えず悲しい思いをしてる子が居るかもしれないって。だからたった1枚でも受け取れるように せっせと元生徒達に年賀状を出すって。

此んな先生方に側に居ていただいたんだナ・・・って心を動かされた。おナマな生徒が大きな大人になっても 遠くからずっと気遣ってる先生。交流もなく、何してるかさえ知らない子にも書くって・・・

何してるかわからないからこそ もしかしたら必要かもしれない1枚を投函するのね。其んな風な気持ちで書くお年賀、私も1枚加えたいナ。



鏡の中

November 23, 2010

鏡は、映した世界を記憶してるかしら・・・


其んなふうに思えることはない?

バシュラールの影響が続いてるせい・・・? 鏡を覗き込むとたくさんの顔と光景が見えてきそうな気がしたのヨ。

60年も前から我が家で使い続けてきた古い鏡。縁の木材が欠けてしまったから、コンソールテーブルで小さなステージにしてみた。

煉瓦壁が映る。愛する小物たちが映る。

教会で求めた手作りドイリー、あまり上手にできてないけど暖かい。
マドレーヌ聖堂のミニロザリオ、お祈りの回数が数え難いから実は此れあまり使わない。

ドレッサーからコンソールへお引越しした鏡が映してゆく日常の風景。


**


古い物に新しい役目を与えられると嬉しい。
物は役目に寄りて息吹新たにし、鏡は其れを映しこむ。
きっとお人も・・・

ニーチェの言葉を思い出す。

《重大なのは永遠の生ではない、永遠に溌剌たる生気だ》



空間の詩学

November 20, 2010

バシュラール著 "空間の詩学"。

ダチョウ君のプレゼントでした。


ボードレールなど引用しながら家空間と子供時代を語るところがとっても興味深かった。幾度か書いた望郷のお話とよく似たテーマでした。

《過去に住まった場所の記憶の不滅性》が詩的なイマージュの夢想として どのように喚起されまた捉えられるか。バシュラール独特の調子で延々とディテールが語られる詩論世界です。

和訳文がないのでインターネットから岩村行雄様訳の1文を頂戴しましたよ。

《思い出は空間化されれば、ますます不動になる。》


**


セルフアンティークに拘る自分の心の中がちょっぴりわかってきた気がしたの。記憶と、記憶のモトと、現在に繋がる道筋を立体的に現して目で見ることを好んでるのかしら・・・って。パリの風一覧のように・・・ネ。

此の著書をね、ガラスのおやつboxに手を入れながら読みましたヨ。
子供のころよく食べてたアメリカのマシュマロ。

香料が強すぎてたくさん頂くと気持ち悪くなってたナ・・・ あの胸の悪い感じを再びに体験したいって変テコな思いつきをしたのも此の本の影響みたい。

バシュラール的にイマージュの現象学風を申せば、香料に当たってしまうのは気づいてた。けれども父が 色とりどりのふわふわマシュマロを娘が喜ぶだろうって期待してるのも気づいてた。

だから口に運び、父の "期待の分" がプラスされた美味しさを享受して、末に気持ちが悪くなっても嬉しくて美味しい辛さだった。

胸が悪くなる感じはあくまでも悦びの中に存在してて、香つきマシュマロを大好きって思ってた。具合が悪くなっても期待に応える喜びが上回ってた。

大人になって頂いても やっぱり気持ち悪くなっちゃったのよ。うふふ。其うして今も香つきマシュマロが大好きって言うの。"マシュマロのイマージュ" は、楽しそうにオミヤを選ぶ父の笑顔に置き換えられるから。

幼い私にとって 受け取ることがイコール与えることになる関係が、バシュラールが語る "調和した夢" だって感じてたから。

*望郷とエートルとショパン
*望郷
*量は質をつくる



マタイ11章28〜30節

October 31, 2010

紫芋の甘いチップスと

耐熱グラスはキャラメルティー。


ある牧師とおしゃべりした。マタイ11章28〜30節は多くの人々を惹きつける箇所と仰った。


《疲れた者、重荷を負う者は、だれでもわたしのもとに来なさい。休ませて上げよう。わたしは柔和で謙遜な者だから、わたしの軛を負い、わたしに学びなさい。そうすれば、あなたがたは安らぎ(*後述@)を得られる。わたしの軛は負いやすく、わたしの荷は軽いからである。》


この箇所は大好き。けれど誤読により安穏とした様を求めて寄りかかる姿勢は好まないと答えた。"疲れた者" とギリシャ原典から外れた訳も、其れを更に発展曲解させて大売出しする感にも賛同しないと言った。

順序ゆえに此処を好むんですと話した。休ませてあげよう(*後述A) に惹かれる前にすべき義務。イエズス様の軛を負うこと。"そうすれば" 平安な心持ちを得られるって順序を大切に思う。

まず休ませてもらう姿勢じゃあない。まずは軛を負う。個々の重荷より困難なこと。

私は聖書の厳しさにこそ惹かれますと言った。


**


時間を見つけてはラテン語をこつこつ学んでゆく。幾年経ってもすらすらとはゆかない。件の箇所は興味深かったワ。

《Venite ad me, omnes qui laboratis et onerati estis, et ego reficiam vos.
Tollite jugum meum super vos et discite a me quia mitis sum et humilis corde; et invenietis requiem animabus vestris;
jugum enim meum suave est, et onus meum leve.》

後半 "安らぎ" (*前述@) はレクイエムrequiemの単語の訳。
また前半 "休ませてあげよう" (*前述A) はreficiamの語。レスト(rest) やリラクゼーション(relaxation) と根本が異なる。

reficiamは、仏語によるラテン語解読に頼れば je vous remettrai en etat だと。あるべき状態に実存を立て直す意。

此の厳しい箇所、厳しいからこそ魅力ある箇所を、私は安楽を求める心で読むことはできませんとお話した。




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